バーチャルアンデッドユニット BOOGEY VOXX、音楽を軸にした活動の足跡 クラブとの関わりもポイントに
圧倒的な歌声とラップテクが作り上げるBGVのパワー
BGVの音楽は、「単純に上手い」という評価が一番しっくりくる。Ciの歌声は、決して変幻自在というタイプではない。m-flo「miss you」のカバーのようにハスキーな成分を巧みに使いチルをシャープに決めることもあれば、全編を通して叫ぶように歌う「Digmen Funk」など、確かなテクニックはあるが、本質はそこではない。やはり一番に輝きを増すのは、その圧倒的なパワーを全面に押し出したときだろう。表現に幅を持っているという面を見せながらも、ストレートな歌声が最も似合うというのが、フィジカルで勝負するようなカッコ良さを醸し出している。
一方Fraは、テクニックが大きな領域を占めるラップにおいて「何でもできる」ことによってパワーを示している。広いテンポ感やライムの硬さを操り、喉を締めて鼻腔を震わせるような声質は、英語的な発音にも対応できる。なかでも「Digmen Funk」はFraの複数の面が一挙に理解できる曲だろう。「CROWN」でコラボした森カリオペは間を詰めるようなスタイルが得意で、発音を含めて統一感を出すことも当然Fraにはできたはず。しかし彼は、ライムを固めすぎず、日本語として聞き取りやすいフロウを選択している。硬すぎない韻や不規則な間がまるでフリースタイルのようなグルーヴを作り出しており、真っ向からぶつかっていく意思表示のようにも見える。
また、彼の歌詞にも隙はない。カバー動画では、Fraが楽曲にメスを入れ、その意図を汲み取ったり汲み取らなかったりを選択的に切り替えながら作詞していく。そこにも、自在な表現方法を持つFraの強みが光っている。オリジナル曲の場合、2人で、あるいはそれ以上の人数で対話を重ねながら、テーマについての解釈や理解を深め、納得がいくまで練り上げられたものが世に送り出されている。歌詞だけでなく、その他の部分についても隙がない。そこが最強のバーチャルアーティストの一組と筆者が確信を持てる所以だ。
バーチャル界にいくつか張られた前線の正面に立って牽引しているBOOGEY VOXX。今やその前線がTOWER RECORDS店舗というリアルにまで拡大している光景があるのだ。プロモーション力のある企業勢が大きな輝きを放っているのも確かな事実だが、個人勢も着実に勢力を伸ばしている。その中で存在感を増しているBGVの活躍は、こんなところで止まるはずがないだろう。リアルを揺るがすその現場を、その目で確かめてみてほしい。
※1:https://realsound.jp/2022/04/post-1000884.html