WOWOWオリジナルアニメ『永遠の831』 カノエラナとangelaが語る、作品の魅力と楽曲に込めた思い

カノエラナ&angela『永遠の831』

 “未曾有の大災厄”によって混迷を極める世界で、時間を止めることができる能力を持った新聞奨学生・浅野スズシロウと女子高生・橋本なずなが出会い、物語が動き始める……。まぶしいほどの青さと胸がチクチクするような痛みを纏いながら、その根底には現代社会への痛烈なメッセージが流れる。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズが全米CATV視聴率1位を記録するなど、世界からも注目を集めている神山健治監督の最新作WOWOWオリジナルアニメ『永遠の831』が、1月30日にWOWOWで放送・配信。オープニングテーマ「キンギョバチ」を担当するカノエラナと、主題歌「ひとひらの未来」を担当するangelaのatsukoとKATSUに、『永遠の831』の魅力と楽曲に込めた思いを聞いた。(榑林史章)

情景的なものをピアノで表現し、怒りの感情を荒々しいギターと歌い方で表現した

ーーそれぞれテーマソングと主題歌を作るにあたって『永遠の831』をご覧になったと思いますが、どんな印象でしたか?

カノエラナ:脚本と登場人物の細かい設定資料集を読ませていただいたのですが、私自身は脚本というものを手にしたこと自体が初めてだったので、こんなに細かくセリフやシーンの情景が全部書かれていることに、まずは驚きました。実際に読んでみると、時代背景やテーマになっているものが現代社会とすごく近いものに感じて、「自分自身もこういうことを思っているな」と感じることがたくさん散りばめられていて。主人公の一人である浅野スズシロウくんに特に共感できて、それをすんなりと楽曲に落とし込むことができたなと思います。それにトゲトゲしい人ばかりではなく、ちゃんと優しい人も出てくるところが良くて、どれだけ悩んでいても、誰か一人でも支えてくれる人がいれば世界は変わるんだということを感じました。

atsuko:私は、やっぱり年齢的に大人になっている分、大人の目線で見てしまうところがありましたね。この日本という社会があまり発展しないまま30年を過ごし、世界から取り残されたような感覚が表現された作品で、これを大学生のスズシロウの目線で書いた神山監督は、すごく現代の日本社会に対して危機感を持っていらっしゃるんだなと感じました。私がスズシロウと同じ学生の頃はそもそも政治に興味がなかったし、ただ社会に対する不満だけを抱えて周りが悪いみたいな感覚があったと思います。それがいざ自分が大人になって思うのは、大人の責任として日本はこのままでいいのか? ということで……。すごく大げさなことを言っているように聞こえるかもしれないですけど(笑)。要するに私は、こういう日本にしてしまった大人の目線で見てしまったんです。現実の世界で今の大学生は、コロナの影響で学校に行けなかったり行事が行えなかったり、こういう経験をして抱えたものはきっと大人になっても引きずると思うし。そういうところは、現実の今の社会とすごくリンクしているなと思いました。

ーー世代によって共感する部分が違うのは面白いですね。

atsuko:そうですね。私は大人として、責任を感じてしまったというか。

ーーKATSUさんは、どんな印象でしたか?

KATSU:僕は最初に神山健治監督の作品ということを聞いていたので、神山監督を象徴するような近未来SF的な世界観に寄っていくのかなという先入観から入ってしまったんですけど、実際に脚本を読ませていただいて、「神山監督というクリエーターが発信したいものはこういう方向なんだ!」と驚きました。パブリックイメージから想像されるものと良い意味で違っていて、神山さんが今発信したいメッセージがぎっしり詰まっているところが、作品としての大きな魅力だと思います。今日本で起きていることと類似した世界線の物語で、ちゃんとエンターテインメントとしても楽しむことができました。

ーーまずカノエラナさんが担当されたオープニングテーマ「キンギョバチ」は、最後に問いかけが投げかけられていたり、物語に出てくるワードと掛けた言葉が出てくるなど、物語を俯瞰した雰囲気の歌詞だと思いました。楽曲はどんなイメージで作られたのですか?

カノエラナ

カノエラナ:「できるだけ等身大で」と作品側からアドバイスをいただいたので、自分が感じたままを書けばいいんだと思って、歌詞は言葉を飾ったりきれいにまとめることをしないように意識しました。曲としては、スズシロウくんの怒りの気持ちをベースに作ったので、攻撃的というか訴えかける感が強いものにしたいと思いました。スズシロウくんが持っている時間を止める能力が物語のキーとなっているので、時間が止まったり、止まったものが急に動き出すといったメリハリも音でも表現して。「混沌としたものを全部曲に詰め込んじゃえ!」みたいな気持ちで作りました。

ーータイトル「キンギョバチ」は、どこか涼しげで夏っぽい印象もあります。どうしてこういうタイトルを付けたのですか?

カノエラナ:タイトルはほかにも候補があったんですけど、最終的に一番分かりやすいのが「キンギョバチ」かなと思って付けました。作品として夏がテーマでもあるので、夏からどんどん連想を広げていったんですけど、その中で「夏と言えばお祭り」と出てきて、夏祭りで金魚すくいをやったことを思い出したんです。でも、金魚すくいは楽しかったけれど、すくった後のことや金魚のことは覚えていなくて。そこから、取り残されているとか、忘れられている存在という意味も込めて視点を金魚に置いて、小さな鉢の中で見えない透明な壁があって逃げられなくて、金魚がどうなったか誰も覚えていないところで、どう戦っていけばいいんだろう、と。そういう意味も含めて、「キンギョバチ」というタイトルにしました。

ーーピアノが印象的に使われていますが、カノエラナさんは、曲を作る時はピアノを使うのですか?

カノエラナ:私は基本的にギターで作曲するのですが、この曲に関しては頭の中でピアノがずっと流れていたので、「ピアノを入れてください」とお願いをして編曲していただいたんです。私は曲と歌詞が同時に出てくるタイプで、その時に編曲のイメージも一緒に生まれているんです。止まったり進んだりを繰り返していく時の流れや、出てくる風景がとてもきれいだと思ったので、そういう情景的なものをピアノで表現して、スズシロウくんの怒りの感情を荒々しいギターと歌い方で表現しました。

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