ヒャダイン、岡崎体育が伝えていくDTMの面白さ 2021年の音楽シーンについても聞く

ヒャダイン&岡崎体育インタビュー

リスナーが「私が見つけた」と思えるような人が売れる傾向にある

ヒャダイン、岡崎体育(写真=林直幸)

ーーせっかくの機会なので、2021年の音楽シーンについても聞かせてください。全体の傾向としてはどのような年だったと感じていますか?

岡崎体育:「新語・流行語大賞」や『紅白』の出場歌手の並びを見てもTikTokの影響力を感じますよね。これまでの「踊ってみた」「歌ってみた」のような二次創作的な広がりだけではなく、BGMとして楽曲が使われるようになっていて。TikTokの動画のBGMとして使われるような曲をミュージシャンが作るようになっているような印象があります。クリエイティブ面だけではなくマーケティング面にも長けたミュージシャンがどんどん出てきていますよね。それは必ずしも間違いではないし、世間のニーズや世相を読む力があるということでもある。でもやっぱり昔に比べると音楽シーン全体がクールになっているというか、「Yeah! めっちゃホリディ」みたいな歌がたくさんあった2000年代頭の雰囲気とは時代的にも変わってきていると思うし、世の中が音楽を表し、音楽が世の中を表しているような感じもすごくして。そういうところも面白いですが。

ヒャダイン:岡くんの話に近い部分もありますが、ここ数年の特徴で言えば、本人すらも想像していなかったヒットアーティストが一定数出ていることですかね。「魔法の絨毯」の川崎鷹也さんもそうですし、2021年で言えば「なにやってもうまくいかない」のmeiyoさんとか。何をやってもうまくいかないことについては岡崎体育が随分前から「なにをやってもあかんわ」で言ってたんですけど(笑)。

岡崎体育:(笑)。

ヒャダイン:というのはさておき、meiyoさんの曲の良さもありきで「なにやってもうまくいかない」はTikTokでバズり、いきなりドカンといったり。Adoさんもそうなんですけど、そうやって1曲ドカンとバズった人たちは「まさかこんなことになるとは」と、定型文のように言うんですよね。だから狙わないと売れないけど、狙いすぎても売れないのかなとも思います。さらにゴリ押しでプッシュされたアーティストではなく、リスナーが「私が見つけた」と思えるような人のほうが売れるのかなと。

 あと、これはカルチャー全般に言えることですが、めちゃめちゃセグメント化されているなというのも感じましたね。例えば人気ボカロPとして神曲を作っていてアイドルにも楽曲提供をしているけど、アイドルファンの中ではそのPの名前は全く知られていないとか、TikTokの中ではめちゃめちゃ有名な曲だけど一般的な洋楽ファンは全く知らないとか。なので「全く知らない人がたくさんいるけど流行したもの」がすごく増えたなと思いました。ちょっと前に流行に敏感な年上の方とお話した時、その人が「ネット流行語大賞」にもなった『ウマ娘』を知らなくて。でもそういうことだなとも思う。ゲームを知らない人は『APEX』を知らないけど、ゲームを知ってる人で『APEX』を知らない人なんていないわけで。そういう風に音楽でも局所化が進んでいるんじゃないかなと。だから国民誰しも、幼児から老人までが知っているヒット曲が生まれにくくなっているし、2021年でいえばAdoさんの「うっせぇわ」(発表は2020年)くらいしかないんじゃないかなと思うんですけどね。

岡崎体育:たしかに昔に比べて細かく区画整理がされている感じはします。

ヒャダイン:マス目のようにね。

ーーそしてその分かれ方も音楽性のジャンルでなされているわけではなくて。

ヒャダイン:そうなんです。クラスタごとの区分っていう感じですね。

ーーそんななか、2021年に出会った音楽で良かったもの、同じクリエイターとして悔しかった音楽がもしあれば教えていただきたいのですが。

ヒャダイン:本当にめちゃめちゃベタなこと言っていいですか? Official髭男dismのアルバム(『Editorial』)がすごく良かった。ヒゲダンってやっぱりすごいなと思ったし、彼らの曲ばっかり聴いてました。

岡崎体育:ちょっと意外な感じもしますね。どこが良かったんですか?

ヒャダイン:「アポトーシス」っていう曲が大好きで。聴きやすい歌声と、難解で音楽偏差値高々なコード進行と、バンドという形にとらわれないけどバンドでやる感じと重厚な歌詞と……すごいなぁと思いましたね。ヒゲダン以外だと昔の曲ばっかりで。昨年はサブスクで菊池桃子さんの曲が解禁になったり。昔の曲はサブスクのおかげでふれる機会がかなり増えました。

岡崎体育:僕もそうです。大瀧詠一さん、筒美京平さんの曲はよく聴きましたね。これまで昔の曲はあまり掘ったことがなかったし、遡ってこなかった人生だったんですけど、自分がCDを持っていなくても聴ける時代になったので、音楽的なルーツや知り合いのミュージシャンが教えてくれた昔のアーティストの曲を聴いたりしました。そういう昔の名曲からも今に近い感覚をすごく感じたし、大瀧詠一さんや筒美京平さんからの流れを感じるような曲、歌謡曲っぽいものが最近また流行していますけど、もうこすられている表現ではありますが、やっぱり時代は回っているなということを感じた1年だったかもしれないです。

ヒャダイン:たしかに海外でもシンセウェイヴや80'sサウンドが流行っていたしね。最近はそういう時代の要素をまんま取り入れたりするので、より時代が回っているなと感じるのかもしれない。

ーー幅広い視点でのお話ありがとうございました。最後に今後の『ワンルーム☆ミュージック』への意気込みをお願いします。

岡崎体育:『ワンルーム☆ミュージック』というタイトルの通り、一つの部屋から飛び出していく音楽をテーマにやっているんですけれども、知識がなくてもあっても、音楽が作れるということを伝えられればいいなと思ってますし、本当に興味ない人、興味がちょっとあるぞっていう人が興味を持ってくれるのもすごくうれしいです。この番組での僕の個人的な目標は、全然興味がなかった人がたまたまチャンネルを回して「面白そうやな、これ」と番組を見始めて、DTMソフト購入までに至ること。そういう人が日本全国に1人でもいたら僕は勝ちだと思っていて。そのためだけにやっていると言っても過言ではないので、ぜひ気軽に見てほしいです。Season 2のみならず、3、4、5、6、7とやっていきたいですね。

ヒャダイン:ですね。そもそもDTMは自分には縁がないものだと思っている方がほとんどだと思うんですよ。でも『ワンルーム☆ミュージック』は「音楽ってすごいな。こうやって一部の選ばれた人が作ってるんだ」と思っている方々にも「そんなことないよ」と言いたい番組なので。時々我々のミュージシャンらしい部分が出てしまうこともあると思いますが、そういったスキルだけではなく、DTMを楽しんでいる姿や親しみやすさの部分にもぜひ注目していただきたいと思います。

ヒャダイン、岡崎体育(写真=林直幸)

■番組情報
『ヒャダ×体育のワンルーム☆ミュージック』Season2
MC:ヒャダイン、岡崎体育 ナレーション:早見沙織
Session.13(Season2初回)放送予定:1月5日(水)よる10:00~10:25(Eテレ)
スタジオゲスト:有岡大貴、知念侑李(Hey! Say! JUMP)
VTR出演:花譜

『ヒャダ×体育のワンルーム☆ミュージック 誰でも音楽クリエイターSP』
放送予定:1月2日(日)よる10:00~10:50(Eテレ)
スタジオゲスト:粗品(霜降り明星)
VTR出演:あぶらこぶ、小林優仁ほか

番組HP:https://nhk.jp/oneroommusic

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