バーチャルアンデッドユニット BOOGEY VOXX、音楽を軸にした活動の足跡 クラブとの関わりもポイントに
4月24日よりTOWER RECORDS新宿店に特設ブースが設置されたバーチャルアーティストの名を知っているだろうか。彼らはBOOGEY VOXX。どの企業にも所属せず、自分たちの力だけで活動する、個人勢、いや、“故”人勢として最強の音楽力を持つこのユニットは、これを機に学ぶに相応しい。Vラップを扱う記事(※1)の中で紹介した彼らだが、今回はそこでは語りきれなかった多くの魅力を深掘りして紹介していく。
BOOGEY VOXX(以下BGV)は、ボーカル担当のキョンシー・Ciとラップ担当のフランケンシュタイン・Fraの2人からなる“バーチャルアンデッドユニット”。音楽活動を明確に軸に据えたユニットで、ゲームや雑談の配信をメインコンテンツにしたバーチャルアーティストとは一線を画す。
まずは、彼らの足跡を辿ろう。彼らは2020年2月にTwitterを開設し、3月にみきとP「ロキ」のカバー動画でデビューを果たした。それ以降、現在まで毎週金曜日にカバー動画を投稿し続けている。同年5月には初のオリジナル楽曲「D.I.Y.」をリリースし、爆発的にその名を轟かせた。9月には森カリオペ(Mori Calliope)「失礼しますが、RIP♡」のカバーを投稿しスマッシュヒット。2021年、「ロキ」の投稿日と同じ3月6日にアルバム『Bang!!』をリリースし、それ以降活動が加速していく。同年6月には『#デッドマーチ02』と題したライブにて、3Dモデルを披露。また同月にカバー楽曲のコレクションEP『BGV#ぶぎぼのうたばん』をリリース。さらに10月リリースのアルバム『死亡的観測』収録曲「CROWN (feat. Mori Calliope)」でも話題を呼び、今に至る。
音楽的な魅力の前に、彼らの活動のどの部分が驚異的か説明しよう。まず、カバー動画の週一発表ということの凄まじさは、音楽に触れたことのある人間ならば容易に理解できるだろう。アーティストによっては、それだけでもかなりの時間をかける作業を、配信活動といった他の活動の傍らコンスタントに続けているのだ。それをデビュー当初から絶やしていないのだから、凄まじいバイタリティだ。そのスピード感によって最新の流行を追う層にリーチしつつ、選曲センスもまた彼らの音楽性を輝かせることに一役買っている。バーチャルにハマる世代にどストライクかつ、“VTuber”と“歌”を接続するのに大きな役割を果たした「ロキ」がデビュー投稿曲に選ばれていることも、それを補強する要素だ。
キズナアイや電脳少女シロを想像すると分かりづらいかもしれないが、3Dでの活動を無所属で行うというのも特筆すべき点だ。現実の体の動きに合わせてバーチャルキャラクターを動かすには、大掛かりな機材が必要となる。モデルの用意もコストがかかり、そこに踏み出すには大きな壁がある。個人勢かつ非3Dクリエイターとなると、天開司、歌衣メイカ、兎鞠まり、ガッチマンVからなるグループ・All guysや、ぽこピー(甲賀流忍者ぽんぽことピーナッツくん)といった“超一流”に限られてくる。ほぼ音楽一本でその壁を打ち破っていることがいかに凄まじいか、感じていただけるだろう。
クラブとの関わりが深いことも、BGVの大きな特徴の一つだ。クラブイベント向けRemix EPをクリエイターズマーケット BOOTHにて無料配布するという試みが話題を集め、特に「D.I.Y.」は今ではオタクカルチャーのクラブシーンでアンセムと呼んでも差し支えないほどに浸透している。本人たちも、日本最大級のアニソンクラブイベント『宴』シリーズに何度も出演しており、5月21日には新プロジェクト『Vの宴』に出演することも決まっている。彼らの言う“生前”、つまりバーチャルな活動を始める前に積み重ねたライブイベント経験によって、その場で最高のパフォーマンスができることも要因の一つだろう。