Ayumu Imazu×今井了介、“唯一無二”の男性ソロアーティストになる条件 両者が組むことで生まれる大衆性と個性のバランス
“Z世代を代表するバイリンガル・アーティスト”として注目を集めるAyumu Imazuから1stフルアルバム『Pixel』が届けられた。
メジャーデビュー曲「Juice」、TikTokでのダンスが話題となっている最新曲「Tangerine」、アルバムのリード曲「Over You」を収めた本作。R&B、ヒップホップ、エレクトロなどを融合させた音楽性、英語と日本語をナチュラルにつなげたリリック、心地よいグルーヴをたたえたボーカルなど、Ayumu Imazuのアーティスト性がカラフルに表現された作品に仕上がっている。
リアルサウンドでは、Ayumu Imazuとアルバムの収録曲「Tangerine」「Over You」「Butterfly」「Stranger」をAyumu Imazuと共に手がけた音楽プロデューサー・今井了介の対談を企画。楽曲制作のエピソードを中心に、お互いの音楽観、トレンドとの向き合い方などについて聞いた。(森朋之)【最終ページに読者プレゼントあり】
若いアーティストから学べることは多い(今井)
ーー今井さん、Ayumuさんが初めて会ったのはいつ頃ですか?
Ayumu Imazu(以下、Ayumu):2017年くらいになります。ソロアーティストとして活動をスタートしたときに、当時のスタッフに今井さんを紹介していただきました。
今井了介(以下、今井):最初は「ビートメイクや曲作りを教えてくれる人はいないですか?」というお話だったんです。そのときに音源や映像などの資料をいただいて、「次世代のアーティストだな」と。
Ayumu:そのときは一緒に曲を作ることはなかったのですが、2年近く経って、今の事務所に入ったときに、また今井さんを紹介してくれたんですよ(笑)。
今井:「Ayumuくん、よく知ってますよ」って(笑)。制作としては、カバー曲のビートメイクやアレンジが最初ですね。
ーーAyumuさん、今井さんが共作することは必然だったというか。
今井:そうかもしれないですね。僕自身は安室奈美恵さんの「Hero」やTEE の「ベイビー・アイラブユー」などのポップスを沢山作らせてもらっていますが、もともとはヒップホップ、R&Bなどが興味関心の中心で。Ayumuくんもそうだと思いますが、ヒップホップ、R&Bをツールにしているアーティストとつながる機会が多いんですよね。
Ayumu:僕としても「絶対、今井さんと一緒に曲を作りたい」と思っていました。僕がカッコいいと感じているものをバランスよく、さらに良い形で作品に導いてくれる方だなと感じていたので。実際、制作していると「すごい!」と思うことが多くあります。
今井:よかった(笑)。Ayumuくんとの制作はいろんな形があって。「雨跡」「Lonely Boy」(2ndデジタルEP『Waves』収録)はAyumuくんがしっかりしたフレームを作っていたんですよ。それに対して、「ここのコードは、このほうがグッとこない?」「メロディをこうしてみたら?」というスタンスで関わらせてもらって。「Light up」(『Waves』収録)は、0の状態から一緒に作ったんだよね?
Ayumu:そうですね。スタジオでビートを作るところからはじめて。
ーーなるほど。今井さんは数多くのアーティストの楽曲に関わっていらっしゃいますが、Ayumuさんの魅力をどんなところに感じてますか?
今井:まず、音楽的なキャパシティがすごいんですよ。歌唱力、ダンス、ビートメイク、ソングライティング、声質などをレーダーチャートにすると、めちゃくちゃ面積が広くなるんじゃないかなと。オールラウンダーなんだけど、ただバランスが良いだけではなくて。人を惹きつけるパワーもあるし、これが新世代のアーティストなんだなと。我々の世代のクラブ系アーティストだと、若い時分にクラブに通って、センスや人間的な魅力で音楽に関わって行く人が多かったんですよ。Ayumuくんの世代は子供の頃からトレーニングを積んでいるし、ポテンシャルが高いんですよね。
Ayumu:ありがとうございます! もちろん“まだまだ”なんですけど、自分でも一通りやれるようになりたいと思っています。楽器やコードのこともそうですけど、ある程度の音楽の知識や理論がわかっていれば、作曲するときも違ってくると考えています。今井さんと制作するときも、スタート地点を高められるだろうし。
今井:今の時点でも一人で十分にやれると思うんだけど、僕が出来るのは楽曲を多面的にすることなのかなと。ヒップホップやR&B、ダンスミュージックに詳しくない人が聴いても「いいな」と感じるポイントを作るというか。
Ayumu:そこは自分のみではやれないところなんです。
今井:いい音楽が売れるべきだと思っているし、Ayumuくん自身が「カッコいい」と感じているところをしっかり出しつつ、好みに関係なく、幅広いリスナーに届く曲にしたいので。僕が若い頃は、「わからない人は結構です」と門扉を閉じちゃってる感じだったんですよ(笑)。売れることよりもカッコいいことを優先しがちだったというか。
Ayumu:そうなんですね。今井さんとの制作はすごく安心感があって。自分がやりたいこと、伝えたいことはちょっと尖っているところもあると思うんですけど、今井さんはそこも妥協せず、さらに広いオーディエンスに聴いてもらえる曲にしてくれるので。そのバランスは、かなり難しいと思うんですよ。アーティスト像やブランディングにも関わってくるし、どうしても「カッコいいものを作りたい」という気持ちが出てきますから。
今井:すぐやれるようになると思うよ。年齢的にも、どんどん吸収できる時期だし。僕自身もAyumuくんのような新しい世代の才能と関わることで、新しい発見がめちゃくちゃあるんですよ。もちろん先輩方が作り上げてきたカルチャーも大事なんですが、若いアーティストやクリエイターから学べることは多いですね。