『鬼滅の刃』が賑わした音楽シーンの隆盛 LiSA、梶浦由記らによる主題歌・劇伴がもたらした影響を解説

 2019年のTVアニメ化をきっかけに人気が爆発し、今や社会現象とも化した『鬼滅の刃』ブームは、日本国内に大きな影響をもたらした。昨年、公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は興行収入400億円を突破して日本歴代興行収入1位となり、コロナ禍にあって邦画界の救世主に。TVアニメ2期『「鬼滅の刃」遊郭編』(フジテレビ系)の放映を控え、この9月には5日間にわたりTVアニメ1期も一挙放送されたばかりだ。9月25日には『無限列車編』も全編ノーカットでテレビ初放送される。

 TVアニメに映画と、一連の作品が呼んだうねりは音楽面にも波及。いや、むしろ音楽こそが『鬼滅の刃』をここまでのヒットコンテンツに育てた一助とも言えるだろう。ついては『鬼滅の刃』が賑わした音楽シーンにおけるトピックスを、今一度振り返ってみたい。

 まず『鬼滅の刃』が日本の音楽シーンにもたらした最大のインパクトといえば、LiSAが担当した主題歌群だろう。LiSAはTVアニメ1期のオープニングテーマ「紅蓮華」と『無限列車編』の主題歌「炎」にて、2019年、2020年と2年続けて『NHK紅白歌合戦』に選出。『鬼滅の刃』のアニメーション映像を背に歌うという演出でも話題を呼んだ。加えて、2020年12月には「炎」で『日本レコード大賞』を受賞。ステージ上での涙の歌唱が、多くの視聴者の感動を誘ったのも記憶に新しい。

LiSA 『紅蓮華』 -MUSiC CLiP YouTube EDIT ver.-

 もちろんLiSA自身、2011年のソロデビュー以来数々のヒットを飛ばし、2014年には初の日本武道館ワンマン、2017年にはアリーナツアーを開催と、“ロックヒロイン”としてすでに名の知られた存在ではあった。しかし、LiSAのアーティストとしての真価を知らしめ、老若男女問わず一般層にまで認知度が及ぶきっかけになったのは「紅蓮華」と「炎」であることは間違いない。

 事実「紅蓮華」は2019年4月の配信直後から数々のチャートで首位を奪取し、配信デイリーチャートで38冠を達成。年をまたいでも『鬼滅の刃』人気の上昇に伴って記録は伸び続け、2020年5月にはストリーミング配信にて1億回再生を突破し、日本レコード協会の6月度ダウンロード配信認定にてミリオン認定もされた。しかし、「炎」の勢いはさらに凄い。2020年10月に配信開始すると、配信デイリーチャートで驚異の55冠を達成。チャートイン7週目でストリーミング累計1億回を突破して、当時の歴代最速記録を更新した。11月に入るとSpotifyのバイラルチャートでも首位を獲得し、7週にわたりベスト10内に。ダウンロード配信認定でも今年3月度で早々にミリオン認定され、公式YouTubeにおけるMVの再生回数もすでに2億回を超えている。

LiSA 『炎』 -MUSiC CLiP-

 チャート実績からも明らかな盛り上がりは、『鬼滅の刃』という作品世界と密接に紐づいた楽曲制作のおかげでもあるだろう。バトルアニメに相応しい疾走チューンに、愛する家族のために戦う主人公・竈門炭治郎の決意をストレートに乗せた「紅蓮華」。別れの哀しみを暗示しながら、時に弱音も吐く炭治郎だからこそ残酷な状況を振り切って前へ進もうとする姿が胸を打つ重厚なバラード「炎」。いずれも歌い手であるLiSA自身が作詞に参加し、『鬼滅の刃』という物語と登場人物の心情を十二分に咀嚼した末に歌い上げているからこそ、聴き手は強く心を揺さぶられ、ストーリーを深く知れば知るほど相乗効果で感極まってゆく。ある意味、作品に合わせて当て書きするという主題歌として最大のアドバンテージを知り尽くしたLiSAだからこその必然的ブレイクとも言えるのだ。

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