花譜、理芽、春猿火、ヰ世界情緒、幸祜によるV.W.Pがファンにかける“魔法” 魔女の世界を体現した初ワンマンライブレポ

V.W.P、初ワンマンレポ

 ポエトリーを挟み、再び5人が集結し、まずはヰ世界情緒のセンター曲「変身」を披露。続く3曲は、すべてカンザキイオリによる新曲。理芽がセンターのダークでファンキーな「玩具」、可愛らしい喋り声とパワフルな歌声のギャップにくらくらさせられる幸祜がセンターの「秘密」。そして、春猿火がセンターの「定命」では、吐き捨てるようなラップから縋るような震え声まで、感情表現の豊かさとパフォーマンス力を見せつけた。どれも初披露の新曲にも関わらず、会場が一体となって腕を突き上げての盛り上がりを見せていたのも印象的だった。

 センターを務めたメンバーがそれぞれの楽曲について解説。「玩具」は、死ねない偽物の体で逃げられない戦いに心が狂い始める様が。「秘密」は、辛いことはフィクションなんだと自分に言い聞かせているような。「定命」は魔女たちの作られた運命からはみ出して自分達と周りの世界に革命を起こすぞという強い意志が込められた曲だという。

 そして、メンバーそれぞれがV.W.Pと今日のライブへの思いを語った。

「私たちは音楽で、今私たちの声を聴いてくれているあなたに歌と愛で寄り添いたい、魔法をかけたい、仮想と現実のはざまから皆さんに届けたい、そう思って活動してきました」(春猿火)

「この活動を通してみんなが教えてくれた、“好きだよ”、“大好きだよ”、そんな言葉が溶けない魔法になっていくように、歌っていきたい。生きていきたい。ここにいる4人と一緒に」(ヰ世界情緒)

「現実世界に魔法なんてないのかもしれないけど、あたしたちが君たちに音楽を届けてるこの仮想世界なら、魔法って本当にあるのかもしれないなと思っています。だから、あたしたちの魔法でこれからもあなたたちとの世界を変えていきたい。あたしたちから届ける歌は、私たちの願いでもあり、希望であり、そして魔法なんです」(理芽)

「まさに今、世界は大変なことになっていて、だからこそ私たちが仮想世界と現実のはざまからこうして歌を届けることに大きな意味があると思っています。その一瞬一瞬とその姿をみんなに見ていてほしいです」(幸祜)

「今私たち5人がこうして同じステージに仲間として魔女たちと呼ばれて並んで繋がって一緒に立てていることは本当に奇跡のようなことだと思っています。〈偽物かもしれないけど〉という歌詞が歌の中にもありますが、たとえそうだとしても、私たちを見てくれている観測者の方が私たちを今本当にしてくれています。観測してくれてありがとう。私たち5人だから伝えられること、私たちにしか作れない奇跡をこれからも生み出し続けたいです。だからV.W.Pは歌い続けます。どうか見ていてください」(花譜)

 〈揺れるフードも踊る髪の毛もなにもかも全部フィクション〉(宣戦)、〈私たちは偽物だ〉(言霊)ーーV.W.Pの楽曲には“フィクション”“偽物”という歌詞が頻出する。バーチャルな存在である彼女たちは、確かにある意味では“偽物”なのかもしれない。だが、フィクションだから、実体がないから、という理由でその意義を否定できてしまうなら、この世にはこんなにも多くのフィクションは存在していないだろう。偽物の中に、見る人の心の何かを呼び起こす真実があるから、この世界にはこんなにも多くのフィクションがあり、こんなにも愛されている。

 V.W.Pが「フィクションだ」「偽物だ」と繰り返し歌い、メタ的な部分に自ら何度も踏み込んでいく様子は、仮想世界と現実の境界を越えるために必死に手を伸ばしているように見える。そして、その歌は現実の人間に届いて、彼女たちを見つめる観測者を生むという実際の現象に繋がっている。「偽物を歌で本物に変換する」、V.W.Pは、そういう魔法が使える魔女なのではないだろうか。

 ライブの最後を締め括るのは、V.W.Pの始まりの曲、「魔女(真)」。〈この世界は私のものだ 音が鳴り響くまで〉という言葉が伸びやかに響く。音楽が鳴っている間、たしかにそこは、魔女の世界だった。

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