新内眞衣が切り拓いてきた乃木坂46の新たな王道 ラジオパーソナリティとしての軌跡も存分に詰め込んだ卒業セレモニー

新内眞衣が切り拓いてきた新たな王道

 イベントもいよいよ佳境に突入する。新内が「思い出の人、思い出のシングル」を振り返るVTR映像では、2016年当時最年長メンバーだった深川麻衣との思い出を涙ながらに語る場面もあり、深川からつないだバトンを後輩に引き継ぐための大切な1曲として「ハルジオンが咲く頃」を披露する。ここではお互いに信頼感の強い新内と梅澤のダブルセンターでパフォーマンスされ、ラストでは涙を堪えきれない梅澤の表情が印象に残った。さらに、大好きな曲として挙げることの多い「日常」を力強く歌い踊り、自身が初めて選抜入りを果たした「太陽ノック」を出演メンバー全員で披露。曲中、「9年間、長いようで短かった。そんな気がします」と思いを吐露する新内は、ステージの端から端まで駆け抜け、観客に挨拶する。そして、「乃木坂に入って後悔したことは一度もないくらい、楽しい9年間でした!」と力強く挨拶してイベント本編を終えた。

 アンコールでは白い艶やかなドレスに着替えた新内がステージにひとり現れ、現在の心境を告げていく。彼女はこれまで二度、人生を変えたいと思ったことがあり、その二度目が「大学3年生、20歳のときでした」と語る。そして、『オールナイトニッポン』のパーソナリティ就任が決まったときのことも「ラジオのパーソナリティは自分のことをお話して、エンターテインメントを届けるお仕事です。学生時代に受け入れてもらえなかった自分の性格を、全国ネットにお届けするのが最初はすごく怖くて、不安でした。だけど、リスナーの皆さんはなぜかそんな私の性格を受け入れてくれて、(何年も続けるうちに)自分のことを自分自身が受け入れられるようになりました」と本音を明かした。

 続けて、彼女は「乃木坂46のメンバーとして影響力はなかったかもしれないけど、一歩踏み出す勇気さえあれば10年後、20年後に笑っていられる自分がいると思います。なので、今日来ている皆さん、配信でご覧になっている皆さんも、この私の踏み出す勇気を受け取っていただいて、これからの人生に活かしていただけたら嬉しいなと思います」「1期生、2期生、3期生、4期生、卒業生、そして新たに5期生も加わります。それを全部含めて、私は乃木坂46だと思いますし、これからもずっと大好きな存在です。今までお世話になった皆さん、そして応援してくれた皆さん、ラジオを聴いてくれた皆さん、本当にありがとうございました」と感謝の言葉を告げ、最初で最後のソロ楽曲となる「あなたからの卒業」をライブ初歌唱する。途中で思いが込み上げ、涙で言葉に詰まる場面もあったが、最後まで歌い切った彼女は「こんな大きな会場で歌えて、すごく幸せでした」と喜びを口にし、その後メンバーがステージ上に勢揃いすると、新内が選抜復帰を果たすきっかけとなった「サヨナラの意味」を全員で歌唱した。

 最後の曲に入る前にはメンバーを代表して梅澤が、新内に向けて手紙を読み上げる時間も用意。新内を慕っていた梅澤らしい、強い思いの込められた手紙に2人は涙し、抱擁を交わす。そんな感動的な場面を経て、正真正銘のラストナンバー「ゆっくりと咲く花」をメンバー全員で歌い、最後は同期の北野、鈴木、山崎とともに涙と優しい笑顔に包み込んで卒業セレモニーは完結。新内は「本当に後悔はひとつもないので、今すっきりしています。私は正統派とか、そんなアイドルではなかったかもしれないですけど、乃木坂46として9年間走り続けた日々は本当に大切なものになりました。それは、ここにいる皆さんのおかげです。本当にありがとうございました!」と、改めて感謝を伝えてステージをあとにした。

 楽曲を次々に披露していく過去の卒業ライブとは一線を画する今回の『乃木坂46 新内眞衣 卒業セレモニー』は、ラジオパーソナリティというジャンルで自身の存在を確立させた新内ならではの内容だった。特に前日深夜の『乃木坂46のオールナイトニッポン』に触れてからこのイベントを体験した人は、彼女がグループに何を残してきたのかをより強く理解できたことだろう。彼女は最後に「私は正統派とかそんなアイドルではなかったかもしれない」と口にしたが、新内眞衣というアイドルはこの時代ならではの新たな正統派の形を提示した重要な存在だったと、筆者は断言したい。

■セットリスト
『乃木坂46 新内眞衣 卒業セレモニー』
2022年2月10日(木)東京国際フォーラム ホールA
00. Overture
01. 生まれたままで
02. トキトキメキメキ
03. Out of the blue
04. ハルジオンが咲く頃
05. 日常
06. 太陽ノック
<アンコール>
07. あなたからの卒業
08. サヨナラの意味
09. ゆっくりと咲く花

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