LiSAが繰り広げた至上のエンターテインメント シンガーとしての進化も感じた武道館公演を観て

LiSA、武道館公演レポ

 ……と、盛りだくさんなライブだったが、全ての源はLiSAの歌であり、シンガーとしての彼女の進化を感じられる場面が多かったことも特筆しておきたい。全体的に、ファルセットの発声が豊かになった印象。いくつかの曲をピックアップすると、一人ロックオペラといった感じで五線譜上を行ったり来たりする「GL」や、跳躍のしかたにAyase節を感じる「往け」を見事に歌ってみせる姿に感嘆させられ、「RUNAWAY」終盤の“綺麗なロングトーン→オクターブ上でのシャウト→巻き舌からのずり上げ”という流れには思わず声を上げたくなった。「紅蓮華」や「炎」は地上波音楽番組でも何度も歌われてきた曲だが、今ここで歌う「紅蓮華」、「炎」として向き合っていることが感じられるような心のこもった歌唱。2曲の間に披露された「明け星」ではハードロックサウンドに対して歌も堂々たる佇まいを見せ、その底知れなさ、まだまだ進化していくことを予感させるボーカルに震えた。また、アコースティックアレンジで届けた「シルシ」はこの日のハイライトだったと言って差し支えないだろう。倍音が鳴りまくりの本編だけではなく、曲が始まる前、「不安定な時代で、不安になったり、臆病になったり。特にこの2~3年はいろいろな想いを重ねながら、それでもいつかこうしてみんなとまた会える日が来ると信じてやってきました。そして今日迎えたファイナルです」というMC、そして「今の私がいるのは、目の前の、この瞳に映るあなたたちのおかげです」という言葉からそのままサビを無伴奏で歌ったシーンでも会場中が息を呑んだ。

 培った技術を糧に、自由に、自身の心を音楽として表現できているのが今のLiSAだ。歌もMCも、10年間で今が一番素直なのではないだろうか。LiSAの抱く想いがその歌を通じて、私たちの体内に流れ込んでくる。だからこそライブ終盤、LiSAの鏡となり心模様を表現するダンサーと対峙するように歌った「ハウル」による本編フィナーレ、そして涙ながらの「Letters to ME」には深く感動させられた。「10年、最高の日ばっかりじゃなかったけど……“今日もいい日だっ。”って言える完璧な日ばっかりじゃなかったけど……」。言葉を詰まらせるLiSAに観客が“大丈夫だよ”の拍手を送る。

「みんなが会いに来てくれた1回1回を、大切に作った1曲1曲を、毎日過ごした1日1日を、最高じゃなかったなんて思いたくなくて“今日もいい日だっ。”って唱え続けてきました。上手く言えないけど……今日は本当に本当に、最っ高に、“今日もいい日だ”って言えます。どうもありがとう! みんなが信じてくれた今日のように、私も、みんなと過ごした今日を信じます。だから思いっきり走っていいよ。そして10年後もまた一緒に遊ぼうね!」

 そんな約束とともに「Another Great Day!!」でライブは終了した。たとえ今、夜の真っ只中にいたとしても、想像していた未来とは違う道を進んでいたとしても、走り続ければ、こんなに素晴らしい日に辿り着くことができる。全身全霊で希望を掴みに行く彼女の姿に、今日もまた、世界の愛し方を教えてもらったのだった。なお、アンコールで流れた“10年前の私へ”という映像内でLiSAはこう話していた。「探し続けて、必死に走り続けた先には“あ、何だかすごいところまで来たなあ”と思える10年後が待ってるから。たくさん悩んでください。たくさん悩んで、たくさん泣いて、それでも絶対に何かあるって信じ続けてください」と。

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