TOMOO、まだ見ぬ場所へ漕ぎ出していく決意 初期曲から最新曲まで披露した『Estuary』レポ

TOMOO『Estuary』レポ

 今年8月3日に<IRORI Records>から、mabanuaプロデュースによるメジャー1st デジタルシングル「オセロ」をリリースしたシンガーソングライターのTOMOOが、自身最大規模となるワンマンライブ『Estuary』を8月7日、東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて開催した。淡水と海水が混じり合う「河口」を意味する英タイトルが付けられた本公演は、本人がインタビューやSNSなどで表明しているように、新しい一歩を踏み出す「決意表明」と、このタイミングだからこそ「初心に帰る」ことの大切さを、セットリストや演出などその全てで表現した充実のパフォーマンスだった。

 ラベルに「Estuary」と記されたカセットテープを少年が河口で拾う、幻想的な映像が緞帳いっぱいに映し出され、会場に広がる川の水音にしばし夏の暑さを忘れて和んでいると、突然力強く打ち鳴らされるTOMOOのピアノバッキングが空気を一変させる。関口孝夫(Dr)、大竹紗英(Ba)、YUMA HARA(Gt)、そしてバンドマスターの山下健吾(Key)に、横山ともこ(Sax)、前田大輔(Tb)、永田昴生(Sax)というホーンセクションを加えた7人編成を率いて、まずは3月に配信リリースされたシングル曲「HONEY BOY」からライブはスタート。これは今年2月6日に東京・渋谷WWW Xにて開催された、ワンマンライブ『TOMOO one-man live“YOU YOU”』と同じ始まり方だが、歯切れの良い生のブラスが加わったバンドアンサンブルは、この半年間でさらに強靭なグルーヴを獲得している。続く、「らしくもなくたっていいでしょう」は2020年のミニアルバム『TOPAZ』収録曲。不思議な譜割を持つメロディが、中毒的な魅力を放つポップチューンである。

 「こんばんは、TOMOOです。北から南まで、西から東までいろんな場所から、こんな大変な時に来てくれてありがとう」。そう挨拶すると、割れんばかりの拍手が鳴り響く。「念願のホールライブ、フルカラーで自分の曲を届けたくて、古い曲から新しい曲まで用意しました。今日は一緒にいい夏の日にしましょう」。

 軽やかなリズムと、どこかキャロル・キングを彷彿とさせるソウルフルなメロディが印象的な「酔ひもせす」のエンディングで、パワフルなピアノの演奏を聴かせた彼女。そのままピアノに座って「雨でも花火に行こうよ」を披露すると、音数を絞り込んだシンプルなバンドアレンジの上を、テンションノートをたっぷり含んだメロディがふわふわとたゆたう。その洗練された響きは荒井由実あたりにも通じるセンスだ。

TOMOO(写真=Kana Tarumi)

 大らかでアーシーな雰囲気が印象的な「スコール」を経て、ライブ中盤ではお馴染みのピアノ弾き語りコーナーに。「17歳から弾き語りをやっているし、マイクを持って歌い始めたのって実はつい最近なんですよ。昔から私のことを知っている人には、レッサーパンダが立ち上がるくらいの感じに見えていると思う」などと、冗談めかして場を和ませた後に演奏したのは「River」。彼女曰く、「普段はライブでやらない古ーい歌」であり、「人生初めてセットリストを組んで、その最初に歌った曲」である。目の前にいる相手との心の距離を、川の向こう岸との距離に喩えた狂おしいほど切ない歌詞と、美しいメロディが心に刺さる。弾き語りコーナーの最後には、この日初公開となる「窓」を披露。「窓ばかり眺めて、人の心を思っていたようなコロナ禍の日々に、メロディのかけらができて、今年完成させた」というこの曲を、前半はウーリッツァーで、後半はピアノで弾き語った。

TOMOO(写真=Kana Tarumi)

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