2021年の『NHK紅白歌合戦』が見つめ直すもの “カラフル”のテーマから考える
新曲が素晴らしかった氷川きよしにも期待
一方で、筆者が個人的に注目しているのは氷川きよしである。彼は、今年リリースした「Happy!」と「森を抜けて」の両A面シングルが本当に素晴らしかった。真っピンクの衣装を着て甘いメロディを艶やかに歌う「Happy!」は、演歌歌手として長年培った歌唱力と、彼の持つ特異なスター性とが感じ取れる最良のポップソングだ。
さらに、作家の林真理子が作詞した「森を抜けて」も名曲だった。辛い時期を乗り越えて新しい世界へと抜け出そうとする人を描いた歌詞は、苦しい時代を生きる人びとの、生へのひたむきさを讃えているようで心が掴まれた。一年を通して気の抜けなかった今年の感染状況や、彼が歌手として歩んできた険しい道のりを思うと、正直涙なしでは聴けない一曲だ。
まだ披露曲は発表されていないが、どちらの曲であろうとも(もちろんそれ以外の昔のヒット曲でも)、今の彼が持つ物語性と、そして歌手としての背負っている何かが、今年のステージで垣間見えるような気がしてならない。
一年の締めくくりとして毎年注目される『NHK紅白歌合戦』。辛く苦しかったこの一年の最後に、人びとの心をカラフルに彩るのは“上様”か、それとも“若様”か。
(※1)https://www.nhk.or.jp/kouhaku/theme/index.html