『アイドル楽曲大賞アフタートーク 2021』(メジャー編)
不動のエビ中、AKB48の返り咲き、TikTokブレイクの超とき宣……論客4者が振り返る、2021年のアイドルシーン
TikTokブレイクに上手く乗った超ときめき♡宣伝部
ーー3位はフィロソフィーのダンス「テレフォニズム」です。
ピロスエ:昨年9月に開催されたフィロソフィーのダンスとBEYOOOOONDSのツーマンライブ『unshrink』を観に行ったんです。そこでフィロソフィーのダンスがこの「テレフォニズム」を披露していたんですけど、僕は今年のアイドル楽曲大賞の自分の投票にこの曲を選ぼうと思うくらいによかったんです。これはシングル表題曲じゃなくて、カップリング曲なんですよね。
宗像:『カップラーメン・プログラム』のカップリングだよね。そのシングルには杏里の「CAT'S EYE」のカバーが収録されていて、ほかにもフィロのスはmihimaru GTの「気分上々↑↑」をカバーしています。カバー曲にはファンの間でも賛否がある中で、「テレフォニズム」のようなソウルを歌うストレートなフィロのスが大好きというみんなの本音がここには出てると思うんですね。Night Tempoがリミックスに参加するような楽曲でもあるし、みんなが求めているフィロのスはここにあるんだという思いがこの曲を3位に持ち上げた、魂の叫びを感じましたね。
ガリバー:フィロのスを1回しか観ていないピロスエさんが投票しようと思った最新曲があるのが単純にすごいなと思います。メジャーに行って停滞するグループなんて山ほどありますけど、アイドル楽曲大賞においてこうして毎年何かしらの作品で順位を残しているのは評価すべきですよね。
ーー超ときめき♡宣伝部は、4位に「7月のサイダー」、6位に「すきっ! ~超ver~」がランクインしました。
ガリバー:グループとしては、2018年に発表した「すきっ!」がTikTokで流行ったのが一番のニュースですよね。バズったことを追い風にミニアルバム『すきすきすきすきすきすきっ!』を出しちゃうノリも素晴らしかった。SNSでどうバズらせるかは誰しも試みることですが、意図せずバズったものにどう乗っかるかはより重要で、その点において非常にクレバーな動きをしたなという印象です。「夜明けBrand New Days」がバズった、ベイビーレイズJAPANを彷彿とさせるものでした。「すきっ! ~超ver~」はミニアルバムでの再録で、その中に収録されている「7月のサイダー」がさらに上にランクインしてきているのは、TikTokでの勢いをきちんと自分たちに手繰り寄せてきた結果だと思いました。
宗像:とき宣がTikTokでバズったことはものすごくて、例えばPerfumeの曲がTikTokで流れてると思ったら2006年にリリースされた「エレクトロ・ワールド」のBPMを勝手に落としたものが流行っていたりするんですよね。TikTokのバズって時空を超えたものが勝手にどんどん作られている。TikTokでバズってもそのままフェードアウトするケースの方が多いんですよ。とき宣のように流行りに乗れるっていうのはものすごい才能です。「7月のサイダー」は確かな歌声とベースラインで、アイドル楽曲大賞ファンも思わず投票してしまう楽曲。クリエイティブとしても勝利だと思います。
わーすた「詠み人知らずの青春歌」MVは涙なしには観られない
ーー5位はCYNHN「AOAWASE」となりました。
宗像:メンバーの崎乃奏音(現:サキノソト)さんがグループを卒業して、CYNHNは4人になっちゃったんですね。もともと6人だったところからどんどんメンバーが少なくなっていく中で、メインソングライターである渡辺翔さんがその状況を歌にしたかのようだったのが「AOAWASE」だった。グループのことを歌った楽曲ではあるんだけど、聴く人の心情にも投影することが可能で、鎮痛剤のような、痛みを音楽に昇華する感じが、このコロナ禍の状況にあっているのかなと個人的には思いました。「水生」がランクインした2020年からアイドル楽曲大賞の上位にくるようになったCYNHNですけど、オンラインで見つけられたボーカル力への期待に応え続けているのは一つあると思います。
ーー7位はわーすた「詠み人知らずの青春歌」です。
ガリバー:坂元葉月さんの卒業曲で、MVは涙なしには観られない映像です。12月の卒業ライブ後にはオフィシャルアカウントから猫耳をステージに置いて去る様子の写真が投稿されたところもMVとリンクしていて、2021年のベスト卒業曲と言ってもいいと思います。
宗像:そういえば、わーすたは猫耳をなんで付けてるんだっけと思う曲ではありますよね。
ーーわーすたは毎年10位以内にランクインしていますよね。
ガリバー:わーすたは初期から楽曲がいいんですよ。
宗像:わーすたはライブで写真と動画の撮影を許可しているから、気になった時にすぐ観られます。坂本さんの卒業ライブの動画もあって、そこにすぐアクセスできるのは強いですね。
ガリバー:ネットには膨大な数の動画がありますからね。わーすたはグループ初期から撮影を許可していたのは、結果的に今の時代にあっていてすごいなと思いますね。
岡島:プロデューサーは結成当初からは変わってきていて、今は作編曲家でもある岸田勇気さんが音楽プロデューサーを担当しています。
宗像:<iDOL Street>の創設者である樋口さんも離れ、わーすたの音楽プロデュースのほとんどを手掛けわーすたのアイデンティティを形成した鈴木まなか氏や初期スタッフが離れた中でも、楽曲のクオリティが担保されているのはすごいことです。