ばってん少女隊、「わたし、恋始めたってよ!」に詰め込まれたグループのリアリティ 原点を忘れず磨かれ続ける作品性

ばってん少女隊、現在のリアリティ

 福岡を拠点に活動するアイドルグループ、ばってん少女隊の音楽的躍進から目が離せない。

 以前から、渡邊忍(ASPARAGUS)、小野武正(KEYTALK)、NARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS)、三原康司(フレデリック)など、多くのクリエイターやアーティストとコラボしたロックやスカを軸とした音楽性の高さに定評がある彼女たち。ロックとの距離感の近さは、活動の拠点である福岡“めんたいロック”を彷彿とさせるバンドサウンドがキーだろう。

ロングヒット中の「OiSa」は、音楽的なターニングポイントに

 しかしながら筆者は、2020年10月にリリースしたクールかつドープな祭りダンスナンバー「OiSa」が放つ中毒性の高さにやられたのだ。まさに“楽曲派”と言える、音楽性の高さに耳が喜ぶナンバーとなっている。福岡のお祭り、山笠から取り入れた踊りや、音数が少なく“難解さ”を醸し出す不可思議なトラック。5人のハーモニーが複雑に絡み合う魔法のようなナンバーだ。しかしこの“異彩さ”は、決して小難しさではなく、フックの強さへと繋がっているのだから驚かされる。

 同年6月に、自身のプライベートレーベル<BATTEN Records>を設立した彼女たち。グループ結成5周年を迎え5週連続で新曲をデジタルリリースし、“リニューアル”を意識したタイミングのアルバム『ふぁん』に収録された楽曲が「OiSa」だ。その後、2021年4月には蒼井りるあ、柳美舞が新たにメンバーとして加入している。

 コロナ禍で“不安”を抱えている人の気持ちを自分たちの音楽で“FUN(楽しみ)”に変えていけるように、と思いを込めた3rdアルバム『ふぁん』。中でもYouTube動画320万再生を突破(2021年11月時点)したキラーチューン「OiSa」のロングヒットは、アイドルグループ“楽曲派”の歴史におけるターニングポイントになるのではないだろうか。

ばってん少女隊『OiSa』 -Music Video-

 パンデミックで不安定な心情を吐露したリリックによるメッセージ性。ある種の不条理なループからは、押井守監督によるアニメーション映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』での文化祭の前日を繰り返すという不可思議な世界に引き込まれていく様を思い出した。ミュージックビデオでの、スピリチュアルかつローカルな映像美には目を奪われるものがある。

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