Eve、ツアー『廻人』で巡ったアルバム4作の世界 これまでの軌跡とこの先のビジョンを結びつけたステージに
スクリーンに映し出された映像が逆回転し、ライブは再びアルバム『廻人』の世界へ。ライブ本編のラスト2曲は、Eve自身をモチーフにした音楽映画『Adam by Eve: A Live in Animation』のために制作された楽曲だった。まずは「暴徒」。軽快なギターカッティングを軸にしたバンドのグルーヴ、快楽的なラインを描き出す旋律、〈修羅の炎に身を焼かれた為 再起不能な僕を囲んでは〉というダークなイメージをもたらす歌詞が一つになったアッパーソングが、会場全体をダンスフロアに変貌させる。ラストの「退屈を再演しないで」は“Eve流のディスコティック”と呼びたくなるトラック。儚い心象風景が現実世界を侵食するような歌も実に気持ちいい。この2曲の共通点は、ダンスチューンとしての機能とシリアスな感情を反映した歌詞のコントラストだろう。
アンコールを求める手拍子に導かれ、再びステージに登場したEve。「新曲やってもいいですか」とアニメ映画『バブル』のオープニング主題歌「Bubble feat.Uta」を披露。「終わっちゃうのが寂しいです」と、ゆっくり観客に向かって話しかける。ツアーを始める前は不安があったこと。この場所に来ないという選択をした人もいたこと。この状況のなか、『文化』から『廻人』まで、いままでの曲を振り返りながら歌えたのに幸せを感じていることーー。「曲を作りはじめて5年経つんですけど、まさかこんなに大きいところでやるとは想像もしてなかったし、今も夢を見ているような感覚です。ライブの数も少ないし、まだまだ未熟なんですけど、みなさんのおかげでここに立てています」「今日のライブは僕にとってかけがえのないものになったし、次につながる自信にもなりました。本当にありがとう」という言葉に対し、客席からはこの日いちばん大きい拍手が送られた。
最後に未来を鮮やかに照らし出す「群青讃歌」を思い切り歌い上げ、「ありがとうございました。Eveでした」という挨拶でライブは終了……と思いきや、すぐさま「もう1曲やってもいいですか?」と急遽「お気に召すまま」を演奏。名残惜しそうな様子でEveがステージを降りた後も、会場には心地よい拍手が鳴り響いた。2022年8月29日、30日には、『Eve Live Tour 2022 廻人』の追加公演として初の日本武道館ライブも決定。ツアー本編では、“Eveクロニクル”と称すべきステージを見せてくれたEve。武道館公演ではぜひ、この先のEveのビジョンも体感したい。
■セットリスト
0.廻人(instrumental)
1.廻廻奇譚
2.夜は仄か
3.遊生夢死
4.YOKU
5.心海
6.doublet(instrumental)
7.LEO
8.闇夜
9.いのちの食べ方
10.slumber(instrumental)
11.トーキョーゲットー
12.アウトサイダー
13.ラストダンス
14.君に世界
15.fanfare -inst-
16.ナンセンス文学
17.ドラマツルギー
18.暴徒
19.退屈を再演しないで
<ENCORE>
1.Bubble feat.Uta
2.群青讃歌
3.お気に召すまま