乃木坂46 山崎怜奈が座長を務めた意義 “選抜/アンダー”の仕組みを再定義した『アンダーライブ2021』

乃木坂46山崎怜奈が座長を務めた意義 

 5月26日、乃木坂46の『アンダーライブ2021』が配信で開催された。横浜アリーナを舞台にした今回のアンダーライブは、先頃グループからの卒業を発表した2期生の伊藤純奈と渡辺みり愛にとって、ライブパフォーマンスを披露する在籍中最後の機会でもある。そしてまた、センターに山崎怜奈を迎えたこの日の公演は、彼女が今日築いているキャリアに導かれて、アンダーライブの見え方を大きく変えるような爽快さに満ちていた。

 ライブ本編に先立つ冒頭VTR、ラジオ番組を模したスタイルで放送ブースに入る山崎がトークをスタート、アンダー最新曲「錆びたコンパス」を紹介し、そのままVTRが明けるとライブ1曲目の同曲披露へと繋がっていく。「錆びたコンパス」のパフォーマンスには早くも、新たなアンダー楽曲のアンセムになることを予感させる力強さが宿る。

 また、アンダー楽曲としての「錆びたコンパス」の意義深さは、グループ史上でも稀有な道を開拓しつつある山崎が、その中心に立っていることにある。乃木坂46の抱えるシステム上、「アンダー」と対置される「選抜」メンバーは、グループにおいて特に対世間、いわば外向きの発信を担う存在でもある。グループが必須のものとしてきたその構造は、一方ではメンバーそれぞれの置かれる立場に偏りを生み、葛藤のもとにもなってきた。

 その中で、己の適性を開拓しながら存在感を増し、昨年秋以降は乃木坂46メンバーとして初めてラジオの帯番組パーソナリティも務めている山崎は、いわば「選抜」とは異なる回路で外向きの発信の場を獲得しつつある人物である。近年の彼女の歩みは、選抜/アンダーという枠組みに回収されないかたちで、グループに属するメンバーが個人としての活路を見出す新鮮な好例としてある。

 だからこそ、この公演全体に組み込まれたラジオ番組を模した趣向は、単なる企画性にとどまらず、本公演を率いる山崎自身が日々行なっている実践と結び合い共振しながら、既存のグループの枠組みを軽やかに置き去りにするような強さを持っていた。

 一方で、「錆びたコンパス」に次いで披露された渡辺みり愛センターの「風船は生きている」、そして伊藤純奈がセンターを務めた「My rule」では、たびたび際立ったパフォーマンスをみせてきた二人を中心に、ここまでのアンダーライブが積み重ねてきた歴史ゆえの厚みも表現してみせる。既存の枠組みを問い返しつつ、同時にアンダーライブの蓄積をも誇るような絶妙のバランスが、この冒頭ブロックにはうかがえた。

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