大規模な渋谷ジャックで気になる人続出 TikTokで話題のシンガー JASPĘRが若者と海外リスナーの心を掴む理由

JASPĘRが若者と海外リスナーの心を掴む理由

 ここ数日、渋谷のセンター街で違和感を感じたのは筆者だけではないはずだ。キャッチーで中毒性のある1曲がひたすらループで流れていたのだ。違和感はそれだけではない。同時期、渋谷に住んでいる編集部スタッフの自宅ポストに「センター街BGMジャック中」と記載されたアーティストのチラシが届いていた。アーティストのチラシが自宅に投函されることが、過去にあっただろうか。おそらく前代未聞だ。飲食店や企業のチラシに混ざると、その異質さは際立ちインパクトも強い。さらに街中に貼られたポスターと毎日行われていた街頭チラシ配りに加え、休日には女子高生たちによる限定グッズをサンプリングするイベントも行われていた。まだ無名のアーティストがここまで街中をジャックしている現象に対して、日が経つにつれてその違和感は大きくなっていった。今回は音楽アーティストとしては珍しいプロモーションを行っていたこのアーティストが何者か、という点にフォーカスしていきたい。

 このアーティストの正体は、TikTokで人気を集めている新人シンガーJASPĘR(読み:ジャスパー)。TikTokをメインに活動するJASPĘRは、現時点でフォロワー9万人、そして動画総再生回数は500万回を超えている。活動歴としてはたった5カ月間。カバー歌唱動画をTikTokに投稿したことがきっかけで、その独特の世界観が評価され、急速に拡散されていった。

@jas_per.jp ディズニーの曲をかっこよくしてみた! #JASPĘR #ジャスパー #歌ってみた #パートオブユアワールド #リトルマーメイド #アリエル #ディズニー #ディズニーランド #ディズニーシー #冬の歌うま #おすすめ #fyp ♬ Part of Your World Cover by JASPĘR - JASPĘR

 もちろん今回の渋谷ジャックをきっかけに彼の存在を知った人も多いだろう。しかしTikTok内ではティーン層を中心にすでに人気を集めているアーティストである。さらにZepp Tokyoにて初ライブを行っているという経歴にも驚かされた。この活動のスピード感と短期的な人気の上昇は凄まじい。

 特に最新曲「Hello」が起こしている現象は、今後の彼の活動に対して大きな起爆剤となっているように感じる。4thデジタルシングルとして昨年12月22日にリリースされた本楽曲は、11月末にサビ部分のみTikTokで先行公開されると、その後すぐインフルエンサーによる振付動画が話題となり、新人にも関わらず一気にトレンド入りを果たした。「人気急上昇ランキング」「2022バズり予測」などTikTok内プレイリストにも次々と選出され、サビ先行投稿から2カ月経ってもなお、注目度は上昇し続けている。またこのバズが国内のみならず海外にも拡大しているのは、彼のSNSのコメント欄を見れば一目瞭然だろう。

@jas_per.jp 2021年12月22日(水) Release JASPĘR 4th Single 『Hello』のサビがTikTok限定で先行配信開始!#JASPĘR #ジャスパー #Hello #ハロー ♬ Hello - JASPĘR

 普段SNSを通し世界に向けて活動しているにも関わらず、なぜ一見非効率とも思える1つの街に限定したプロモーションを仕掛けたのか。その理由が気になり、担当者に話を聞いたところ、2つの答えが返ってきた。1つは、あくまでSNSでの発信やマーケティングに一番重きを置きつつも、さらなるファンのグリップのためダイレクトマーケティングを並行して実施しているとのこと。2つ目として、「Hello」の楽曲コンセプトである「この世界には多種多様な人種がいて、周りの人達が自分とは違うと孤独を感じていたとしても、勇気を出して『Hello』と挨拶してみればきっと明るい未来が開ける」というメッセージを、渋谷を舞台に多種多様なモンスターが行き交う様子を描いたジャケットで表現していたことから、今回ダイレクトマーケティングの場を渋谷に選んだとのことだった。具体的にはTikTok内でバズが起こっているタイミングに合わせ、2週間の渋谷センター街BGM全時間ジャック、加えて渋谷エリアへのポスター掲示やチラシ5万部配布などを実施していた。実際この期間中、TikTokのフォロワーや再生数は急激に伸びていたのだ。

JASPĘR「Hello」
JASPĘR「Hello」

 しかしこのような一過性の話題だけで、JASPĘRが人気を集めているわけではない。歌声や楽曲に魅力があるからこそ支持されているのだ。彼の温かみのある美しい歌声にあえて無機質さを加えるオートチューンをかけたチルボイスのボーカルは、一度聴いたら耳から離れない。これはアーティストとしての個性であり魅力だ。音楽性はヒップホップやR&B、エレクトロなどを取り入れつつもJ-POPへと昇華させている。そのため日本人の耳に慣れ親しんだキャッチーさを持ちつつも、新しさや刺激も感じる。逆に海外で支持される理由は、海外のトレンドを取り入れつつもJ-POPという日本の音楽が軸にあることが新鮮に捉えられているのだろう。このような楽曲のクオリティの高さも、唯一無二の個性を獲得している理由の一つかもしれない。過去曲もぜひ聴いてみてほしい。

JASPĘR『Lune』Official Music Video
JASPĘR『Heal』Official Music Video
JASPĘR『Silent feat.うぴ子』Official Music Video

 「Hello」も、一度聴いたら耳から離れない中毒性を理由に現在バズを起こしている。メロウで心地よくもあるがラップパートは聴いていて気持ちが高揚する。最後のサビで編曲はより壮大になり、盛り上がりを加速させる。このキャッチーさとクオリティの高さから、TikTokでのUGC投稿が増えたことも納得できる。

 JASPĘRというアーティスト名は「精神的な安定をもたらす」という言い伝えがある、ジャスパーという名前の碧玉から名付けられたとのこと。以前行われたインタビューでは「苦しんでいた時期があって。そのときに、音楽で勇気や生きる希望を与えてもらったので。今度は僕が、その立場になって何かをしてあげられたら」とも語っている(※1)。彼は音楽によって聴いた者を救おうとしているのかもしれない。そんな優しい想いが曲や歌詞や歌声から滲み出ていることも、彼の魅力だ。具体的な人物像が明かされていないとしても音楽から想いを感じることができるからこそ、JASPĘRの音楽は国境を超えた沢山の人の胸に響いているのだと感じる。

 彼の音楽に救われる人がこれからも出てくるはずだ。この勢いはまだまだ止まらない。

(※1)https://skream.jp/interview/2021/10/jasper.php

■JASPĘR(読み:ジャスパー)
2021年8月からTikTokでカバー歌唱動画投稿開始。活動期間わずか5カ月で現在フォロワー9万人超え&動画総再生回数500万回突破。
唯一無二の世界観や斬新な楽曲アレンジ、甘くて優しい歌声、そしてマスクで隠された美しいビジュアルなどから国内のみならず海外にも急速にファンを拡大。
今後大注目の次世代アーティストを一足早くCHECK!

■関連情報
JASPĘR 公式サイト
JASPĘR TikTok公式アカウント
「Hello」TikTok公式音源
「Hello」配信ストアリンク

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