『からかい上手の高木さん』を彩るJ-POPカバー 高橋李依の歌声、物語に沿った選曲の魅力を紐解く
6月10日に劇場版が公開される『からかい上手の高木さん』シリーズ。先日放送を終えたアニメ第3期の最終話では、自分の本当の気持ちに気づいた西片(CV:梶裕貴)が、ついに高木さん(CV:高橋李依)に告白するというシーンにおいて、桜が舞い散る情景をバックに高木さんの歌うORANGE RANGE「花」が流れ、そのラストをより感動的に彩った。
高木さんが歌うJ-POPカバーは、各エピソードの内容に沿った選曲で第1期から好評を博している。選曲は主に2000年代の楽曲が中心で、雑誌『ゲッサン』で連載がスタートした2013年当時、高木さんが中学に入学したばかりだと考えると、高木さんがリアルタイムで聴いていたであろう選曲がなされていることが分かる。中には90年代、それ以前のものもあるが、それは高木さんの親世代のスタンダードナンバー、または高木さんがテレビなどを見て知った曲なのかもしれない。各曲の歌詞は、ストーリーやシーンと重なる部分が随所に見られ、毎回放送後には物語とのシンクロ率の高さなどがSNSを湧かせた。
そんな高木さんによるカバーの好評を受けて、『「からかい上手の高木さん」Cover Song Collection』『「からかい上手の高木さん2」Cover Song Collection』が発売されている他、第2期放送終了後の2019年12月には、「言わないけどね。」「ゼロセンチメートル」「まっすぐ」といった1期〜3期のオープニングテーマを手がける大原ゆい子とのライブイベント『クリスマスイヴイヴイヴライブ~あたため上手の高木サンタ~』が開催された。TVアニメ第3期&映画化が発表された際には、西片役の梶裕貴がプレスリリースにて「個人的には、エンディングに流れる高木さんのカバーソングがすごく楽しみです!」とコメントしたほど(※1)。
第1期では、いきものがかり「気まぐれロマンティック」を始め、HY「AM11:00」、GReeeeN「愛唄」、Every Little Thing「出逢った頃のように」などがカバーされた。空き地で自転車の二人乗りの特訓をした第6話ではJUDY AND MARYの「自転車」が歌われ、2人の恋が走りだしたようなドキドキと楽曲の疾走感が相まった。台風をテーマにしたエピソードが放送された第8話では、“風”つながりでチャットモンチーの「風吹けば恋」が、第9話ではMONGOL800の「小さな恋のうた」が歌われ、〈思いを込めた手紙もふえる〉という歌詞が、西片が携帯を買ってメールのやり取りが始まった場面と重なった。
第2期は、“手をつなぐ”ことが歌詞に出てくる曲が多いように感じた。第1話の最後で西片が川に落ちそうになる高木さんの手を引いて助けるシーンには、スキマスイッチ「奏(かなで)」の〈つなぐ手と手〉や〈君の手を引くその役目が僕の使命〉という歌詞が重なり、入学当時を振り返るシーンが放送された第3話では、GReeeeN「キセキ」の〈僕らの出逢いがもし偶然ならば? 運命ならば?〉という歌詞がストーリーの流れとマッチ。第7話の林間学校の回では、中島美嘉「STARS」と共に星空を2人で隠れて見るシーンが話題となった。そして第12話では、一緒に花火を見るためにお互いを探して走り回り、西片が高木さんを気遣って手を取る感動のシーンも。そのエンディングではCharaの「やさしい気持ち」がカバーされ、〈手を ずっとこうしてたいの〉という歌詞に高木さんの気持ちが表れていたように思う。中学生の西片にとって、異性と手を繋ぐことは非常にハードルが高く、それを乗り越えることで西片の気持ちの進展が表現されていた。