SOMETIME'S、NakamuraEmiとの『2man Live Series “League”』 次に向かう力に変えた魂の込もったパフォーマンス

SOMETIME’S、NakamuraEmiとの2マンレポ

 良い意味で、どんなライブの空気になるのかまったく想像がつかない。SOMETIME’Sが贈るツーマンライブシリーズ『League』、その第2回目。6月17日の渋谷・WWW X、ゲストアクトはNakamuraEmiだ。いつなんどきでも激しく鋭く容赦なく、裸の言葉を叩きつけるラップシンガーと、ラグジュアリーでコンフォタブルなグルーヴミュージックを得意とする二人組。SOMETIME’Sからの熱烈ラブコールで実現した組み合わせ、そこには未知の期待しかない。

NakamuraEmi
NakamuraEmi

 先陣を切るのはNakamuraEmi。ライブを見るたびに「こんな小さくて可愛らしい彼女のどこからこんな声が?」と思うが、今日もそう。幻想的なフラワーデコレーションで飾られたステージに現れるやいなや、相棒のカワムラヒロシ(Gt)の打楽器のように強烈なグルーヴを叩き出すアコースティックギターに乗せ、先制攻撃開始。曲は「大人の言うことを聞け」「かかってこいよ」。まさに、先日のSOMETIME’Sインタビュー(※1)でSOTA(Vo)とTAKKI(Gt)が「好き」と言った2曲だ。時にシェーカー、タンバリン、ウィンドチャイムを奏でながら、強力にファンキーなリズムに乗せ、ラップ、メロディ、ポエトリーを自在に操る。続けて「YAMABIKO」と、真っ向勝負のストレートパンチ三連発。自分の悩みや迷いも赤裸々にぶつける真摯なリリックをまっすぐに受け止め、息を詰めてステージを見つめるオーディエンス。

NakamuraEmi

「今日は、NakamuraEmiを誘ってくれて、本当にありがとうございます。SOMETIME’Sさんとは、スタッフや友達がすごく近いところにいて、なんで今まで会えなかったんだろう?と、生き別れの姉弟にやっと会えたような気持ちでいます」

 歌っている時は鬼気迫るオーラを放つが、しゃべりだすと途端に表情がくずれ、可愛らしさが溢れ出す。穏やかなフォークソングめいた曲調に語りをまじえた「新聞」、オーシャンドラムを使った涼し気な波の音が印象的な「ボブ・ディラン」。ファンキーに攻める曲もかっこいいが、フォーキーに語りかける静かな曲調の中で、日常のふとした寂しさや哀感を感じさせる歌声も彼女の大事な個性。さらに、つぶやくようにピアニッシモな序盤から、ぐんぐんスピードを上げて激しくフォルテッシモなエンディングに至る、「スケボーマン」の迫力に息を呑む。時の経つのが早い。

NakamuraEmi

 金曜日の夜にふさわしい大人の応援ソング「モチベーション」は、強烈なファンクビートを刻みながらアコースティックからエレクトリックへ、エフェクト効果で音色を自在に操るカワムラヒロシのソロが凄い。応戦するNakamuraEmiは、ステージ最前線でフロアに身を乗り出すように激しく強く、しかし笑顔で力強いメッセージを投げつける。

「まだまだ大変な時期が続きますが、こうしてライブに足を運んでくれて、私たちはパワーをもらっています。そんな感謝の気持ちと願いを込めて」

 ラストチューン「投げキッス」の終盤には、なんとSOMETIME’S「Never let me」とのマッシュアップも。美しくサステイナブルなギターストロークが次第に熱を帯び、「Never let me」の歌詞とメロディを取り込みながらクライマックスに至る、あまりにエモーショナルな展開。それは愛とリスペクトに溢れた、NakamuraEmiからSOMETIME’Sへの感謝の贈りもの。全8曲、45分、魂込めた圧巻のステージだった。

 これだけのライブを先にやられて、二人が燃えないはずはない。20分後、冨田洋之進(Dr/Omoinotake)、ぬましょう(Per)、佐々木恵太郎(Ba)、清野雄翔(Key)、藤田道哉(Manipulator)、大泊久栄(Tp)、永田こーせー(Sax)を従えてステージに上がったSOTAとTAKKIは、目の覚めるように艶やかな、明るく輝くバンドサウンドでフロアを総立ちにさせる。ロックな推進力とファンクな揺れの融合がたまらない「Somebody」、ボーカルとホーンのスリリングな掛け合いが楽しい「Sunrise」、そして「ライブで初めてやります」と紹介した、ルーツレゲエの心地よいリズムに乗せた「Don't Know Why」。総勢9名のアンサンブルはライブハウスの規格を超えるハイスペックな魅力を備え、SOTAは身体全体、表情のすべてで感情豊かなパフォーマンスを見せ、TAKKIはポーカーフェイスで精密なフレーズを積み重ねる。一体感が最高だ。

SOMETIME’S
SOMETIME’S

「金曜日にも関わらず、こんなに集まっていただいてありがとうございます。Emiさんとはいろんなご縁があって、今日やらせてもらっているので、特別な回にしたいと思います」(SOTA)

 明るく楽しく飛ばした序盤を経て、中盤はSOMETIME’Sの音楽性の幅広さを見せつける時間。ループするダンストラックと、TAKKIのストイックなワウギターがかっこいいダンスチューン「Simple」、アコースティックギターへ持ち替えて、アダルトでファンキーなシティポップテイストの「Get in me」。そしてパーカッションとキーボードを残した4人編成で届けたアコースティックチューン「Take a chance on yourself」は、会場いっぱいの手拍子と共に心あたたかく。言葉をリズミックに操るラップのフィーリングを持ちながら、R&Bのねばっこい節回しを備える、SOTAの個性はグルーヴィーなスローナンバーでより露わになる。そしてSOTAとTAKKIの二人だけで、しっとり聴かせるアコースティックバラード「HORIZON」。せつなくエモーショナルに歌い上げるボーカルを、繊細で陰影豊かな指使いで支えるTAKKI。それは完璧なコンビネーションだ。

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