22/7(ナナブンノニジュウニ)が持つライブ表現の可能性 初のキャラクター単独配信公演を観て
デジタル声優アイドルグループ・22/7(ナナブンノニジュウニ)が12月26日、キャラクター単独配信ライブ『22/7 5th BIRTHDAY LIVE 2021 ~Colors of Flowers~』を開催した。バーチャルアイドルとしてのキャラクターと、実在のリアルメンバーとの両輪で活動する22/7にとって、キャラクターのライブパフォーマンスの機会を増やしていくことは、グループの重要な課題である。今回、キャラクターとして初の単独配信ライブが実現、昼夜2公演が行なわれた。ここでは夜公演の模様についてレポートする。
夜公演の幕開けは、8thシングル『覚醒』に収録された白組「ヘッドフォンを外せ!」のハードなパフォーマンスからスタート。先立つ昼公演冒頭ではやわらかなウィンターソングの紅組「今年 初めての雪」が冒頭を飾り、対照的な最新のユニット楽曲をキャラクターとして披露するオープニングとなった。リアルメンバーのライブでは実現しにくい、ステージ上に接近したカメラアングルなど、バーチャルアイドルのパフォーマンスゆえの新鮮な映像もライブ序盤から随所に見ることができた。
キャラクターライブ特有のリアリティは、冒頭楽曲に続いて行なわれた22/7の冠バラエティ番組『22/7 計算中』とのコラボコーナーでもうかがえる。
直近の『22/7 計算中』放送回で企画された「クリスマス告白クイーン決定戦」の視聴者投票結果を受けてのこのブロックは、一見するとメインのライブパートとは趣の異なる、テレビ番組との共同企画だ。しかし、もとより同番組はキャラクターとしての22/7を現実世界と繋ぐ役割を果たしてきたコンテンツでもある。22/7のキャラクターサイドがこれまで育んできたパーソナリティを、ライブというパッケージの中で存分に見せる、またとない機会となった。番組MCを務める三四郎の2人は、2021年初めに放送されていた『22/7 検算中』出演時同様に、モーションキャプチャーを介したバーチャルキャラクターとして登場。
ライブパートは、デビューシングル表題曲の「僕は存在していなかった」から再開。グループの原点であり、己の存在のよりどころを見つけるまでをつづったこの作品が今日、キャラクターによってパフォーマンスされることで、リアル/バーチャル双方の歩みがあらためて想起される。さらに「シャンプーの匂いがした」「理解者」「何もしてあげられない」と、22/7の歴史をたどるように、シングル表題曲が時系列順に披露されていく。
このように、キャラクターの水準のみでひとつのライブを構成することで、これまでもリアルメンバーによって幾度となく積み重ねられてきた表現にも、新たな側面から光が当たる。キャラクターゆえに、ハンドマイクを持たず両手をフリーにした状態でのダンスが行なわれることによる自由度など、基本的な形式の面にもそれは表れる。
しかし、このライブの醍醐味がいっそう強く窺われるのは、キャラクターたちのパフォーマンスや細かな立ち振る舞いがリアルタイムで生成され、それぞれのパーソナリティが宿っていく瞬間である。その背後に各々のキャラクターを担当するメンバーの演技も感じさせつつ、しかし確実にリアルメンバーから独立した人物たちの息遣いが生まれていく。それは、楽曲パフォーマンス時はもちろんのこと、曲間の暗転時に闇の中でうっすらと見えるキャラクターたちの挙動などにもあらわれる。そうしたひとときにもまた、キャラクターライブという企画のポテンシャルが色濃く見える。
MCを挟んで披露された5thシングル表題曲「ムズイ」は、TVアニメ『22/7』のオープニングテーマであり、グループのキャラクターサイドを象徴する作品である。曲中にみせる台詞の強さは22/7の大きな特徴だが、滝川みうの声は以前よりもいくぶん豊かなニュアンスを感じさせ、キャラクターもまた当然のことながら時を重ねて表現を進化させていることがわかる。そうしたキャラクターとして発される言葉の進化は、この日ならではの演出として、柊つぼみセンターで始まる「風は吹いてるか?」でもさらに顕著に見出だされた。この曲ではまた、ステージ後方からメンバーの姿を動的に捉えたカットも印象深く、キャラクターライブだからこその視覚表現も効果的に用いられていた。