乃木坂46 佐藤楓が座長務めたアンダーライブはターニングポイントに 役割を意識することで生まれた飛躍の瞬間

乃木坂 佐藤楓が座長のアンダーライブレポ

 本編最後の曲に入る前、座長の佐藤楓はアンダーセンターに選ばれた当初の戸惑いを口にしながら、「最近は先輩方の相次ぐ卒業があり、その卒業に目を背けて立ち止まりそうになることもありましたが、私たちに立ち止まっている時間なんてなくて。今ここにも後輩がたくさんいますし、5期生も入ってきてくれて、3期生はもうとっくに引っ張っていく側の立場になっている。なので、センターと決まってからすぐに気持ちを切り替えることができました」とコメント。続けて「少し前の私だったら、『どうしよう、大丈夫かな。私なんかでやっていけるのかな?』とネガティブな思考になったと思うんですけど、今回は全然そうではなくて。今まで自分が乃木坂46の活動でやってきたことに嘘はひとつもないし、自信を持ってやってきたことがあるからこそ、今ここにしっかりと立つことができています」とファンに伝え、自身が初めてアンダーに参加した楽曲である「新しい世界」でエモーショナルに締めくくった。

 感情が揺さぶられる場面が何度もあったライブ本編から一転、アンコールでは「人はなぜ走るのか?」や「扇風機」といった笑顔が印象的な楽曲が続く。この幸福感に満ちた空気に浸り、中村や松尾、伊藤理々杏は時に涙を浮かべながらこの3日間を経験できた喜びを口にする。これを受け、アンダーキャプテンでもある和田は「最後の曲、行きたくないね? 終わりたくないね?」と名残惜しそうに語り、「こういうことやっていいのかわからないけど、みんなでちょっとだけ何か歌ってみない? だって終わりたくないんだもん(笑)。私が責任取るから!」とメンバー全員で「きっかけ」のサビをアカペラで歌唱。このサプライズに、会場はさらに祝福モードに包まれ、ポジティブな空気のまま「乃木坂の詩」で2時間以上にわたるアンダーライブ千秋楽は幕を下ろした。

 最後に向井葉月が涙ぐみながら「このメンバーでこの景色を見れたことがすごく嬉しかったです。29枚目のアンダーライブという最高の場所を、みんなに忘れないでいてほしいと思います」と話すと、和田は「私は1期生なので最初からアンダーライブを経験してきて、小さな(Zepp)ブルーシアターとかで皆さんと、心と心がつながっているなと感じていたんですけど、今回この大きい会場で、あんなに遠くの人たちとも心を通わせることができるんだってことを知って。『いやいや、まだまだ』と笑う人もいるかもしれないですけど、私はこのまま頑張っていたらアンダーライブ、みんなで東京ドームでできるんじゃないかと思いました。だって、どんなに大きい会場でも、私たちの魂は強いから。そんな強い気持ちを持っているなと感じたので、ここにいる人誰ひとり残さず、こぼさず連れていきたいなと思いました」と宣言。すると、メンバーから驚きと歓喜の声が湧き上がり、客席からもこれまでにない盛大な拍手が巻き起こった。これまでもアンダーライブではさまざまなターニングポイントがあったが、この和田の宣言は間違いなく10周年を経た乃木坂46の第二章における最初のターニングポイントになるはず。乃木坂46史に残されるべき、重要な瞬間だったと断言しておく。

 和田の言葉に興奮冷めやらない客席からは、終演を告げるアナウンスが流れる中もアンコールを求める大きなハンドクラップが鳴り止まない。すると、メンバーたちも再びステージに舞い戻り、予定外の「ハウス!」をプレゼント。こうして、その場にいた者、そして配信を通じて楽しんでいた視聴者すべてを幸せな気持ちにさせた『乃木坂46 29thSGアンダーライブ』は終幕した。

 最初に述べた「役割が人を育てる」という言葉。座長でセンターの佐藤楓はもちろん、アンダーキャプテンを担う和田、乃木坂46を引っ張る側として心強い存在となった3期生、そして後輩の加入で意識が変わりつつある4期生と、すべてのメンバーがそれぞれのポジションを強く意識することで大きく飛躍し始めていることを、このライブを通じて感じ取ることができたはずだ。最近は決してポジティブな話題ばかりではない乃木坂46だが、思いが前に強く出たこの日の彼女たちの姿勢を、今は信じたいと思う。

■セットリスト
『乃木坂46 29thSGアンダーライブ』
2022年3月27日(日)ぴあアリーナMM
00. Overture
01. 狼に口笛を
02. 自惚れビーチ
03. My rule
04. 13日の金曜日
<思い出セレクション:M-5~20>
05. 命は美しい [センター:向井葉月]
06. マシンガンレイン [センター:矢久保美緒]
07. Route 246 [センター:金川紗耶]
08. その先の出口 [センター:吉田綾乃クリスティー]
09. 何もできずにそばにいる [センター:山崎怜奈]
10. 三角の空き地 [センター:黒見明香]
11. サヨナラの意味 [センター:北川悠理]
12. 女は一人じゃ眠れない [センター:和田まあや]
13. 自由の彼方 [センター:佐藤璃果]
14. 何度目の青空か? [センター:中村麗乃]
15. 君の名は希望 [センター:林瑠奈]
16. 制服のマネキン [センター:弓木奈於]
17. 世界で一番 孤独なLover [センター:松尾美佑]
18. ガールズルール [センター:伊藤理々杏]
19. Sing Out! [センター:阪口珠美]
20. 帰り道は遠回りしたくなる [センター:佐藤楓]
21. 行くあてのない僕たち
22. Wilderness world
23. 届かなくたって…
24. ここにいる理由
25. 嫉妬の権利
26. あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
27. 口ほどにもないKISS
28. 風船は生きている
29. 錆びたコンパス
30. 別れ際、もっと好きになる
31. 新しい世界
<アンコール>
32. 人はなぜ走るのか?
33. 扇風機
34. 乃木坂の詩
<ダブルアンコール>
35. ハウス!

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