世界各国の音楽フェスはコロナとどのように向き合っている? 『コーチェラ』『グラストンベリー』などの動きを整理

世界の音楽フェス、コロナとの向き合い方

『コーチェラ』の「規制撤廃」が与えるインパクト

 このようにパンデミックの中で模索を続けていたフェスティバルシーンに衝撃を与えたのが、今年4月に約3年ぶりに復活を遂げた世界最大級の音楽フェスティバル『Coachella Valley Music and Arts Festival』(以下、コーチェラ)である。今年2月、同フェスティバルは当初の感染対策ガイドラインを更新し、これまで必須だったワクチン接種証明書の提出や事前のPCR検査についても不要という方針を発表したのだ(※4)。これにより、来場者に対する制約が実質すべてなくなったのである。この『コーチェラ』の動きはこれまで徐々に進めてきた流れを一気に押し進めるものであり、その影響力は計りしれない。恐らく、今後は多くのフェスティバルが対策なしでの実施に踏み切るのではないだろうか。実際、先日の『グラストンベリー・フェスティバル』も同様に、特に感染対策を設けることなく開催に至っている(※5)。

Coachella 2022 - For Your Precious Love

 このガイドラインの更新はカリフォルニア州における、大規模イベントの規制緩和に併せて発表されたものであり、一応は地域におけるポリシーに根付いたものだ。だが、実際に『コーチェラ』が開催されるリバーサイド郡の公衆衛生局の広報担当者は、地元のTHE PRESS-ENTERPRISE誌に対して「世界中から参加者が集まる大きなイベントはより大きなリスクをもたらすため、参加する人は予防接種を受け、マスクを着用することを強くお勧めします」と声明を出している(※6)。恐らく、『コーチェラ』の生配信を観た多くの人々は、「『コーチェラ』ほどのフェスティバルが規制を設けずに開催するのであれば、他のフェスティバルでも同様に実施して問題はないのではないか」と感じたかもしれない。

 もちろん、フェスティバルの復活自体は歓迎すべき出来事であり、筆者も開催日を心待ちにしている音楽ファンの一人だ。だが、会場内での動きに際しては、「海外では大丈夫みたいだから」と安易に考えるのではなく、国内の感染状況や専門家の意見を踏まえた上で、自分なりに適切だと思う行動を心がけて楽しんでほしい。

※1 https://www.governorsballmusicfestival.com/covid-policy/
※2 https://www.readingfestival.com/news/2021-essential-guide/
※3 https://help.livenation.com/s/article/IMPORTANT-INFORMATION-ON-EVENT-ENTRY-REQUIREMENTS-HEALTH-CHECKS
※4 https://www.coachella.com/rules
※5 https://www.glastonburyfestivals.co.uk/information/advice/covid-19-policy/
※6 https://www.pe.com/2022/02/15/coachella-stagecoach-festivals-will-no-longer-require-masks-tests-or-covid-19-vaccination/

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