SixTONESのYouTubeを活用したプロモーション、『ジャニフェス』配信の影響も 「ジャニーズ楽曲大賞」に見る2021年の変化
今年も「ジャニーズ楽曲大賞2021」が開催された。本企画は、非公式ながら毎年延べ2万人近いジャニーズファンが参加し、過去1年間でジャニーズ事務所所属アーティストが発表した楽曲等に対して、最も印象に残ったものを投票する企画である。今年で実に16回目を迎えるが、結果発表時にはハッシュタグがTwitterトレンドに入るなど、大いに盛り上がった。
非公式企画という性質上、ファン層に多少の偏りはあるため、結果がジャニーズファンの総意とは言い難い。しかし、結果としての順位はもちろん、投票と共に寄せられたコメントなども含め、これだけ大規模にジャニーズファンの意見がオープンな形で得られる機会は希少であり、非常に価値の高い企画だ。
ここでは、「ジャニーズ楽曲大賞2021」の結果を通じて、2021年のジャニーズがどんな1年だったか、主催者に最大級の敬意を表しつつ振り返りたい。
コロナウイルスのパンデミックが続く中、2021年に発表されたジャニーズの楽曲数は324曲に上り、パンデミック以前を含む過去5年間で最多である。2020年末で嵐が活動を休止し、楽曲を発表したグループ数は減ったものの、楽曲数自体は増えた。そのためか、例年に比べて全体的に票が割れた印象だ。実際に、楽曲部門で有効投票数の1%以上を集めた曲の数は27曲で、こちらも過去5年間で最多となった。
表1:楽曲部門の対象曲数と対象グループ数および得票率1%以上の曲数(過去5年分)
対象年/対象曲数/対象グループ数/得票率1%以上の曲数
2017年/226曲/16組/22曲(※1)
2018年/285曲/18組/19曲(※2)
2019年/242曲/15組/22曲(※3)
2020年/282曲/19組/22曲(※4)
2021年/324曲/16組/27曲(※5)
※得票率の計算方法:各楽曲の獲得ポイント数を、有効投票数(2021年の場合、260,753ポイント)で割って算出
注目された楽曲部門の結果は、なにわ男子のデビュー曲「初心LOVE」が幅広い支持を集め、大方の予想通り1位を獲得した。一方で、ベスト10内にシングル表題曲ではない曲が4曲ランクイン(2020年は1曲)しており、非常に特徴的な結果となった。
表2:2021年楽曲部門ベスト10(※6)
順位/曲名/グループ名/ポイント
1位/「初心LOVE」/なにわ男子/15,704ポイント
2位/「群青ランナウェイ」/Hey! Say! JUMP/13,002ポイント
3位/「ネガティブファイター」/Hey! Say! JUMP/9,136ポイント
4位/「RIGHT NEXT TO YOU」(※)/Sexy Zone/9,091ポイント
5位/「夏のハイドレンジア」/Sexy Zone/7,136ポイント
6位/「95 groove」(※)/V6/5,332ポイント
7位/「Strawberry Breakfast」(※)/SixTONES/4,574ポイント
8位/「マスカラ」/SixTONES/4,473ポイント
9位/「Special Order」(※)/SixTONES/4,439ポイント
10位/「未来へ」/NEWS/4,393ポイント
(※)シングル表題曲ではない曲
シングル表題曲ではない4曲について、投票理由を探るべく、寄せられたコメント全件から語句を抽出し、その出現回数をカウントした。その中から、グループ名などを除き、特徴的な語句を上位5個分抜き出したものが、以下である。
表3:シングル表題曲ではない4曲のコメントにおける頻出語句(カッコ内数字は出現回数)
4位「RIGHT NEXT TO YOU」(Sexy Zone)
"英語"(181)/"10周年"(90)/"YouTube"(43)/"ライネク"(42)"/2021年"(41)
6位「95 groove」(V6)
"6人"(268)/"本日"(84)/"最後"(52)/"一曲"(35)/"26年間"(35)
7位「Strawberry Breakfast」(SixTONES)
"YouTube"(46)/"主演女優賞"(41)/"ジャニーズ"(31)/"6人"(31)/"ジャニオタ"(17)
9位「Special Order」(SixTONES)
"YouTube"(31)/"ジェシー"(16)/"ジャニーズ"(12)/"1番"(11)/"スペオダ"(10)
※語句抽出と集計方法:対象楽曲の公開された全コメントを自然言語処理サービス(Amazon Comprehend)を用いて語句を抽出し、その出現回数をカウント
4曲中3曲の頻出語句に「YouTube」がある。従来であれば、ジャニーズファンに広く知られる曲はシングル曲が多かったが、2021年はシングル曲か否かに関わらず、YouTubeで印象を残した楽曲が上位にランクインしている。実際、上位10曲中9曲は、ジャニーズ事務所から何らかの公式動画がYouTubeで公開されている。
前年2020年は、YouTubeの影響も多く見られたものの、テレビ番組で影響を受けた旨のコメントも多かった。2021年について言えば、テレビ番組より圧倒的にYouTubeの影響力をコメントから感じた。その意味では、ジャニーズでもようやく、YouTubeがプロモーションの中心になりつつある。特に、ベスト10に3曲がランクインしたSixTONESは、YouTubeを活用したプロモーションが最も功を奏したグループの1つと言える。
また、6位にランクインした「95 groove」(V6)は、解散ライブの最後に披露された曲であり、長年V6を愛してきたファンにとって特に強い思い入れが反映された結果となった。V6の解散ライブは、当日生配信され、多くのファンが画面越しに最後の勇姿を見届けた。従来なら、DVDやBlu-rayの発売を待たないと最後の曲を見ることはできず、ネット配信が普及したからこその順位であろう。