不動のエビ中、AKB48の返り咲き、TikTokブレイクの超とき宣……論客4者が振り返る、2021年のアイドルシーン

『アイドル楽曲大賞』(メジャー編)

根本凪はアイドル楽曲大賞の申し子

東京女子流 - ストロベリーフロート (Official Music Video)

ーー8位は東京女子流「ストロベリーフロート」が入りました。

宗像:フィロソフィーのダンスと同じなんですけど、「ストロベリーフロート」はとにかくファンクを歌ってる女子流が観たいという大衆の欲望に合致した曲なわけですよね。「これだー!」と勝訴みたいな感じだったんですよ。

岡島:女子流の結成は2010年で、アイドル楽曲大賞のスタートと一緒なんですよね。

宗像:アイドル楽曲大賞の歩みは、女子流の歩みなんですよ。

ピロスエ:2010年1月1日に結成された女子流はまさにアイドル戦国時代の申し子であると同時にアイドル楽曲大賞の申し子でもあると!

ーー9位はPerfume「ポリゴンウェイヴ」で、トップ10には久しぶりのランクインです。

宗像:フィロソフィーのダンスはソウル、東京女子流はファンク、Perfumeはディスコですよね。アイドル楽曲大賞のトップ10に入ってきたのは久しぶりで、ディスコを歌う「ポリゴンウェイヴ」を大衆の欲望が押し上げたんだと解釈しました。

[Official Music Video] Perfume 「ポリゴンウェイヴ」

ーー「ポリゴンウェイヴ」は初期のPerfumeを彷彿とさせる楽曲であると。

宗像:そうなんですよ。「チョコレイトディスコ」なんですよ。投票者のコメントにも「中田ヤスタカの迷いが飛んだ」みたいな表現があったりして、ストレートなディスコも珍しかったんでしょうね。

ピロスエ:タイトル的にもヴェイパーウェイヴへの返答なんじゃないの?

宗像:中田ヤスタカがヴェイパーウェイヴの回答としてディスコをぶつけてきたと。非常にキャッチーで時代性に乗っ取っているのも、9位に入った理由でしょうね。

岡島:会場でも「おー! 来るんだ!」みたいな反応がありました。みんな好きなんだろうけど、上位には来ないとなんとなく思ってたんじゃないでしょうかね。

ねもぺろ from でんぱ組.inc「ファーストキッスは竜人くん♡ feat. 清 竜人」Music Video
【字幕】でんぱ組.inc「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」Music Video/Dempagumi.inc " Princess Dempa Power ! Shine On ! " MV
【MV】虹のコンキスタドール「世界の中心で虹を叫んだサマー」(虹コン)

ーー最後は、10位のねもぺろ from でんぱ組.inc「ファーストキッスは竜人くん♡ feat. 清竜人」ですけど、関連として17位のでんぱ組.inc「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」、20位の虹のコンキスタドール「世界の中心で虹を叫んだサマー」についても聞かせてください。

宗像:今回、ねもぺろの曲を竜人さんに頼むに当たり、単純に曲を書くだけではない、コラボレーションができればという案があったらしくて、それで竜人さんがMVに出たりしているんです。楽曲は清竜人25を彷彿とさせる、「ソウルミュージック×アイドル×清竜人とイチャイチャ」という夢の組み合わせで、アイドル楽曲大賞でベスト10入りするのはねもぺろとしては初めてですね。

 「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」は、ヒャダインこと前山田健一さんの作詞作曲で、えいたそ(成瀬瑛美)の卒業ライブにサプライズでお披露目された、新メンバーを入れての10人体制楽曲です。曲の前半ではでんぱ組.incに入れて夢みたいな世界観なんだけど、後半になると先輩メンバーから〈夢が叶った? はい!おめでと! ここからが本番なんだわ〉と言われたり、王子様の存在を否定するといった命題もこの曲にはあるんですよ。ディズニー映画における王子様を求めていた女性像の変化のような、最近のポリコレのトレンドを反映していたり、そういった時代性を押さえた楽曲ですよね。

 ベスト20に参加する楽曲が3曲もランクインする根本凪さんもアイドル楽曲大賞の申し子であるんですよ。「世界の中心で虹を叫んだサマー」は、非常にファンキーで金のかかった夏曲を作ってるぞという気概が感じられる、虹コンにとっての会心の1曲だと思います。

体感としてメジャーにいるアイドルは減った感じがする

ーー2020年はオンラインで開催された『TOKYO IDOL FESTIVAL』が2021年は有観客で行われました。

宗像:『TIF』は3日目に行ったんですけど、こんな制限ばっかりでどうなのかなと思いながらも、ああいったフェスをやらないとどうにもならないので、やれてよかったです。

ガリバー:2021年のライブシーンは、乃木坂46のようなドームクラスの興行が打てるグループでも上限5000人とかアリーナレベルでやるしかない状況が続いていました。ある種、その象徴となったのが『TIF』の3日目のHOT STAGEだった。(メインの)HOT STAGEなのに、Zepp DiverCity(TOKYO)に椅子を並べた、おそらくキャパ1000人ちょっとだったんですよね。そこに日向坂46、=LOVE、AKB48、乃木坂46といったグループが続いた。要は観客を入れたくても入れられない状況が生んだ異様に豪華なタイムテーブルであり、あのメンツをZepp規模でしか観られなかったのはこのコロナ禍にフェスをやる上での限界を見たなと。

岡島:ライブハウス協会が取り決めた「新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」において、条件を満たせば会場の50%以上の収容人数で公演を行うことは既に認められています。このルールは感染対策の専門家から知見を得た上で作成されているものです。とはいえ、Zeppのような大箱になればなるほど当然小さいライブハウスと比べて、客数・人流は格段に増えるので、感染対策においても慎重にならざるを得ない。この傾向は2022年も続くだろうし、まだ先が見えてこないですね。

ーーホットな話題ですとBiSHの解散発表がありましたが、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』の著者でもある宗像さんはBiSHの解散をどう捉えていますか?

宗像:渡辺淳之介はタイミングが来たらBiSHを解散させるとは思っていたし、かつ2023年に解散しますって言って、みんなズッコケたと思うんですよ。2022年はやる気なのかと。『解散パーチー』も始まって、1年間で活動しまくってから解散するということなんで。2022年は興行として楽しむのが正しいんじゃないかとポジティブに受け止めています。第1期BiSの解散に近いんですよね。1年後にまたBiSHを始めるって言って、違うグループができるかもしれないですし。

ーーそれでは、最後に今年も2022年のメジャーアイドルに期待することを聞かせてください。

岡島:僕は12位のDIALOGUE+が好きで、来年はもっと順位が上がってくるんじゃないかと思っています。新人女性声優を集めたグループで、音楽プロデュースはUNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんが担当していて、とにかく楽曲がいいんですよね。それに、パフォーマンスが声優グループというより、従来のアイドルグループっぽい。フォーメーションや振り付けもしっかりしていて、稽古をちゃんとしていないとできないだろうなと思うくらいにクオリティが高い。ライブ、ダンス映像を一目観ればその良さは分かってもらえると思います。アイドルファンに刺さる要素を数多く持ってると思うので、オススメです。

ガリバー:2022年は、=LOVE、≠MEに続く指原プロデュースによる第3のグループの結成もありますし、乃木坂46は5期生の発表も控えていたりと、前向きな動きも見えています。乃木坂46が5月に開催する日産スタジアム公演は、女性アイドルとしても数年ぶりの大きなライブになります。2020年の「I see…」が坂道以外のファンにも届いたように、2022年もそのような波及力がある楽曲の誕生に期待したいです。ほかには、新しい学校のリーダーズが今年また海外で飛躍していくんだろうなと思います。K-POPとは違う流れで、日本独自の文脈で売れていくグループができているので、そこは前向きに捉えたいなと思っています。

ピロスエ:新しい学校のリーダーズ、いいよね! 僕も最近MVよく観てます。

宗像:今年のメジャーのノミネートリストは、130くらいでそんなに減ってはいないんですけど、体感としてメジャーにいるアイドルは減った感じがするんですよね。例えば、メジャーにいるだろうと思えるレベルのアイドルが、全くメジャーデビューできていない。レコード会社は頼むからアイドルをやってくれよ、と。数十年間続いてきたカルチャーが、2022年にどうなるのかというところです。

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