King Gnu、『ROCK IN JAPAN』で見せた“王者の貫禄” 巨大なステージを掌握していく圧倒的なスケール感
8月7日、King Gnuが3年ぶりに開催された『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』2日目にトリとして出演した。ライブの内容は本コラムの後半に譲るが、王者にふさわしい風格とスケール感、にもかかわらず瑞々しいエモーションを感じさせる、素晴らしいパフォーマンスだった。
昨年夏に『FUJI ROCK FESTIVAL '21』のGREEN STAGEにヘッドライナーとして登場して以降、2021年下半期にかけてKing Gnuのスケールはさらに大きくなった。文字通り日本のロックシーンの旗手としての存在感は、アニメ『王様ランキング』(フジテレビ系)のオープニングテーマとなった「BOY」、映画『劇場版 呪術廻戦 0』の主題歌となった「一途」、エンディングテーマとなった「逆夢」など大型タイアップとともに楽曲でも十二分に感じられたし、10月から12月にかけて開催されたアリーナツアー『King Gnu Live Tour 2021 AW』で見せた勇姿も圧倒的という言葉がぴったりなものだった。
そのツアーは2020年に『CEREMONY』を携えて開催した『King Gnu Live Tour 2020 AW "CEREMONY"』以来の全国ツアーだった。その間アルバムのリリースはなく、散発的に配信も含めたシングルリリースはあるものの、彼らはほぼ同じレパートリーで2回の巨大なツアーを廻ることになった。通常であれば何かしらの新味を付け加えるための工夫が盛り込まれてもおかしくない。だがKing Gnuは演出的な付加価値や新鮮なセットリストで観衆を惹きつけるのではなく、あくまで正攻法、ストロングスタイルで初のアリーナツアーを行なった。そしてそうした方向で見せるライブだったからこそ、バンドとしてのパワーとスケールが確実に強化されていることを証明してみせるものになったのだ。
そのツアー後も、彼らは止まらなかった。2022年に入り、年明け一発目のリリースは「カメレオン」。月9ドラマとして大きな話題となった『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)の主題歌だ。ドラマとの相乗効果もあり、King Gnuの名前をさらに広げるものとなったこの曲を提げて行われたのが、5月末から6月にかけて大阪・大阪城ホールと千葉・幕張メッセでそれぞれ2日間ずつ開催されたファンクラブ限定のツアー『King Gnu Live Tour 2022 CLUB GNU EDITION』だった。筆者は幕張メッセでの公演を観たが、そこで繰り広げられていたのは、昨年のアリーナツアーでのストロングスタイルとはまた一味違う、「普段着」ともいえるKing Gnuの姿だった。どこかリラックスした雰囲気の中、フレンドリーなトークコーナーやアコースティックセクションも挟みながら展開したライブ。メンバーもいつも以上に笑顔を見せ、心から楽しんでいるように感じられた。もちろんファンクラブイベントだからこそだろうが、King Gnu史上最大キャパシティでのワンマンライブである。そこには、バンドとして新たなステージに立った彼らの貫禄が見えた。
そんな中、彼らが出演した『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』。すっかり日は沈み、ステージの真上に月が浮かぶ中始まったライブは、まさにその貫禄をフェスというオープンな場で存分に見せつけるものだった。勢喜遊(Dr)の叩くビートに乗せて、常田大希(Gt/Vo)が拡声器でラップをする「Slumberland」から幕を開けるというスタートこそ変化球的ではあったが、その後大量のスモークとともに繰り出された「飛行艇」、そして怒涛のような轟音が瞬く間に空気を変えてみせた「Sorrows」の鬼気迫る熱演と続いていったライブは、まさにこれぞKing Gnuという楽曲をまっすぐに届けるものだった。4曲目「BOY」の軽やかなサウンドとメロディがフェスらしい高揚感を生み出したあと、ピンスポットライトに照らされた井口理(Vo/Key)がふっと歌い出した「白日」が前半のハイライト。押しも押されぬKing Gnuの代表曲であり、国民的大ヒット曲であることはもちろんだが、井口の歌をはじめ、常田のピアノ、新井和輝(Ba)のベース、勢喜のドラム、すべてが繊細に調和し重なり合う、その研ぎ澄まされたアンサンブルに、改めてKing Gnuの真髄を見た気がしたのだ。
知っての通り、先月新井が新型コロナウイルスに感染したため、7月17日の『NUMBER SHOT 2022』でのライブを欠席。急遽、新井以外の3人による演奏に、リモートで登場した新井が音を重ねるという異例の形での出演となった。この『ROCK IN JAPAN』は新井の復帰後、4人での初めてのライブであり、井口もMCで「4人でやるのはやっぱりいいもんだなあって思ったりします。アットホーム感が出て落ち着いちゃってる」とその感慨を語っていた。その言葉どおり、井口はじめメンバーの表情の端々には、こうして4人でステージに立てる喜びを噛み締めている様子が滲んでいたように思う。そんな背景もあってか、演奏にはいつも以上に熱が入る。続く「The hole」の井口の歌には、とても濃密なエモーションが宿っていた。
その後も「カメレオン」「Vinyl」、そして「Prayer X」と鉄板曲を連打する最強のセットリスト。勢喜のカウントで常田と井口が近づいて視線を交わしながら入った「Teenager Forever」では、オーディエンスからも大きな手拍子が起き、さらにライブを盛り上げていく。そして煙幕が別次元へと誘っていった「Flash!!!」へ。常田はオーディエンスのジャンプを煽り、自身も充実した表情で飛び跳ねている。フェスという言わば異種格闘技戦のリングにあって、もはやこの空間は完全にKing Gnuのものになっていた。