浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS、研ぎ澄まされた3ピースのロックンロール 繊細さと豪快さが炸裂したツアーファイナル

浅井健一 、繊細さ&豪快さ炸裂のツアーファイナル

 さて、その現在のKILLSによるライブの中盤、「めっちゃくちゃ懐かしいやつ、やります」と言って演奏されたのは「15才」だった。BLANKEY JET CITY、1995年リリースのアルバム『SKUNK』に収録されたナンバーで、僕もあまりに久しぶりに生で聴いたので、つい感動してしまった。ワイルドな風貌で爆音を鳴らしたBLANKEYだが、あのバンドが衝撃的だったことのひとつには、そんなサウンドで歌われる言葉の世界があまりにナイーブで、どこまでも透き通っていたということがある。そして、これもそんな曲のひとつだ。ただ、先ほどまでの話になぞらえれば、ベンジーは3人でのロックンロールを追い求める一方、こうしたイマジネーションが拡がっていくようなセンシティブな世界を違う形で表現しようとして、別の音楽性を模索し始めた流れもあった。もっともこの夜の「15才」はKILLSの3人による叙情的な演奏によって、見事に表現されていた。

小林瞳

 ライブが進むごとに曲調に広がりが生まれ、現編成での特徴がくっきりと見えはじめた。「暗いブルーは暗いブルーさ」は浅井健一名義の『BLOOD SHIFT』(2019年)収録曲で、ここではラウドでありながらもグルーヴィな香りを持つロックナンバーとなっていた。高松のベースが刻むリズムが曲に一層の味わいを与えているのだ。ちょっとホラーな歌詞とギターのカッティングが印象的な「デッドアルマジロ」は2003年、JUDE時代の曲で、ベンジー自身のコーラスや繊細なリズム隊の演奏も聴きどころである。小林と高松の2人は、パワフルな音も叩き出すが、それに加えて楽曲に細やかさや彩りを与えるのが非常に達者だ。特に小林のコーラスは女声の高いキーであることで、このバンドのサウンドのひとつの個性と言えるほどになっている。その存在感が増したのは、やはりJUDE「透明の戦場」(2002年)と、『BLOOD SHIFT』からの「Old Love Bullet Gun」だった。かつてはパワフルなメンバーを揃えることが多かったベンジーだが、トリオバンドだとしても現在はこうしたミュージシャンの顔ぶれになるのだなと感じ入ってしまった。

 終盤は「JODY」、そして去年の『Caramel Guerrilla』からの「全然足りない」と激烈なロックを連発。本編の最後を飾ったのはBLANKEYの「SWEET DAYS」だった。このポップソングから、もう24年。今もベンジーは第一線で、ロックバンドで歌っている。

 アンコールで再登場した彼は客席に話しかけた。「コロナ、大変だよね。乗り越えていこうぜ、みんなで」。フロアから拍手が起こる。そういえばコロナ禍に見舞われる前までは、ベンジーとしては異例のことだが、アンコールでトークコーナーが設けられて、何気ない話をメンバーに振ったりしていたものだ。今は、特にライブハウスではあまり長時間やらない傾向にあるので、それがなくなったのが少し寂しい気がする。ユーモラスなやり取りをするこのバンドも親しみが持てて良かったのだ。ただ、何よりもこうしてライブが安全に行われることこそ、一番大切なことなのだが。

 アンコールでは「目覚める時」から、BLANKEYのタフなロカビリーナンバー「DERRINGER」へと続き、「Beautiful Death」で痛快なエンディングを迎えた。演奏の最後に「また会える時まで全員元気でな。バイバイ!」と叫び、ステージをあとにしたベンジーたち。いつも通りの言葉だ。しかしこの時期、「いつも通り」が楽しめるのがどんなにかけがえのないことか……それを強く感じもした。そして何より、轟音、スリル、グルーヴ、疾走感。トリオバンドの醍醐味をたっぷり堪能した夜だった。

 この後のKILLSは企画ライブやフェスへの参加予定が決まっている。また、ベンジーについてはゴールデンウィーク付近でAJICOでのイベント出演が発表されていて、これはちょっと意外だった。昨年、前回からなんと20年以上の間隔を置いてリリースとライブを行ったAJICOはひと区切りついたのだろうと思っていたからだ。

 いずれにしてもベンジーの動きからは、また目が離せない。そして彼はこれからも、トリオ編成で最高のロックンロールを歌っていってくれることだろう。

■浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS リリース情報
「ラブソングが聴こえる」
2022年2月5日(土)配信限定リリース
ダウンロード・ストリーミング:https://VA.lnk.to/QdeW9e

『Mellow Party -LIVE in TOKYO-』
2022年2月2日(水)発売/3,500円+税
CD・購入はこちらから:https://VA.lnk.to/0Fxhd1WN
ダウンロード・ストリーミング:https://VA.lnk.to/Q8CJXa

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