Nulbarich、リスペクト全開でぶつかり合った自由な音楽空間 ALI迎えた2マンイベント『New Freq. vol.01』

Nulbarich、ALI迎えた2マンイベントレポ

 「バンドとして更なる高みを目指し、音楽で集う場所を1つでも多く作りたい」――そんな思いから立ち上げられた、Nulbarich初の主催2マンイベント『Nulbarich Presents -New Freq. vol.01-』。「Freq.」とはフリケンシー、周波数のことだ。Nulbarich・JQ(Vo)はライブ中のMCで「2マンというのは新手の合コンだと思っていただければ」と語っていたが、まさにその通り、タイプの異なる2つのバンドがリスペクト全開でぶつかり合い、最高に音楽的でクールでラブな空間が6月7日の豊洲PITには生まれていた。

 まずステージに登場したのはALI。JQとLEO(Vo)はそれぞれ現在のバンドを始める前から交流があるそうで、LEOがYouTubeで出会ったJQの音楽に衝撃を受け、面識がないにも関わらずプロデュースしてほしいとオファーしたことがきっかけだったとこの日のライブ中に彼は明かしていた。そんな相手だからこそ――いや、ALIはいつもそうなのかもしれないが、とにかく自分たちの音楽をぶちかますのにすべてを懸けるような大迫力のパフォーマンスが繰り広げられた。

ALI
LEO

 いつものとおりバンドが鳴らす「仁義なき戦いのテーマ」からLEOが登場しての「Dance You, Matilda」という流れでキックオフすると、「ALI、始めます!」の一言から「I want chance for romance」でいきなり濃厚なグルーヴが溢れ出す。スイングするリズム、華々しく鳴り響くホーンセクション。肩を揺らし、ステップを踏みながらスタンドマイクに向かうLEOに合わせてフロアも心地よく、自由に揺れている。「新曲!」と紹介された今夏にリリース予定の楽曲は、彼らの楽曲を打席登場曲に使い、ALIの名前を一躍世に知らしめたメジャーリーガー 大谷翔平選手に向けて書かれたもの。ゲストラッパーやImaniによるコーラスと相まって大スケールの風景を描き出す。

 そのImaniとKAZUOのラップも繰り出された「FEELIN’ GOOD」に、モヒカンのレゲエDJ J-REXXXも飛び入りして強烈なパンチを繰り出す「FIGHT DUB CLUB」と、多彩なゲストを入れ替わり立ち替わり投入し、問答無用に盛り上げていくストロングスタイル。一切休む気はないとでもいうように、バンドも、もちろんLEOも、楽器を振り回し、声をあげ、フロアをアジテーションし続ける。終盤はJ-REXXXも参加しての「One Step Beyond」で豊洲PITをダンスホールに変貌させると、AKLOとともにスリリングに歌い上げたALIのメインテーマ「LOST IN PARADISE」を経て、LEOの渾身のシャウトが鳴り渡った「Funky Nassau」へ。「また遊んでください!」と叫ぶと、フロアからは大きな拍手が巻き起こった。初めて彼らのステージを観る人もいたと思うが、今のALIの勢いと揺るぎない魂はしっかりと伝わったのではないか。

 音楽を止めない意思表明のように転換中もダンスミュージックが大音量でスピーカーを震わせるなか、ついに登場した主催者 Nulbarich。「まずはALIに感謝を」とJQ。そしてキーボードの音に乗せてしっとりと歌い始めたのは「NEW ERA」だ。「Comin’ now yo!」という合図とともに、極上のアンサンブルがその歌をさらなる高みに連れていく。赤いトラックスーツに身を包んだJQが、フロアを見渡しながらダンスを煽り、ひたすらに乗せていく。サトウカツシロのエモーショナルなギターソロも決まり、完全に空間がNulbarich色に染まったところで、続いて「TOKYO」。東京のベイサイド、この場所で鳴らされるのにこれほどふさわしい曲はない。赤い光をバックに歌うJQに、フロアは手を掲げて応える。「Are you ready? この日を待っていたんですよ、僕は!」。そんな言葉で今日を迎えられた喜びを爆発させると、小気味よいギターのカッティングから「Super Sonic」へ。フリーキーなビートとタイトなファンクネス、とてつもなくスリリングな音が一気に空気を熱くさせる。いつも以上にそのサウンドが肉感的でのびやかに感じるのは、直前にALIのエモーショナルなグルーヴに触れたからだろうか。JQも激しく体を動かしながらオーディエンスを煽り続ける。ソロ回しではそれぞれのメンバーのスキルも見せつけ、否応なしにバイブスは高まり続けていく。

Nulbarich

Nulbarich
JQ

 自由に音と遊び、グルーヴと戯れるNulbarich。それが好きで集まったオーディエンスも、もちろん音楽の遊び方を心得ている。ステップを踏んだり、腕を動かしたり、拳を突き上げたりーーとても自由なムードがフロアには広がる。「一緒に踊りましょうよ、せっかくなんで」。そんなJQの言葉を待つまでもなく、すでにフロアでは老若男女が好き勝手に踊っている。そんななか披露されたのが「It’s All For Us」。「悲しいことがあっても、ここに帰ってくれば楽しさを感じられる。何があってもそれはすべてその先の楽しさのためにある」。この楽曲に込めたものを、JQはそんな言葉で表現していた。コロナ禍でライブができないときに、彼がどんな思いで音楽に向かっていたか、そしてライブが戻ってきたときにどんな決意を抱いていたかを物語る、優しくて感動的なアンセムだ。この2マンイベントもまさにその想いの賜物。ライブハウスという空間で、自由に音楽が鳴り響き、それを自由に受け取るオーディエンスがいる。その光景の美しさと尊さを、ライブが始まった瞬間からずっと感じ続けている。

Nulbarich

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