アンジュルム、シングル表題曲全てを披露した現体制初ツアー千秋楽公演 10人全員で作り上げるグループの集大成

アンジュルム、10人全員で作り上げる集大成

 ここで一旦メンバーがステージから捌けると、モニターに映像が流れる。映像には“2015年『大器晩成』”という文字が映し出される。スマイレージから改名し、アンジュルムとして初めて武道館に立ったコンサートツアータイトルだ。続けて過去のコンサートツアータイトルとともに、そのオフショット映像が次々に映し出される。7年という歴史の中で様々なことがあり、決して平坦な道ではなかったアンジュルムの歩みとそれを支えてきたメンバーの思いに胸が熱くなる。

 するとメンバー全員が衣装を替えて再登場した。全員が中央ステージに腰掛けるとソロメドレーが始まる。まず立ち上がったのは最年少の松本。かつてメンバーだった福田花音のソロ曲「わたし」を見事に歌い上げると、ここからソロのステージが続く。竹内が難曲「全然起き上がれないSUNDAY」を歌い上げると、一瞬の間を置いて全員で「君だけじゃないさ…friends」を披露。これまで卒業メンバーに宛てて歌うことが多かったこの楽曲だが、今回のように卒業メンバーがいないコンサートでのパフォーマンスは楽曲の良さが際立っていた。

 しんみりした雰囲気から打って変わって川村の「臥薪嘗胆」からソロメドレーが再開。ここ数年、新メンバーの加入が相次いだアンジュルムであったが、こうして見るとどのメンバーもステージの完成度の高さに驚かされる。中でも印象的だったのは橋迫鈴の「私を創るのは私」だ。この楽曲は橋迫にとってのデビュー曲で、当時は“グループの孫”としてメンバーにもファンにも愛されていた橋迫だが、武道館のステージでたった一人で歌い上げる姿は感動的だった。

 メンバーが一人で歌っている間、他のメンバーがステージを楽しむ様子もアンジュルムらしい。歌っているメンバーを応援したり、隣のメンバーとじゃれあったり……そんなグループの雰囲気の良さを感じることができるソロメドレーだった。

 そして「ナミダイロノケツイ」を歌った上國料がステージ中央を振り返ると、メンバー全員が彼女の方を向いて笑顔で見守っている姿に、歌いながら思わず涙ぐむ場面も。全員のソロメドレーが終わり、「限りあるMoment」や「ドンデンガエシ」など迫力のある楽曲へと続く。

 続くMCでは伊勢鈴蘭、川村、佐々木、上國料が客席を盛り上げる。伊勢はMCでの客煽りをするのが初めてだということで、観客と一体になれることへの喜びを語っていた。上國料が観客に三三七拍子を求めると、手拍子に合わせて「アンジュ!アンジュ!アンジュ最高!!」と叫ぶ。観客も声は出せないが、同じ想いであることが拍手から伝わってくる。

 続いて武道館に雷が鳴る演出から、「乙女の逆襲」が披露される。間奏のソロバレエパートはバレエ経験のある伊勢が見事に受け継いでいた。そして、リリース当初から3名がマイクを持たず、ダンスメンバーとしてキレッキレのダンスを披露することが定番となっている「七転び八起き」へ。今回のダンスメンバーは、リリース時から担当する佐々木に加え橋迫、為永が務めた。リリース時は新人だった佐々木が後輩を引き連れてこの楽曲を踊る姿からも、アンジュルムの歴史が感じられる。そんな佐々木や、最近ダンスがどんどん上達している橋迫と一緒に踊っても引けを取らないほど、キレキレのダンスを披露する為永を見ていると、数年後に為永が後輩とともにこの楽曲を踊る日が楽しみになる。続けて披露された「大器晩成」では一番のポイントである〈どんな時代にも流されずに〉というCメロの部分を松本が担当。同パートが松本に受け継がれてから何度か披露されているが、何度見てもその小柄な体からは想像もつかないような声量と、のびのびとした歌声に驚かされる。最後は「46億年LOVE」で元気いっぱいに本編を終了させた。

 アンコールではロックチューンの「出過ぎた杭は打たれない」を披露。メンバーそれぞれの基礎力が高い、今のアンジュルムだからこその鬼気迫るステージとなっていた。MCでは一人ずつ感想を述べることに。橋迫は自分のソロパフォーマンスに触れ「まさか武道館でこの曲を披露できるなんて……」と涙ながらに語った。佐々木は途中過去の映像が流れたことに触れ「私にもああいうかわいい時代がさ……」と冗談交じりに嘆く。先ほどまでばっちりキマったステージを見せていたとは思えないギャップが佐々木の魅力である。竹内は「アンジュルムのライブって本当に愛に溢れているなって実感しました」「この最高な空間をもっと私たちとみなさんで作っていきたいと思っています。私たちについてきてくれますかー? これからも私たちの応援、よろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました!」と締めくくった。

 終演後、モニターにはアンジュルム改名後からの全てのシングル楽曲のタイトルが映画のエンドロールのように表示され、今回のツアーで全てのシングル表題曲が披露されたことに気づかされる。ツアータイトルにふさわしいアンジュルムの集大成とも言える、10人のメンバー一人ひとりが主役として輝く公演だったのではないだろうか。

 ここ数年、卒業と加入が相次ぎ、コロナ禍も相まってグループとして安定しない時期が続いたアンジュルムだったが、今回の公演では今の10人ならこれまでを上回るほどの活躍ができるというメンバーの強い意志を感じることができた。全員がソロパフォーマンスを披露し、全シングルの表題曲をセットリストに組み込むというメンバーの実力がないと成し得ないこのツアーを完遂したことは、メンバーにとっても、グループにとっても大きな成長を促したことだろう。一日でも長くこの10人でのアンジュルムが長く続くことを願わざるを得ない、そんなツアー千秋楽の武道館公演だった。

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