SOMETIME’S、新曲「夏のMagic」に取り入れた初の試み Omoinotake迎えた2マンライブへの特別な思いも明かす
SOMETIME'Sが、新曲「夏のMagic」をリリースした。同曲は、4月から続く主催2マンライブシリーズ『League』と連動した配信シングルの3作目。バイオリンの導入やTAKKI(Gt)が作詞作曲の両方を手がけるなどユニットとしての初の試みにもチャレンジ。猛暑が続く今だからこそ聴きたい、清涼感をもたらす大人のサマーチューンに仕上がっている。
また8月19日渋谷QUATTROにて行われる2マンライブシリーズ『League』には、旧友・Omoinotakeが満を持して登場。新曲「夏のMagic」の制作、開催を控える『League』に向けた意気込みをじっくりSOTA(Vo)とTAKKIの二人に聞いた。インタビュー後半ではOmoinotakeの3人から届いたコメントも合わせて紹介しているためお見逃しなく。(編集部)
“矛盾”がテーマのSOMETIME’Sならではの夏ソング
――「夏のMagic」、季節感溢れる曲ですね。風鈴の音や虫の鳴き声が入っているのも風情があります。最後にはプシュッという缶を開ける音と飲み物を飲む音も入っていますが、あれは実際にやったんですか?
SOTA:そうなんですよ。サイダーを2缶くらい一気飲みしたので、ちょっと苦しかったです(笑)。
――(笑)。最初歌詞だけを読んだ時に「高揚感のある曲なのかな」と思ったんですけど、いざ音を聴いてみたら余白があって落ち着いたトーンで。そのギャップや聴き終わったあとに余韻が残る感じがいいなと思いました。
SOTA:TAKKIがデモを作ってきた曲だったんですけど、そのデモが「トム」という名前だったんですよ。多分トム・ミッシュなのかなと思ったんだけど。
TAKKI:そうそう。個人的に夏の暑い時間に涼しげな音楽を聴くのが好きで。トム・ミッシュやharuka nakamuraのようなサウンド感を浮かべながら、アレンジャーの藤田(道哉)と相談して作っていきました。
SOTA:実はデモ自体はかなり昔からあったんです。TAKKIが持ってきたデモの中にあった1曲で、僕は昔からいいなと思っていたし、藤田とも「これ、いつかやりたいよね」と言っていたんですけど、4月に出した新曲「Somebody」、6月の「Clown」とは違う一面を出したいよねという流れの中で今なんじゃないかと思って。作曲も作詞もTAKKIというのはSOMETIME'Sとしては初なので、そういった意味でも新しい曲になったなという気持ちがあります。
――MVも新鮮でした。映像を観ているうちに迷子になっていくような感覚があって。
SOTA:まさにそういう狙いなんだと思います。
TAKKI:曲の根本のメッセージとして“矛盾”というものが強くあったんですよ。歌詞だけを追うとすごく爽やかで、「夏!」という感じなんですけど、サウンドはそうじゃなくて、室内っぽいというか。
SOTA:ジャケットも上は青空、下は夜景だしね。MVは鴨下大輝さんという初めての監督さんだったんですけど、打ち合わせの時に「シュールな感じにしたい」「いい意味でちょっとわけの分からないような」という話をさせてもらったところ、監督も「わけの分からない感じ、得意なので」ということで(笑)。不思議な感じに仕上げてもらいました。
――なるほど。TAKKIさん、作詞に加え作曲もご自身でやってみていかがでしたか?
TAKKI:やっぱりムズいなあと。普段はSOTAが出してきたデモに対して「あ、これいいね」「これよりはこっちの方がいいかな」という感じで選ばせてもらっているんですけど、それって僕にとっては全然ストレスなくできる行為なんですよ。だけど今回はそうじゃなくて歌メロも考えるということで……つらすぎて熱が出ましたね(笑)。SOTAのフロウってすごく独特だし、僕はそれがいいと思ってSOMETIME'Sをやっているから、それを邪魔しないメロディにしたいなという気持ちもありつつ、かと言って自分が考えさせてもらうわけだから、中途半端な感じで投げ出すのも嫌だったので。練って、何回も考え直して、やっと形にできましたね。
SOTA:僕は結構ナチュラルにポンポン曲を出しちゃうタイプなんですけど、TAKKIはちゃんと頭で考えてからデモに着手していくタイプなんですよ。だからコード感も全然違うし、“僕だったらこういうアプローチは一生出てこないだろうな”と思うところもありますし、この曲の絶妙な爽やかさは、僕が作っていたとしたら出ないものだと思いますね。あと、普段鍵盤から曲を作るので、デモの時点でド頭からちゃんとギターリフが鳴っていたのも新鮮で、そこに惹かれた部分もあって。あのギターリフは最初からあったもんね。
TAKKI:そうだね。せっかく自分が作らせてもらったので、なるべくギターがフィーチャーされる楽曲にしたいなという気持ちがあって。
――確かにギターはずっと鳴っていますよね。フレージングも細かいですし、音色も特徴的です。
TAKKI:歌の裏で細やかに動いているようなフレージングは今までやってこなかったアプローチですね。音色に関しては、InstagramやYouTubeなどSNSで活躍されているギタリストさんのサウンドを踏襲することを意識しました。こういう言い方をすると角が立つかもしれないんですけど、元々、そういった方が(動画に)上げているようなサウンドがあんまり好みではなかったんですよ。僕は1990年代後期から2000年代初頭の、ギタリストが機材に対してものすごく熱のあった時代のサウンドに憧れてきたので、どうしてもインスタントに感じてしまったというか。だけど、いろいろな方のギターを参考にしていく中で、“すごくトレンド感のあるサウンドだし、これはこれでいいな”と思い始めたんですよね。なので、この機会にしっかり研究して、そういったサウンドを自分で作り込んでみようと。いろいろな人のギターを聴いて、アナライズして、自分なりに解釈してアプローチしたので、根気のいる作業ではありましたが、クリーントーンに対する知識や理解の広がりは自分にとってすごく大きな財産になりました。
SOTA:今回の曲は全体的にめちゃくちゃミニマムで、レコーディングの時に生楽器だったのはベースとギターくらいだったから、ライブではどう変わるんだろうなと思います。
――音がサッと止む瞬間や、音が少ない瞬間が多いですよね。
TAKKI:今回、アレンジを作る時に“盛り上げすぎないでほしい”、“ただ、サビ感はほしい”というオファーを藤田に出したんですよ。
――サビ感とは?
TAKKI:誰が聴いてもワンコーラス聴いたら“ここがサビだ”とちゃんと分かる感じですかね。Aメロが好き、Bメロが好きという個人的な嗜好はもちろんあると思うんですけど、それは置いておいて、“この曲だったらサビを切り取るのが一番分かりやすいよね”と思うかどうか。そういったサビ感は音楽の根本に必要な部分だと思っているし、SOMETIME'Sがずっと追求しているもの、かつ、まだまだ育てられるから常に追求していきたいものだと個人的には思っています。
――その“誰が聴いてもここがサビだよね”という展開を盛り上げすぎずに作ると。
TAKKI:無理難題なことを言ってますよね(笑)。それで今回は、バースの展開に関してはヒップホップを参考にしています。僕らは結構フィジカルなバンドというか、“ドラマーがいいフィルを叩いて、その空気感に乗ってサビに行く”みたいなものが結局やっていて一番楽しいし、音楽的だし、僕らの中でも変わらない正義ではあるんですよ。だけどそうじゃなくて、バースのきっかけをフィルなどに頼らずに、ヒップホップのように、空白できっかけを作ったうえでサビ感を出しているのがこの曲ですね。だから1サビ前もブレイクして、風鈴の音だけでサビに行っていて。今回はブレイクにかなりこだわりながら構築しています。
――SOTAさんは今回歌ってみていかがでしたか? TAKKIさんの作ったメロディを歌うという意味でも、楽器とともに感情が盛り上がっていくタイプの曲ではないという意味でも、新鮮なレコーディングだったのではと思いますが。
SOTA:まずメロディに関しては、デモから数えるとかれこれ数年は聴いてきているので、もう馴染んでいるような感覚があって。ただ、TAKKIにまるっとメロディを作ってもらうのは初めてのことだったので、ひょっとしたら“ここちょっと嫌だな”という部分が出てくるのかなと自分も思っていたんですけど、そんなことはなくすんなりと、昔から知っている曲を歌っているような感覚で歌えました。アレンジは確かにシビアなので、高い声を出す時に「もうちょっと涼しい感じで」ということで何回かトライしたんですけど、いざできてしまえば、逆に楽器のことを気にせずに歌える感じがあって。これはこれで、意外と気負わずに歌えているかもしれないですね。