THE COLLECTORS『Living Four Kicks』ツアー開幕! 無比のポジションを手にして放つ円熟のステージ

THE COLLECTORS、豊洲PITレポ

山森“JEFF”正之(

 初期の名曲「マイアミビーチ」でファンを熱狂させたあと、加藤は「マイアミどころかアメリカに行ったこともない。憧れてもない」とMCで告白していたが、これぞTHE COLLECTORSだと強く思うワンシーンでもあった。具体的なもの、少し頑張れば手の届くようなものに憧れなんてない。もっと爆発的で圧倒的なロマン。脳内で勝手に増幅されていく想像上の何か。手が届かないとわかっているから永遠に追いかけることができる夢。それくらい途方もない夢のかたちが、このバンドをいつまでもキラキラと輝かせている。

 昔から派手に売れたくて、でも思うほどセールスが伸びなかったキャリアも、今なら「芸」のうちかもしれない。自分より15歳若いドラムの古沢を「イエローモンキー(THE YELLOW MONKEY)がアイドルなんだろ?」とイジった加藤を、「いや、俺らの世代は当然ですよ。THE COLLECTORSより全然売れてましたよ?」と古沢がイジり返すシーンは本当に爆笑してしまったが、ここまで含めてショウが成立するバンドが他にいるだろうか。すごい境地だ。このあと初披露された新曲「ジューシーマーマレード」がポルノスターへの憧れを描いた曲だというのも、なんだかすごい境地。このバンドは今、本当に無比のポジションを手にしている。

加藤ひさし

 古市がボーカルを取る男臭いロックンロールと渋いインストのあと、いったんハケていた加藤が衣装を替えて再登場。そこで始まったのが最新作の中でもかなりテンポの速い「全部やれ!」だったのはハイライトのひとつだ。〈やりたい事は 全部やれ!〉という歌詞は前述した「TOUGH」と変わらないが、〈やり残さずに 全部 全部やれ!〉〈想像するよりはるかに 終わりは早い〉なんて言葉が出てくるのが還暦を超えた今の境地だ。焦っているわけでも、急に慌てているわけでもない。ただ安定のロックンロールを鳴らしながら、最後までこれをやりきりたい、いつだって「ノビシロマックス」だと宣言していたい。そんな思いが加藤の全身から溢れ出している。なるほど、武道館公演も二度目で終わらずあと一回ありえるか。そして、それくらいやってしまうだろうなと思える余裕が、まだまだバンド全体からちゃんと感じられるところが一番すごいと思う。

 アンコールはモッズソングの日本語カバー「MAYBE TOMORROW」と初期の名曲「僕はコレクター」。終了後、笑顔の4人がステージ前方に集まり、肩を組み一礼する……のかと思いきや、メンバーに何かを伝える加藤と、すぐにまた定位置へと戻っていく3人がいる。予定されていなかったアンコール3曲目は「恋はヒートウェーヴ」! これもまた“全部やれ”の心意気が生んだサプライズだ。安定のロックンロール芸を磨き上げながら、やり残しのないフルスイングが始まった現在。35周年アニバーサリーの勢いは止まらない。

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