高橋優、身体ひとつで届けた10年分の感謝と音楽 日本武道館弾き語りライブ“白高橋”を観て

高橋優が届けた10年分の感謝と音楽

 黒高橋はダークサイド、白高橋はほんわかサイド。二つの異なるコンセプトで開催される、高橋優のメジャーデビュー10周年記念公演、武道館弾き語り2DAYSの2日目。舞台はアリーナ中央、360度を観客が取り囲む円形ステージの上には、アコースティックギターとマイクだけ。高橋優の原点、ストリートライブを彷彿させるシンプルなスタイル。それはきっと、どんな豪華なセットよりも記念の舞台にふさわしい。

高橋優
高橋優

 見たこともない満面の笑顔、大きく手を振りながら、四方に深々とお辞儀をしながら、おもむろに歌い出した「ありがとう」。力強いストロークと気迫みなぎる歌声が、広い空間いっぱいに響き渡る。ありがとう、今ここに君と僕とでいられるということ。この場にこれ以上ふさわしい歌詞はない、感謝の思いを込めた1曲目から、一転して激しい戦闘モードの「現実という名の怪物と戦う者たち」へ。光と希望を求めてがむしゃらに走る、圧倒的にポジティブなパワー。ほんわかだけじゃない、これも白高橋。

「僕の中の希望、光を感じてもらうために。精一杯歌わせていただきます」

 昨日とは1曲もかぶっておりませんーー。頼もしい言葉に拍手で応える観客。「靴紐」から「life song」へ、自然発生した手拍子に「ナイス手拍子!」と、すかさず合いの手を入れる高橋。それを受けて、「花のように」でさらに盛大な手拍子でリズムを刻む観客。そう、声は出せずともコミュニケーションは取れる。父と母から子へ、幸せのバトンをつなぐ家族の風景を歌う「産まれた理由」の、親密な歌声。僕は今幸せさ。それはたぶん、今この場所に最もふさわしい言葉。

 九段下駅の地下通路で出会った、いちご大福屋のおじさんとの心あたたまる、そして笑えるエピソード。相変わらずのしゃべり上手で楽しませながら、「今、君に会いに行く」「蓋」と、ギターをジャカジャカ鳴らして明るく朗らかに。♪武道館に来てくれてありがとう、と、歌詞を変えるのもニクい。さらに恋愛ドラマの「8月6日」、友情ソングの「友へ」と、ストーリー性の高い曲を連ねてじっくり聴かせる。何のギミックもないからこそ、裸の言葉と歌がまっすぐに飛び込んで来る。

 回転する舞台は、南向きから西向き、北を経て東へと、全方位の観客と向き合えるように動いてゆく。カズーの陽気な音色が楽しい「サンドイッチ」、ハーモニカを吹き鳴らす「微笑みのリズム」、そして初めてエレクトリックギターを手にし、ルーパーエフェクターを使ったリズムの上で、思いきりロックする「虹」へ。照明はもちろん鮮やかなレインボーカラー。すべてがシンプルだが、すべてが歌に寄り添う、シンプル・イズ・ビューティフルな演出がうれしい。

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