2021.12.07 17:00

Survive Said The Prophet、ステージで再確認したバンドの存在意義　新体制で迎えた『something BOLD tour』ファイナル

文＝秦理絵、写真＝toya

　「素直な音を、アットホームな空間をKT Zepp Yokohamaでシェアできたら」というYoshの言葉からアコースティックコーナーへ。「この曲ができたとき、音楽にすごく重要な質問をされた気がして」と切り出して届けたのは「If You Really Want To」だった。「Do You?（あなたは行動しますか？）」という問いに、「I do」だけでなく、「We do」と答えたい。そんな想いを添えた歌には、行動こそが物事を変えてゆけるというメッセージを感じた。失恋をしたためライブでは封印していたと少し恥ずかしそうに明かした「Again」では、繊細に重なるアコギの伴奏に乗せて、ときに胸に手をあて、ときに両手でマイクをきつく握りしめながらYoshは歌を紡いだ。観客は椅子に腰を下ろしてじっと聴き入っていたが、「3 A.M.」の途中で力強いバンドサウンドが加わると、何も言われずとも一気に総立ちになった。ここからライブはクライマックスへと向かう。

　TatsuyaとIvanが和太鼓のようにドラムを打ち鳴らしたインタールードから突入した「Mukanjyo」では、英語と日本語詞を織り交ぜ、真実の見えない世界のなかで答えを探すように〈おい、誰か答えてみてくれよ〉とYoshは切実に訴える。スピーディに駆け抜けるリフ主体のロックナンバー「found & lost」のあと、呼吸を整えるようにスッと息を吸いこみ、ピアノ伴奏のなかで歌い出した「The Happy Song」は終盤のハイライトだった。Ivanがリズミカルにシェイカーを振り、それをステージ袖にいるであろうスタッフへぽんと放り投げた。それからの陽性のメロディ、人懐こいポップなサウンド。タイトルとは裏腹に、歌詞には進むべき道への迷いが根底にある。この日披露された「Mukanjyo」や「If You Really Want To」もそうだったが、葛藤や迷いを曝け出し、そのなかで答えを探していくようなSurvive Said The Prophetの歌は、彼らがバンドである前に、同じ時代を生きているひとりの人間であることを強く浮き彫りにする。

　車のドアをバタンと閉める音、続くエンジン音が響くと、「迎えの車が来ました」とYoshが話す。Honda「シャトル」のCMソングとして起用され、バンドの知名度を広げたという経緯を活かした、粋な演出による「Right and Left」で会場をハンドクラップで埋め尽くすと、最後にYoshは「今日は楽しい時間をありがとうございました！」と渾身の力で叫んだ。ラストソングは「When I」。光の輪が場内の壁を美しく彩るなか、TatsuyaとIvanは楽しそうに向き合って演奏していた。この瞬間は永遠には続かない。それでもこの瞬間があるからこそ希望を信じられる。そんな幸福感に包まれたフィナーレだった。

　この日のMCでYoshが、今回のツアーでは自分たちを必要としてくれる人の存在を感じたからこそ「世界一のバンドになってやろうと思います」と伝えるシーンがあった。今年は結成10周年を迎え、ベスト盤『To Redefine / To Be Defined』をリリースしたことで、Survive Said The Prophetは今一度自分たちの足元を固める時期でもあった。次のフェーズに進む準備は整った。 2022年、Survive Said The Prophetはさらに飛躍するだろう。揺るぎない音楽への信頼を携えて。