ばってん少女隊、サウンドの変化がもたらす新たな魅力 「OiSa」から「YOIMIYA」まで、ダンスチューン3部作を徹底分析
3月18日に、ニューシングル「YOIMIYA」をリリースしたばってん少女隊。同曲は、トラックメイカーであるケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)がプロデュースを担当。
多くのリスナーが感じているように、彼女たちは2020年リリースの「OiSa」以降、楽曲にダンスミュージックの要素を取り込み、サウンド、振り付け、MVなどの面で毎回新しい表現を見せてきた。本稿では、ばってん少女隊とダンスチューンの邂逅をテーマに、前述の3曲の魅力を、宗像明将氏、渡辺彰浩氏がそれぞれの視点で分析する。(編集部)
ばってん少女隊のボーカルのリズムへのカンは鋭い
ばってん少女隊とケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)の邂逅は、宿命のようでもある。両者ともビートを重視して活動してきたアーティストだからだ。
たとえば、ばってん少女隊の2020年リリースのアルバム『ふぁん』に収録されていた「OiSa」は、彼女たちの知名度を一気に高めた楽曲にして、グローカルビーツと呼ぶにふさわしいトラックだった。渡邊忍(ASPARAGUS)が作詞作曲した「OiSa」は、博多山笠の掛け声に由来するフレーズを、祭囃子のハネるリズムに乗せることで、中毒性を持つビートを生みだした。一般的なJ-POPとは異なるテイストにもかかわらず、ばってん少女隊のボーカルのリズムへのカンは鋭い。
2021年の「わたし、恋始めたってよ!」も、「OiSa」と同じく渡邊忍が作詞作曲した楽曲だったが、ここではアプローチが変化。ビートのより繊細な変化と、それに対するばってん少女隊のボーカルの呼応が新鮮だった。
そして、2022年にリリースされるのが、ケンモチヒデフミの作詞作曲、プロデュースによる「YOIMIYA」だ。
水曜日のカンパネラといえば、初代主演・歌唱担当のコムアイ、二代目の詩羽によるラップとも語りともつかないボーカルの印象が強いだろう。その一方で、ケンモチヒデフミは水曜日のカンパネラのトラックメイカーとして、フューチャーハウスやベースミュージックをいち早く取り入れ、J-POPのメインストリームで鳴らしてきた人物だ。水曜日のカンパネラは、ケンモチヒデフミによるビートによって牽引されてきた。だからこそ、同じくビートを重視するばってん少女隊とのコラボレーションは運命的に感じられる。
「ケンモチヒデフミの技あり」
「YOIMIYA」とは、祭りの前日である宵宮を意味する。フューチャーハウスのビートとともに描かれていくのは、宵宮の昂揚感だ。特に、1番のBメロの〈眠れない夜をスワイプして〉という現代的なフレーズに合わせて和楽器の音色が鳴りだす瞬間には、「ケンモチヒデフミの技あり」と感じた。ここまで和楽器の音色は出てこないのだ。2番における漢字四文字の単語の連続も、水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミならでは。
そして、途中でアコースティック感が増すなど、情景の変化を描きだすかのようにビートは大きく変化していく。それに対するばってん少女隊のボーカルの呼応ぶりは、大きな聴きどころのひとつだ。
執筆時点では未見だが、MVも楽しみだ。近年の日本映画(実写、アニメ問わず)には民俗的、伝統的な要素が出てくることが多く、それは国内外の観客への大きなフックとなっている。「OiSa」のMVもまたそうした作品で、特に終盤、色とりどりの無数の和傘が輝く光景は美しく、強烈なカタルシスをもたらした。「わたし、恋始めたってよ!」のMVの舞台は、長崎県の壱岐島。その大自然とメンバーの表情、立ち姿がひたすらに美しい映像だった。「YOIMIYA」のMVがどんな驚きをもたらしてくれるのか、まさに祭りの前日のように期待してしまうのだ。(宗像明将)