Little Parade 太志が貫く音楽への真摯な姿勢 前進する決意を見せた『The Sun and Twilight tour 2021』ファイナル
バンドを解散させたことへの責任、新しいプロジェクトで歌い切るという決意、そして、オーディエンスとともに進んでいきたいという願い。太志はこの日、驚くほどの正直さと誠実さとともに自らの生々しい感情と歌を響かせてみせた。
元Aqua Timezのボーカル 太志によるソロプロジェクト、Little Paradeが東名阪ツアー『The Sun and Twilight tour 2021』を行い、11月17日、渋谷CLUB QUATTROでファイナルを迎えた。2021年1月27日に1stミニアルバム『止まらない風ぐるま』をリリースし、2ndミニアルバム『藍染めの週末』のリリースを11月24日に控えるなか、初のツアーで太志が示したのは、このプロジェクトに対する真摯な思いと、これから追求すべき音楽のビジョンだったと思う。
まず、長谷川大介(Gt/元Aqua Timez)をはじめとしたバンドメンバーが音を奏で、太志がステージに登場。右手で軽く観客を煽り、オープニングナンバー「on the BLEACHers」を歌い上げる。豊かな声量とともに切なさ・力強さを合わせ持ったボーカルが響き渡り、観客を一気に惹きつける。〈千年の昔 約束をしたんだきっと この小さな木の下で 待ち合わせようって〉という歌詞も、太志とファンのつながりを投影しているかのようだ。
「本当にありがとう、会いに来てくれて。俺も会いに来ました。こういう(コロナ禍の)時代なので、内側で燃えるものを感じてもらえたらと思います。Little Parade、やり切ります」という所信表明のような言葉の後、叙情的なピアノから始まり、高揚感溢れるバンドサウンドへ移行するアレンジのなかで、幼少期のノスタルジックな思い出を映し出す「色彩の行方」を披露。さらに、重厚にしてしなやかなビートに乗って太志が手拍子を促し、鋭利なラップと大らかなメロディを交えた歌声で、〈こんな時代にこそ 音楽よ燃え盛れ〉というフレーズを響かせた「風の斬り方」へ。言葉とメロディを丁寧に紡ぎ出すボーカルからは、「Little Paradeでやろうとしていることを、最初のツアーに足を運んでくれたファンに手渡したい」という願いが感じられた。
「Aqua Timezは前向きな歌詞が多いですね、とよく言われました。でも、違うんだよね。一見前向きだけど……、その“……”の部分をわかってくれている人が今日来てくれてると思います」という言葉に導かれた「置き去りの鉛筆」も心に残った。出口が見えない状況、自分ではどうしようもない出来事をくぐり抜け、未来を掴むために前向きにならざるを得なかった彼自身の経験を刻んだこの曲は、観客一人ひとりの胸に強く刻まれたはずだ。
ライブ中盤では、レアなカバー曲を披露。「Aqua Timezをやる前に聴いていた曲で、姉ちゃんもREBECCAが好きだったんだよね」というMCから始まったのは「人魚」(NOKKO)。続けて「ブルースが入っている大人の音楽にリスペクトを込めて」と紹介された「恋しくて」(BEGIN)を、オーガニックな手触りのアレンジでじっくりと歌い上げる。このカバー曲コーナーからは、太志自身のルーツや音楽的な広がり、そしてシンガーとしての豊かな魅力を感じ取ることができた。