THE COLLECTORS 加藤ひさしが語る、二度目の武道館に懸ける思い 「バンドも永遠に続くものではない」

加藤ひさし、二度目の武道館に臨む決意

 デビュー35周年にあたる2021年の11月24日に、DVDボックス『Filmography』をリリースしたTHE COLLECTORS。本作の内訳は、まず、2021年6月26日に大阪城野音で行った35周年記念ライブが1枚。2018年に渋谷クラブクアトロで行ったマンスリーライブの映像を、コロナ禍になってから配信した『LIVING ROOM LIVE SHOW』が3枚。このボックスに入っている新曲「裸のランチ」と「ウィンターソング」の制作風景を、メンバーへのインタビューを交えながら追うドキュメンタリー『THE COLLECTORS Documentary Film 2021”Singing Playing and Talking”』が1枚。ここ15年のミュージックビデオを収録した『NEW CLIPS』が1枚。で、前述の新曲2曲のCDが1枚。DVD6枚、CD1枚。以上。という、ボリュームもクオリティもずっしりくる内容になっている。

 そして2022年3月13日は、日本武道館でのワンマンが決定。怒髪天、フラワーカンパニーズ、Theピーズといったベテランバンドが、キャリア初の日本武道館に挑むという、2010年代中盤からの流れの中で、THE COLLECTORSも2017年3月1日に武道館に挑んだわけだが、それらのバンドの中で二回目を決めたのは、今のところTHE COLLECTORSだけである。そのあたりのことや、今作のことも含め、加藤ひさしに話を聞いた。(兵庫慎司)

一回目の武道館は普通すぎた

ーー日本武道館をもう一度やろうと考え始めたのは、コロナ禍より前ですか?

加藤ひさし(以下、加藤):前です。

ーー前の武道館が終わってすぐ?

加藤:いや、その時は、もっと調子に乗ってて。俺の還暦が去年(2020年)だったんですけど、「さいたまスーパーアリーナでやろう」とか、「35周年は東京ドームでやる?」とか、それぐらい無謀なことを言っていましたね。その後、ライブを重ねていくうちにだんだん冷静になってきてやめたんですけど。ただ、周年では、武道館クラスのライブをやっていくべきだろう、というのはあって。

ーー最初の武道館を、一度限りの打ち上げ花火にするつもりはなかったんですね。

加藤:いやあ、自分たちの実力よりも広い場所でやるので、そこはもうフタを開けてみなくてはわからない、というのが実情だったね。だから、もうちょっと客が少なかったら「やっぱり二回目はやめとこうか」っていう話になったのかもしれない。

ーーではステージに立ってみて、「あ、これ、次もあるわ」という気持ちになりました?

加藤:なりましたね。リハの時から喉のコンディションがすごく良くて、本番で一発目に歌い出した時に、もう「もらった!」って思ったし。

 でも実際、振り返ってみると、1年も前からやるやる言って、カウントダウンライブを始めたり、先に武道館をやった怒髪天やらフラカン(フラワーカンパニーズ)やら、TOSHI-LOWやらが、神輿みたいに担いでくれて、やっとできた武道館なんだよね。っていうのを、後から思ったりもして。だから、気持ちが揺れましたね。

ーー今お話しいただいたように、本番の前日までは、ドラマがあったと思うんですね。でも当日は、それがなかったんです。それにびっくりして。「あれ? 普通のライブだ! あたりまえにしか見えない」と。

加藤:そうね。普通すぎたね。だから、逆に、「なんでいつも武道館でできないんだろう?」と思ったんですよ。「なんで普通にこのキャパにいっぱいの人を集められないんだろう?」と思った。もう、一発目のオープニングの映像が流れた時から、みんな「ウォーッ!!」ってなったので、「やった!」と思ったんですよね。俺がみんなに見せたかったのはこういうショーなんだよ、っていう感じでした。

ーーだから僕は「あ、これ、またやるな」と思ったんです。それで実際、35周年のタイミングでやろう、という話になっていった?

加藤:なっていったんですけど、コロナがやってきて。それまでにはどうにか収まってるんじゃないか、収まってないかもしれない、という間で、揺れながら揺れながら進む中で、本当にいろいろ考えたんですけど。やっぱり、何があっても、やった方がいい、っていうことになって。

ーースタッフもメンバーも意見が分かれたと思いますけど、加藤さんは最初はどちら側だったんですか?

加藤:コロナ感染者が本当にひどかった時期に決定しなくてはいけなかったので、正直言うと、僕はやめた方がいいんじゃないかな、って思ったんですよ。緊急事態宣言中にやることになるかもしれないし、これまでよりもひどい感染者数になるかもしれない。でも、35周年をあきらめると、次は40周年、ってなった時に、「長いな! この待ちは」と思った。それはちょっとなあ……って、すごく悩んだんですけど、「やるしかないっすよね」っていう気持ちになった。

ーー他のメンバーやスタッフは?

加藤:みんな同じだったと思いますよ。この時期、俺たちだけじゃなくて、大きいホールとかでやるバンド、みんなが同じ気持ちだと思うんですよね。自分たちが感染するリスクもあるし、中止とかになった場合、規模が大きくなればなるほど、事務所にものすごい負担がのしかかってくるので。下手したら、それを境にTHE COLLECTORSが活動できないとか、そんなことが起こる可能性もある。

 だから、今でも不安ですね。すごく不安です。今はわりと収まっているけど、いつまた感染者数が増えるかわかんないし。だから、当日が終わるまではずっと緊張してなくてはいけないんだろうな、っていうことですよ。

ーーというふうにリアルに考えると、「よく踏み切りましたね」と言いたくなります。

加藤:そうねえ。でも、もう変な話、いつ死ぬかわからないじゃないですか?  年齢的には、そう言うにはちょっと若いと思うんですけど、バンドも永遠に続くものではないので。だから、これだけいろいろ考えて、いろいろ気を遣って、それでもアクシデントとかが起こるようだったら、これはもう避けられないことなんだ、と思うようにしています。その代わり、どうにか成功させる。

ーーやっぱりそこで消極的な方を選ぶことには、気持ちが乗っていかないんですね。

加藤:年齢的なこともあるんでしょうね。さっきも言ったように、40周年まで待てないっていうか。武道館をやった組合的なバンドの中でも、THE COLLECTORSがいちばん年上だし、その中でも僕がいちばん年上だし。6歳、7歳くらい差があるわけですね、彼らと僕は。それがいちばん大きいかも。自分が10歳若くて、こういうシチュエーションだったら、「いや、40周年まで待とうよ」っていう話になったかもしれないですね。

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