THE BACK HORN、ダイナミックに鳴らした“自由を掴み取る意思” 『アントロギア』ツアーが予感させるネクストフェーズ

THE BACK HORN、自由を掴み取る意思

 THE BACK HORNが全国ツアー『「KYO-MEIワンマンツアー」〜アントロギア〜』の東京公演を6月10日、Zepp DiverCity(TOKYO)で開催した。最新アルバム『アントロギア』の楽曲を中心にしたステージを通して彼らは、まるでバンド全体が一つの生命体のように感じさせる、さらに凄みと豊かさを増したバンドサウンド、そして喜怒哀楽をぶち込み、自らの手で希望や自由を掴み取ろうとする意思をダイレクトに体現してみせた。

 前作『カルペ・ディエム』(2019年10月)以来、約2年半ぶりとなるアルバム『アントロギア』。コロナ禍以降に発表された「瑠璃色のキャンバス」「希望を鳴らせ」「疾風怒濤」「ヒガンバナ」などを収めた本作の特徴は、メンバー全員が作詞・作曲を手がけ、様々な組み合わせで楽曲を制作したこと。4人のなかで言葉とメロディの刺激的なケミストリーが起き、それがバンド全体の新たな表現につながる。その奔放な躍動こそがアルバム『アントロギア』の骨子であり、そのなかで生まれたダイナミズムはそのまま、この日のライブにも反映されていた。

山田将司

 ライブの中核を担っていたのはもちろん、アルバム『アントロギア』の楽曲だ。例えば「ユートピア」(作詞:山田将司、作曲:菅波栄純)。獰猛なダンスビート、激しく歪んだギターを軸にしたバンドサウンドは、このツアーのムードを象徴する楽曲と言える。根底にあるのは、「絶望をくぐり抜け、その先にあるユートピアに向かって進むんだ」という強い意思。〈まだまだ生きようぜ/バッドエンドなんて興味あるわけねえ〉というフレーズを目の前の観客に直接響かせるような山田のボーカルにも心を打たれた。

菅波栄純

 また「ヒガンバナ」(作詞:松田晋二、作曲:菅波栄純)における生命力に満ち溢れたグルーヴ、それを受け取り、気持ち良さそうに身体を揺らしまくるオーディエンス(メンバーと同世代の人たちから10代のバンドキッズまで幅広い)のコントラストもライブ前半における大きなポイントだった。〈諦めさえも 踏み潰して/何度でも 歩き出せ〉〈命のかぎり 咲き続ける/君は情熱の花〉というシンプルで直接的なフレーズを躍動させるパフォーマンスも、このバンドの得意技だろう。

 「疾風怒濤」(作詞・作曲:菅波栄純)も強烈なインパクトを放っていた。グランジ、ヘヴィロック、レゲエといった多彩な要素を力づくでぶち込んだ楽曲なのだが、この“ごちゃ混ぜ感”もまたTHE BACK HORNの特徴であり、その効果はステージ上でさらに増幅されていた。混沌としたサイケデリアを轟音でぶちまける演奏も最高。こういう曲でもっとも生き生きと張り切るのは、もちろん菅波だ。歌詞の内容に合わせてアクションし、ステージ前方で鋭利なギターを響かせる彼の存在感はやはり唯一無二だ。

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