Survive Said The Prophet、ステージで再確認したバンドの存在意義 新体制で迎えた『something BOLD tour』ファイナル
音楽は生活に必要なものなのか、不要なものなのか。コロナ禍に多くのアーティストが直面した問いに対するSurvive Said The Prophetの答えがライブのなかにあった。
新体制となって初のツアー『something BOLD tour』。福岡、札幌、大阪、名古屋、横浜という5都市のZepp会場に仙台GIGS公演を加えた、全6都市6公演のツアーだが、本稿ではそのファイナルとなったKT Zepp Yokohama公演をレポート。中盤のMCでYosh(Vo)がこんなふうに語った。「つい最近まで音楽って価値がないんじゃないかって悩んでた自分がすっごいくだらないです。こんなに美しい人たちに囲まれて、こんな美しい拍手を聞けるということが奇跡なんだと思い知らされました」と。バンドの存在意義を改めて確認するような有意義なツアーを経て、この日のSurvive Said The Prophetが見せたのは、再び音楽の力を信じることで得た揺るぎないエネルギーが力強くフロアへと伝播していく、そんな熱いライブだった。
ステージの上にさらに高いステージが設置され、前面にはLEDスクリーンが搭載。そこにメンバーたちが登場すると、その最も高い位置にあるドラムセットにShow(Dr)がスタンバイ。心に溜め込んでいた衝動を一気に爆発させる「T R A N S l a t e d」を皮切りに、Yoshのネイティブな発音による英詞のボーカルと、Showのスクリームが激しく交錯する。Ivan(Gt)が奏でる粒立ったタッピングギターも美しい。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今のライブハウスは声を出すことのできないルールだが、「音楽っていうのは、音だけを楽しむんじゃないんだよ。体を使っていこうか」というYoshの呼びかけにフロアの観客は一斉にジャンプで応えた。ライブアンセム「Network System」ではドラムのキメで無数のピンスポットがShowを照らし、アップリフティングするダンスナンバー「HI | LO」ではYoshの紹介を受けてセンターに立ったTatsuya(Gt)の荒々しいギターソロが炸裂した。Survive Said The Prophetのライブはステージ上の4人とフロアにいる全員が主役だ。誰ひとり欠けてはならないピースとしてひとつの空間を作り上げていく。
お茶の間にも波及するスタイリッシュなポップミュージックと強靭なラウドロック。そのふたつが裏表のコインのように両立するSurvive Said The Prophetのロックサウンドは既成のジャンルの枠を超え、さらにディープな世界を描いていった。ミラーボールとレーザーの光が会場を耽美なダンス空間に変えた「Tierra」、近未来を思わせるスクリーン使いで楽曲に寄り添った「S P I N E」に続き、生命力に満ちたコーラスを背にYoshが圧巻のボーカルを聴かせたバラード曲「Follow」でも、開放的で柔らかなメロディを聴かせた「Conscious」でも、今回は楽曲の世界観を拡大するような計算し尽くされた演出が目を引いた。Survive Said The Prophetは、自分たちのライブに携わる制作、照明、音響といったクルーたちを「アーティスト」と呼ぶ。同じ表現者であるという尊敬と信頼の上で、これまでも数々の名シーンを生んできたが、特に今回は凝っていた。Yosh自身も「スタッフの人数を増やした」と言っていたが、観客に我慢を強いることも多いコロナ禍のライブハウスの状況を鑑み、それでも満足してもらえる方法を考え抜いた結果がこの形なのだろう。