くるり、NUMBER GIRL、Dragon Ash……デビュー25年迎えたロックバンド、シーンの最前線に与え続ける多大な影響
続いて、Dragon Ashについて。彼らは25年間にわたり、例えば、ロック×ヒップホップ、ロック×ラテンなど、数々のジャンルの壁を果敢に越境し続けてきたバンドであり、その必然として、Dragon Ashの影響を受けたアーティストは数え切れないほどに多く、そして多岐にわたる。それは、2021年の夏と冬に開催された2マンツアー『UNITED FRONT 2021』に参加したアーティストの顔ぶれを見れば明らかで、04 Limited Sazabys、BiSH、ハルカミライ、SUPER BEAVER、Creepy Nutsなど、Dragon Ashの次の世代のアーティストたちが「盟友」として同ツアーに参戦している。また昨年には、『ヒプノシスマイク』とのコラボレーションも実現しており、こうなるといよいよDragon Ashが影響を与えた範囲について、一つのジャンル、一つシーンで説明するのが難しくなってくる。あえて言えば、25年にわたる彼らの越境の闘争史があったからこそ、今の日本の音楽シーンに次々と新しい音楽が生まれ得る土壌が整っている、ということなのだろう。
このように、くるり、NUMBER GIRL、Dragon Ashが25年間にわたり掲げ続けてきたオルタナティブ・ロックの精神は、確実に次の世代へと受け継がれている。そして、それだけではなく、そうした次の世代のアーティストとの交流を通して彼らが得た刺激は、現在進行形で続く自身の活動へと還元されているはずだ。前述の岸田×はっとりの対談インタビューにおいて、岸田は「同業者からそういう気持ちいい話を聞けるとこっちも心が洗われるというかね。はっとりくんが今、一線でやってるプロフェッショナルな人としてどう立ち向かってるかを話してくれたのは私にとっても励みになります」と対談を締め括っていた。それは決して謙遜などではなく、常に学び続け変わり続けていく岸田の嘘偽りない本心なのだと思う。実際にくるりは、2021年にリリースした現時点における最新作『天才の愛』に象徴されるように、コード進行や楽曲構成の面、そしてリズム面、サウンド面において、今もなお、終わりなき探求を続けている。またDragon Ashも、近年エレクトロ×ロックを新結合させた新たなライブアンセムを続々と生み出している。NUMBER GIRLについては、2019年の再結成後、いまだ新曲の制作に関する動きは見せていないが、昨年末の『COUNTDOWN JAPAN 21/22』のステージが象徴的であったように、4人が轟かせる鋭利な爆音は、恐ろしいことにその鋭さと破壊力を増し続けている。
このように、時代の変化や次世代のアーティストの台頭に合わせて、自身も絶え間なく変わり続けている、もしくは己の表現をさらに懸命に磨き続けているからこそ、この3組は今もシーンの最前線で活躍し続けることができているのだと思う。そしてそのように止まることなく変化、進化を重ねていくことこそが、オルタナティブ・ロックにおいて必要不可欠なのかもしれない。くるり、NUMBER GIRL、Dragon Ash、そして彼らと共に新しい挑戦を続ける次世代のアーティストたちの探求の旅は、いつまでも終わることはないのだろう。
※1:https://twitter.com/zutomayo/status/1493114315552878592