Survive Said The Prophet、ラウドシーンの新時代を切り開く“洗練されたサウンド”を紐解く

サバプロ、ラウドシーンを進化させる存在?

 “ラウドロック”と呼ばれる我が国の音楽シーンはここ10年あまりで大きく変わってきた。ひとくちにダウンチューニングや激しいディストーションサウンド……というだけでは説明できないものになってきている。かつてはミクスチャーロック、モダンヘヴィネスとも呼ばれていた日本のオルタナティブロックの潮流は、海外の様々なサウンドを取り入れながらも、世界でも類を見ない独自のロックシーンを作りあげたのだ。

Survive Said The Prophet - s p a c e [ s ] | Official Album Trailer

 攻撃的なロックから、洗練されたロックへーー。“サバプロ”の愛称で親しまれる、Survive Said The Prophet(サバイブ・セッド・ザ・プロフェット)はそんな近年のラウドロックシーンをさらに進化させていく気鋭のバンドだ。

 粗削りさは皆無。すべてが計算され丁寧に構築されている。メタリックな質感を控えながらもハードに聴かせるソリッドなサウンドは、わずかな揺れも逃さない解像度の高さも持ち合わせており、重心を落としたグルーヴはブライトな輪郭を伴いながらアンサンブルの中にタイトに組みこまれたまま迫ってくる。そして、非凡な才能を魅せつけるように圧倒的なボーカルが耳を襲う。9月26日リリースのニューアルバム『s p a c e [ s ]』はそんなサバプロの魅力がぎっしりと詰まっている作品だ。

 アルバムの幕開けであるトラック1「s p a c e [ s ]」、中間部のトラック6「p a c e s [ s ]」と、ピアノ調のインストゥルメンタルが収められている。それは聴き手によって前半と後半、A面とB面といった分け方もできるだろう。前半は「T R A N S l a t e d」に見られるような獰猛なアンサンブルを轟かせるロックバンドとしての強さ、後半は「The Happy Song」「s t i l l  b e l i e v e」といったメロディアスな楽曲に見る、類稀なるソングライティングセンスと繊細な表現力を感じた。しかしながら、二面性という言葉だけでは片付けられないところがあるのだから不思議だ。

 流麗な英詞メロディと変幻自在のアンサンブル。ヘヴィなリフと細かいパッセージを絡めていく2本のギター、重厚なベースと打ち乱れるドラム。メタル、パンク、ハードコア、エモ……さまざまな要素を巻き込みながら、独創的なスケール感で昇華していく様が実に心地よい。それでいて、聴き進めていくと、ロックのみならず、ハウスやソウル、ブラックミュージックの香りもしてくる。サバプロというバンドの性質を理解するには、数曲だけ掻い摘むような聴き方ではなく、アルバムを通して聴かないと、獰猛さと閑寂さの間から生まれる奥深いゆらぎに気づくことはできないだろう。

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