アイナ・ジ・エンドに渡辺淳之介が聞く、大阪城ホール公演に一人で臨む理由 BiSH解散後見据えた“孤独”への挑戦

アイナ・ジ・エンド、“孤独”への挑戦

“ステージに立つ人は顔が全てじゃない”って、人生をかけて証明していきたい

渡辺:今までのアイナ・ジ・エンドとしてのソロ公演っていうのは、バンドメンバーだったり、ダンサーさんと一緒にステージに立ってましたけど、今回の公演はどのような形ですか?

アイナ:はい。今回の大阪城ホールは、私1人で立たせてもらいます。ひとりきりです。

渡辺:一番デカいステージで、ひとりきりで。今回、その「1人で、他にステージに誰もいない状況でアイナやってみない?」って提案させてもらったわけなんですけど、(聞いた時は)どんな気持ちだった?

アイナ:今まで……って言っても、2021年に初めてのソロツアー、初めてのソロアルバムを出して。ちょうど1年位しかソロ活動していない中で、でも本当に色濃い期間で。バンドメンバーと、(ダンサーの)MASH、UFO、友達がいてくれたからステージに立てていたっていうのが強くあって。そこに来てくれるファンのみんな。それで成り立っていた1年だったので、急に渡辺さんに「今回はアイナ1人で城ホールに立ったらいい」って言われた時は、1回頭が真っ白になりました。

渡辺:バンドメンバーもダンサーもそうだし、俺もライブを観に行って、すごくいいグルーヴができていて。それでも今回、ひとりでステージに立つ意味はどう思う?

アイナ:これはもう、渡辺さんに言われた言葉を咀嚼して咀嚼して、自分の中で受け止めたことなんですけど。BiSHは2023年をもって解散する。それ以降も私1人で歌っていく……歌っていくかわからないけど、何せ私は表現がしていきたい。渡辺さんは「きっと2023年以降、相当なプレッシャーがあると思うよ」って教えてくれて。「今、BiSHのアイナ・ジ・エンドとしてある中で、大阪城ホールに1人で立つ。このプレッシャーを味わうことがいいんじゃないかなぁ」って言われた時は、言葉の意味はわかるけど……大阪城ホールってシンプルにめちゃくちゃ大きいし。大阪にいた頃なんて、そこで歌えるなんて思ってもなかったようなステージだったので、そこに1人で立つって、毎日夜考えても想像もできなかったんです。けど、やっぱりソロをやる上では、その孤独を味わった方が強くなれるかなと納得したので、私は今回は大阪城ホールに1人で立ちます。でも1人で立つから、お客さん一人一人としっかり向き合えるような気がしてます。やったことないんですけど、そんな気がしてきました。

渡辺:去年、一回メシ食いに行ったじゃん、ふたりで。その時にすごく印象的だった言葉があって。「BiSHをやってなかったら、まだライブハウスで5人とかの前で歌っていたかもしれないから、すごくよかったなって思ってる」って言ってくれたことが、すごく嬉しくてね。BiSHになってやってきた時にも仲間がいて、ソロになってもバンドメンバーとダンサーがいて、っていう状況だった。ライブハウスでやっていた時はひとりだったでしょ? 今回はより大きい場所で、ひとりでできるっていうことについてはどう思っているのかな。

アイナ:BiSHに拾ってもらってなかったら、何の親孝行もできてなかったかなって(笑)。大学も決まって入学金も払っていたけど、上京して。土産話もない状態では大阪には帰れないなと思ってた、あの日々がずっと続いてたと思います。

 そうですね……今も1人で大阪城ホールに立つのは、正直すごく不安だったり寂しい気持ちもあるけど、(ライブハウス時代の)お客さんがいないときのあの不安の気持ちとか寂しい気持ちとかもちゃんと経験したから。大阪城ホールにもし(お客さんが)2人とかしかいなくても私は精一杯やるけど、BiSHで一生懸命やってきたから、お客さんはいっぱいいるほうがいいな。強くなった自分を一緒に見届けてもらえたらいいな、って今は思ってます。メンバーといろいろなことを乗り越えてきた中で、“BiSHのアイナ・ジ・エンド”として、今できる最大限を大阪でやりたい。一回、精一杯をやってみたいです。

渡辺:なるほど。今回のこの大阪城ホールワンマン“帰巣本能”で、ソロのアイナ・ジ・エンドとして、何を表現したいのか、何を伝えたいのかを聞かせてもらえますか?

アイナ:小中学校の時にミュージカルの『アニー』を観て、自分にとって衝撃的で。同い年位の女の子がステージに立って、一生懸命歌っていて。それに感動してるお客さんがいて、自分が大好きなダンスも、お客さんがいっぱいいる前でやって。アニーになりたいと思って、学校の傘立てをステージに見立てて、廊下とかでずっと歌ってたりしてたんです。それからオーディション受けようと思って、オーディション用紙もお母さんと書いたんですけど、お父さんに「アイナは顔で落ちるからやめとけ」ってダイレクトに言われて(笑)。その時はやっぱ、めちゃくちゃ悲しくて「顔で落ちるんや……」みたいな。「そっかー、パパはカメラマンやし、いろんなモデルさんも見ているから、私が顔で落ちるってことを傷つく前に教えてくれたんや」と思ったりしたけど、やっぱ悲しかった。

 でも、この言葉をもらったからこそ「じゃあどうやったら唯一無二なれるのかな」「どうやったらステージの上できらきらできるのかな」って考えて。ダンスをずっとやっている中でも「自分にはこの劣等感とかがある、これを踊りにできる」とか。冷たい言葉を言われても、温かい言葉もいっぱいもらってきたから、それを思い出して表現できる。BiSHに拾ってもらってからも、メンバーといろんなことを経験して今があるんですけど……だから私は、“ステージに立つ人は顔が全てじゃない”って、人生をかけて証明していきたいと思ってて。

 でもお父さんに言われたこととかのおかげで、こうやって考えられたから、あの言葉はディスではなかったんだ、愛の言葉だなと今は思う(笑)。その上で、今回大阪城ホールで、アニーにはなれなかったけど、アイナ・ジ・エンドで立てたらいいな。私は子どもの時に「こんな風になりたい」と思ったけど、もしかしたら私を見て「こんな風になりたい」と思ってくれる小学校・中学校の子がいるかもしれないから、そんな子に出会いたいなって思ってます。

渡辺:顔じゃないですよ。

アイナ:本当ですか(笑)。

渡辺:本当に。俺が思うアイナって、最初に出会った頃からも顔が変わったなと思う。経験によって顔が変わっていくっていうか、きれいになったんだと思う。それってやっぱりいろんな人と、もちろん喜びも悲しみもいろんな悔しい思いもした中で、すごくいい経験ができたのかなあと思って。一番は、お客さんがいてくれて応援してくれるっていうことが、自分をきれいにさせるものなのかなあ、と思う。

アイナ:シャンプーの後にリンスをすることを知らなくて(笑)。(セントチヒロ・)チッチに教えてもらったり、女子力とかがほんと皆無で。いろんなことをメンバーに教わりました。あと初期の頃はアイドルになれたっていう喜びから、いっぱい自撮りをしてたんですよ。自撮りをすると清掃員(BiSHファンの呼称)の人がすごい分厚いリプをくれて。前髪切ったとか、リップ変えたとか、こんな些細なことでも気づいてくれる人がいるんだ、って。こんな私に「かわいいよ」をくれる人がいるんだって。こんなにリプくれるんだったら、もうちょっと頑張ろうとか。清掃員の人に見てもらえて、メンバーにいろいろ教えてもらったから美に対する意識も上がりました。

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