ばってん少女隊、「わたし、恋始めたってよ!」に詰め込まれたグループのリアリティ 原点を忘れず磨かれ続ける作品性

ばってん少女隊、現在のリアリティ

新曲「わたし、恋始めたってよ!」で挑戦したエモーショナルなダンスチューン

 そして、注目すべきは2021年11月10日にリリースした最新曲「わたし、恋始めたってよ!」だろう。

ばってん少女隊『わたし、恋始めたってよ!』-Music Video-

 逆回転する時計の音とせつないメロディから放たれる少し不思議な“パラレルワールド感”。透明感あるシンセポップのサウンドに、軽快かつソリッドなドラムンベースを走らせ、メンバーそれぞれ胸の奥底に熱く燃える心情を、たゆたうように告白する繊細かつエモーショナルなダンスチューン。言いたいけど言えない、言葉に表せられない気持ち。伝わってほしい想いの行方。まるで会話のようなラップパートなど、メンバーの個性を活かした歌い分けにもグッときた。

 ドラムンベースサウンドをポップミュージックに取り入れたDJ Fresh feat. RaVaughn「The Feeling」を彷彿とさせる青春感を受け取りながらも、時代性が異なる2021年という現在。不安なニュースが流れる先行き不透明な時代に、胸に秘めていた、自分でも気付けなかった感情。大好きなのに“好きと言えない”のではなくて、あえて“好きと言わない”せつない恋のダンスチューン。浮遊感、透明感、清涼感が溶け合う美しいサウンド構築のテクスチャー。そう、“いま”聴きたかった音楽とはこれだ。まさに、そう思わせてくれるティーンカルチャーソングだろう。しかも本作は、前述した昨年リリースのヒットチューン「OiSa」に続き、ASPARAGUSの渡邊忍が作詞作曲、および編曲を手がけている。振付稼業air:manとのタッグも見どころの一つだ。

 ミュージックビデオは、150以上の神社が存在するパワースポットである長崎県の壱岐島で撮影された。システマティックなダンスと無機質な表情を浮かべるメンバーが、感情のかけらを口にすることで「嫌悪」、「恐怖」、「悲しみ」、「驚き」、「怒り」、「喜び」といった6つの感情をあらわにし、それらが混ざり合い想いが複雑になっていくというもの。映像からも伝わる、せつなさと清さ、爽やかさが織り混ざった不思議な感覚。Spotifyの人気プレイリスト『アイドルポップ:ジャパン』ではTOPカバーを飾った。

 これまで、様々なトライをしてきたからこそ蓄えられてきたグループの底力。ダンスミュージックという新たな武器を広げてきた、ばってん少女隊の2021年のリアリティ。「わたし、恋始めたってよ!」ではそれらに加え、アイドルとしての原点回帰感を醸し出しながらも、作品性の高さにより磨きがかかっている。まさに、6人の表現力の高さ、チームとしての結束力の強さを感じたナンバーだ。

■関連リンク
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