私立恵比寿中学、Saucy Dog 石原慎也提供の「ハッピーエンドとそれから」も好調 セルフタイトル掲げた最新アルバムは意欲作に
私立恵比寿中学の「ハッピーエンドとそれから」が3月9日の配信リリース以降好調だ。昨年5月の新メンバー加入後、『THE FIRST TAKE』でのパフォーマンスが話題を呼び、新体制初の楽曲「イヤフォン・ライオット」がストリーミング再生1600万回を記録。そして今回のヒットが続いている。5月にメジャーデビュー10周年を控えるエビ中の快進撃は止まらない。
「ハッピーエンドとそれから」はSaucy Dogの石原慎也が作詞作曲を担当した。石原らしい恋愛にまつわる追憶を歌う1曲だが生々しい感情描写は抑えられており、そっと思い出に触れるような清廉で軽快なポップソングに仕上がった。旋律の抑揚やクセのある歌い回しなど随所にSaucy Dogの気配を感じつつも、楽曲としてはこの9人のエビ中が歌うからこそ成立する記名性の高いものに仕上がっている。
それはこの曲が〈初恋の人 君はどうしてる?〉というシチュエーションを描いたことの影響が大きいと思う。“永遠に中学生”というコンセプトを掲げたグループゆえ、その楽曲は常にリアルタイムで進行する日々の記録であった。このため「ハッピーエンドとそれから」のような“あの頃”へと呼びかける楽曲は新鮮だ。学生として過ごした季節から徐々に離れつつある20代メンバー6人の柔軟な歌声はかつてを懐かしむこの曲にとてもマッチしている。
そこに新メンバーの歌声が混ざり、この曲の新たなエビ中らしさを決定づけた。現在進行形で10代を生きる3人が発するありのままの歌声は、この曲の風景を目の前に映し出していく。今まさに青き日々の真ん中にいる桜木心菜、小久保柚乃、風見和香、“あの頃”を思い浮かべる真山りか、安本彩花、星名美怜、柏木ひなた、小林歌穂、中山莉子の9人の声で紡いだからこそ、過去と現在を軽やかに飛び越えるような特別さをこの曲に宿したのだ。
「“永遠に中学生”を掲げながら本物の中学生はいない」という活動スタイルは2016年頃から少し笑えるキャッチーな側面として扱われてきた。しかし6人体制となった2018年辺りから精神の部分に息づく真実として、“永遠に中学生”は誇るべきエビ中の芯であり続けた。胸締めつけるノスタルジーと今ここにあるフレッシュな躍動。この9人だからこそ歌うことができた「ハッピーエンドとそれから」は“永遠に中学生”を再解釈し、エビ中というグループの特殊な在り方をありありと体現している。