BTS、世界的ポップアイコンになるまでの軌跡 アルバム『Proof』に見るサウンドの変遷

 そして、言わずとしれた「Dynamite」。全力で勝負をかけたこの全編英語詞のディスコチューンが成功をおさめることとなる。初期のゴリゴリとしたヒップホップサウンドとも、2010年代中盤~後半のドラマティックなEDMサウンドともまったく異なる、ど直球の「ポップ」を体現したこの曲。続く「Butter」も、限界まで切り詰めたような恐るべきタイトな展開で濃密なポップソングをつくりあげた珠玉の一曲。

BTS (방탄소년단) 'Dynamite' Official MV
BTS (방탄소년단) 'Butter' Official MV

 正直、「ここまで来たらあとはどうなってしまうというんだ」とさえ思ってしまうほどの歩みを見せてきたBTSが、今回その足跡を振り返ったうえで付け足した一曲が「Yet To Come」、つまり「これからだ」。幸福感に満ちながらも微妙な陰影のあるビート。語り口は優しく落ち着いているが、「最良の瞬間はまだこれから来るんだ」と言い切る姿には並々ならぬ自負と決意が感じられる。未来への不安と焦燥をまっすぐに表現していた「Born Singer」の身を切るような痛みが、9年後にはここに結実する。

BTS (방탄소년단) 'Yet To Come (The Most Beautiful Moment)' Official MV

 ――という具合に、じっくりとディスク1を味わうだけで得も言われぬ感慨を覚えてしまうのだが、メンバーのソロやユニット曲を収めたディスク2や、フィジカル限定ながらデモバージョンや未発表音源が集まるディスク3まで含めれば、それはあくまで『Proof』の3分の1にすぎない。また、ディスク2収録の新曲「RUN BTS」はロックとヒップホップがクロスオーバーするひりひりとしたミニマルなビートのうえにポップなフレーズが滑り込む良曲だし、ディスク3中唯一デジタルでも聴くことができる新曲「For Youth」は、流麗なメロディとハーモニーと共にファン=ARMYへ捧げる言葉が紡がれる壮大なバラードだ。この濃密な『Proof』を一区切りに、来るべき「最良の瞬間」を心待ちにして、今後のBTSの活躍に注視していきたい。

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