宮下遊、ボーカルの変幻自在ぶりを味わう 4thアルバム『見つけた扉は』日常に差し込む一縷の光のような作品に
一方で、サウンド、メッセージ性も対極にあるのが、ホーンセクションのアンサンブルから派手さが際立ったサウンドに、挑戦的な低音やラップが組み込まれた「FREEEZE!!」(作詞・作曲:瑛太五月)、ブレない宮下遊自身を描いた攻撃的な歌詞に、これまでのすべての声色が駆使された「麒麟が死ぬ迄」(作詞・作曲・編曲:ツミキ)。なかでも、ヒップホップのリズムが新鮮な音色を放つ「FREEEZE!!」では、一味も二味も違う宮下遊のボーカルが印象に残る。この2曲に通じているのは、誰にも染まることなく、世の中を自分の眼で見定め、自分だけの道を切り拓いていくフロンティア精神が宿っていること。このように、攻撃的な楽曲群は、宮下遊のボーカルの変幻自在ぶりを発揮する。
本作に収録された全10曲のうち、宮下遊が唯一のオリジナル曲として生み出した「Ayka」は、2017年8月に投稿されたボーカロイド・GUMI歌唱の「カヤ」のリメイク楽曲。この2曲を並べて初めて、密接で切り離すことのできないアイカとカヤの2人が姿を現す。例えば、サビの〈雪のように死にたい 今すぐに〉と「カヤ」のサビの〈君は死んだからね 花びらのように〉がシンクロするのをはじめ、ノスタルジックかつ洗練されたメロディの中を相反した2人の対話が進んでいく。「カヤ」には存在しなかった美しく連なるピアノの音色も煌めくことで、柔らかな音像へと変化を遂げた「Ayka」も、寂しさが強調されたほかの書き下ろし楽曲と同様に、一貫した落ち着きがある。絶望の淵に立たされた人物が覚悟を決めて自身の運命を選んだ後、歌詞に登場するのは、光を象徴する本作のタイトル〈見つけた扉は〉。まぎれもなく、「Ayka」は、寂しさを纏ったこのアルバムの重要なポジションを占めている。
本作は、「FREEEZE!!」をはじめ、チャレンジングな部分もありながら、サウンドスケープがスケール感を増したことで、宮下遊のボーカルを芸術的な美しさで満ちたものに昇華させた。なかでも、浮遊感のある「ラストリヴ」や変則的なメロディがシアトリカルな世界観を構築する「再生」は、暗闇で映画を観たときに似た没入感を味わうことができる。変わらない日常に一縷の光を見つける『見つけた扉は』を聴き終えると、耳に住み着くのは、寂しさを秘めた柔らかな宮下遊のボーカル。それ自体が、新たな一面を解放することに成功した証といえるのではないだろうか。
■リリース情報
4thアルバム『見つけた扉は』
3月16日(水)リリース
サブスク・ダウンロード配信中/Music Streaming & Downloads
■ライブ情報
『彼方~宮下遊ワンマンライブ2022~』開催決定
2022年7月10日(日)Zepp DiverCity(TOKYO)
OPEN17:00/START18:00
チケット券種・料金 指定席 6,000円(税込)
※3歳以上有料
※ドリンク代600円別途必要
ライブ特設ページ:https://yuu-miyashita.com/live