Mr.Childrenのベスト盤が圧倒的大差でチャートトップに 続けて聴くことで浮かび上がる時代に沿った変化
参照:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2022-05-23/
今週のアルバムチャート。Mr.Children(以下、ミスチル)の過去10年間の楽曲を二枚に分けたベストアルバム『Mr.Children 2015-2021 & NOW』『Mr.Children 2011-2015』が1位2位を独占しています。なんだか既視感がありますね。二枚のベスト盤が上位独占というニュースがかつて駆け巡ったのは、2001年から2010年の曲をまとめた『Mr.Children 2001-2005 <micro>』『Mr.Children 2005-2010 <macro>』が登場した2012年5月のこと。さらに遡れば、20年前のベスト盤『Mr. Children 1992-1995』『Mr. Children 1996-2000』も二枚同時に爆売れしました。きっかり10年ごとに起こってきたミスチルの周年現象。サブスク時代の今も20万枚近いセールスとは、なんとも素晴らしい記録です。
いまや誰もが認める国民的バンドであるミスチル。そのイメージは、うまくいかず思い悩む人生に寄り添い、前に進む勇気をくれる存在、といったところ(つまりは〈果てしない闇の向こうに oh oh 手を伸ばそう〉)。真面目さや人の良さがそのまま伝わってくる桜井和寿の佇まい、バンドであっても激しすぎないソフィスティケイトされたストリングスなど、安心安全の“ミスチル印”は90年代から今もブレないままです。
とはいえ、最新のベスト盤を聴くと変化に気付かされます。彼らは作品ごと、時代ごとに、何度も視座の更新を見せてきました。2011年以降の桜井和寿は、ものすごくシビアなことも歌にしているのです。
たとえば『Mr.Children 2015-2021 & NOW』の幕開けとなる「Starting Over」。アニメ映画『バケモノの子』主題歌である同曲の歌い出しは〈肥大したモンスターの頭を/隠し持った散弾銃で仕留める/今度こそ 躊躇などせずに/その引き金を引きたい〉と、なんとも不穏。一回は躊躇してしまう気の弱さも窺えますが、ここに滲むのはやり切れない怒りと不満、あとは破壊願望でしょう。
『Mr.Children 2011-2015』にはバンド史上最も激しいロックナンバー「REM」も収録されています。これは曲調からして派手な攻撃性を孕んでいますが、サビは〈こんな自由を奪うような夢のない夢なら見たくはない/要らない要らない〉とすべてを否定するニュアンス。映画『リアル〜完全なる首長竜の日〜』主題歌として「とにかくぶっ飛ばしてくれ!」と映画サイドからリクエストされていた背景もあるのでしょうが(※1)、間違いなく、時代の閉塞感と密接に結びついた一曲だと思います。