aiko、高橋優、クリープハイプ……日本語詞の魅力引き出すアーティストたち 新譜5作をピックアップ

 移り気な男性の心情を心地よいグルーヴとともに描いたaikoの40作目のシングル『ハニーメモリー』、喜怒哀楽をこれまで以上に生々しく描いた高橋優のニューアルバム『PERSONALITY』。日本語詞の魅力を引き出すアーティストの作品を紹介します!

aiko『ハニーメモリー』(初回限定仕様盤)

 息を吸い込む音が聴こえた次の瞬間、〈思いっきり泣いて泣いても未練は流れ落ちない〉というフレーズが耳に届く。美しくも切ないピアノの和音とともに響く次のライン〈君がいないと味がしないんだ〉によって楽曲は躍動しはじめ、聴き手の身体と心をグッと引き寄せる。aikoの40thシングルの表題曲「ハニーメモリー」は、日本語の響きを活かした彼女のソングライティングの特徴が強く押し出された楽曲だ。8分の6拍子のリズム、軽やかにステップを踏むように駆け上がるメロディのバランスも絶妙だが、特筆すべきはやはりフロウの素晴らしさ。歌声と言葉が共鳴し、“天然のブルーノート・スケール”と呼ぶべき音響へとつなげるセンスと技術は、「ハニーメモリー」においてもしっかりと活かされている。ずっと同じなのにいつも新しいaikoのポップスの秘密が感じられるような、問答無用の名曲だ。

aiko-『ハニーメモリー』music video
高橋優『PERSONALITY』(通常盤)

 〈笑われながら 悟らないまま 死ぬまで転がり続けよう FUCK YOU〉と叫ぶ「八卦良」、部屋のなかで展開される恋愛のシリアスな場面を切り取った「room」、“ずっと部屋にいたら太った”と愚痴る「フライドポテト」、サビのメロディで“うんこ”を連呼する「東京うんこ哀歌」。コロナ禍の自粛期間中に制作された楽曲を中心にしたニューアルバム『PERSONALITY』は、タイトル通り、高橋優の人となりや個性がこれまで以上にダイレクトに反映された作品。聴き手に阿ることなく、どこまでも自分に正直に書かれた歌詞は、きわめてパーソナルな内容だからこそ、幅広い層のリスナーの感情を揺さぶるはず。どれだけ自分自身と向き合い、生身の言葉を削り出せるかーーそれがシンガーソングライターの本質なのだと、このアルバムは証明している。

高橋優「room」MV
クリープハイプ『どうにかなる日々』

 劇場アニメ『どうにかなる日々』(原作:志村貴子/監督:佐藤卓哉)のオリジナルサウンドトラック。“元恋人の結婚式”“男子校の先生と生徒”“親に勘当された従姉”“思春期の幼馴染”からなる4つのショートストーリーに対し、切なく、愛らしく、ときに痛々しい感情を際立たせるような音楽を提示している。演奏もクリープハイプが担当。生楽器の響きを活かしたアンサンブルは、生々しい感情の交流を描いた映画の世界観と強く重なる。主題歌「モノマネ」では、“何から何までそっくりだったはずが2人がいつの間にかズレていた”という状況を、“テレビで見た下手なモノマネ”というモチーフを使って表現。風景の描写と感情の変化を織り交ぜながら、その背景にあるストーリーを想像させる尾崎世界観のソングライティングが冴えている。

クリープハイプ -「モノマネ」 (MUSIC VIDEO)

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