乃木坂46 高山一実、感謝と別れを告げたラストライブ ドームでの“リベンジ”も果たした『真夏の全国ツアー2021 FINAL!』

乃木坂46 高山、感謝を告げたラストライブ

「東京ドームってまだ1回しか経験していないし、終わった直後にみんな『悔しい』って言葉を口にしていたので、その経験をしているメンバーたちのリベンジというか、やりきったぞと言える東京ドーム公演はやってみたい、という気持ちはずっと持っています。特に私は、(桜井)玲香がめちゃめちゃ悔しがっていたのがすごく印象に残っていて、その気持ちを残したまま卒業してしまっているので、東京ドームという一番の夢だった場所でライブができた思い出を悔しいままで終わらせちゃいけないと思うんです」(※1)

 これは2020年1月3日にリアルサウンドで公開された、筆者が担当した秋元真夏へのインタビューからの引用だ。取材を行ったのは2019年12月末。西野七瀬のグループ卒業や4期生の遠藤さくらが初めてセンターを務めるなど、大きなターニングポイントを迎えた1年を振り返るという内容だった。そして、秋元自身も同年夏に卒業した桜井玲香からキャプテンの座を引き継ぐという転換期であり、そんなタイミングに彼女がこの先グループをどうしていきたいのか、その考えが端的に示された内容だ。

 2017年11月の乃木坂46初の東京ドーム公演は、今振り返っても“あの時点でのベスト”を尽くしたことは疑いようのない事実。しかし、終演後に対面したメンバーからは口々に「もっとやれる」「もっとこうしたい」と現状に満足することなく、さらにブラッシュアップして次に臨みたいという意欲を漏らしていた。手応えこそあれど、完全なる達成感は得られなかったのかもしれない。

 その後、白石麻衣の卒業公演として2020年5月に東京ドームでの再演が予定されたが、同年初頭から世界中で猛威を振るった新型コロナウイルスの影響で、公演は中止。今年9月にも2年ぶりに開催された『真夏の全国ツアー2021』のファイナル公演として東京ドーム公演がアナウンスされたが、こちらも同様の理由で延期になってしまう。

 そして2021年11月20日、21日。当初の予定から2カ月以上の延期を経て、『真夏の全国ツアー2021』のファイナル公演が東京ドームにてついに実現。乃木坂46が初めて東京ドームでライブを行ってから、実に4年の月日が流れていたが、その間にグループは二度の日本レコード大賞受賞など、名実ともに日本を代表するトップアイドルの座に登り詰めた。そんなグループが今、どんなステージを東京ドームで繰り広げるのか。そして、秋元がことあるごとに口にしてきた“リベンジ”を果たすことができたのか。筆者は21日公演に足を運んだ。

 前日の初日公演は配信で確認していた。7~8月に行われたツアー地方公演のセットリストをさらにブラッシュアップさせた内容は、これぞストロングスタイルの乃木坂46と言わんばかりのもので、さらに磨きがかかったメンバーたちからは、4年前とは少々異なる“楽しむ”という姿勢が随所から伝わった。また、前回は加入前だった4期生および新4期生も、緊張はあったかもしれないが、表面的にはそれを感じさせない堂々としたパフォーマンスを披露していた。約3時間にわたるボリューミーな内容ながら、画面を通してもまったく飽きることのない大満足のライブは、4年前とは比べものにならないほどの完成度だった。

 だからこそ、翌21日の公演に対する期待はより高いものになっていた。さらにこの日は、7月にグループからの卒業を発表した高山一実にとって、アイドルとしてのラストステージ。ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』で高山と同じチームだった樋口日奈、伊藤理々杏、山下美月による影アナ、この夏のツアーを振り返る映像と「OVERTURE」を経て、メンバー38人のシルエットがステージに浮かび上がると、早くも会場はクライマックスのような熱気に包まれる。そして、遠藤さくらをセンターに据えた「ごめんねFingers crossed」からライブはスタート。中心に立つ遠藤の表情や佇まいからは、夏の地方公演で得た経験が彼女を成長させたことが十分に伝わってきた。

 メインステージのほかにアリーナ中央にサブステージ、そこから四方に延びた花道というステージセット上で、メンバーは「ジコチューで行こう!」「太陽ノック」「おいでシャンプー」と夏を強くイメージさせる楽曲を連発。2カ月遅れで2021年の夏を盛大に締めくくろうと、回転するリフト型センターステージやトロッコなどの演出を用いて観る者を全身全霊で楽しませ続ける。一方、梅澤美波をセンターに据えた「シンクロニシティ」では眩いレーザー演出を交えつつ、凛とした表情と華麗なダンスでトップアイドルとしての矜持を見事に示してくれた。

 序盤5曲を総勢38名一丸となって披露したあとは、秋元が「声が出せないもどかしさを感じさせないぐらい楽しませていきますので、今日は1日よろしくお願いいたします」と挨拶。このツアーではファン投票で上位入りしたシングル/アルバム表題曲、カップリング曲、アンダー曲、ユニット/ソロ曲を次々に披露していくのだが、与田祐希や筒井あやめ、北野日奈子がランクイン曲や地方公演での思い出、楽屋での溢れ話を明かし、ほっこりする一幕もあった。

 この日のランキング曲ブロックでは、前日パフォーマンスされなかった「せっかちなかたつむり」「錆びたコンパス」「ありがちな恋愛」「全部 夢のまま」を用意。「せっかちなかたつむり」では同ユニットのオリジナルメンバーである高山のほか、秋元や生田絵梨花、樋口、新内眞衣、遠藤、賀喜遥香が加わることで楽曲に新たな魅力を添えた。また、アンダーメンバーも「錆びたコンパス」で山崎怜奈をセンターにパワフルさを提示したかと思うと、一人ひとりのソロダンスを経て披露された「日常」では北野を中心に熱量の高いパフォーマンスで観る者を魅了。一方、「ひと夏の長さより…」では選抜メンバーがスケッチブックを用いて、高山へ愛を込めたメッセージを寄せるサプライズも登場。「裸足でSummer」「全部 夢のまま」では気球に乗った齋藤飛鳥や与田、遠藤が会場中を移動しながら、ステージから遠いスタンド席のオーディエンスに向けて手を振るなどサービス精神を発揮した。

 続くMCでは、高山との思い出をさまざまなメンバーが口にする。向井葉月が「乃木坂に入る前から『渋谷ブルース』のギターをやりたいなと思っていたので、『渋谷ブルース』を一緒にやらせてもらったことが一番の宝物です」と感慨深げに語ると、新内は「お仕事以外にも一緒に遊ぶことも多くて。以前、卒業生の斉藤優里ちゃんがふと『会いたい』と言ってくれて、集まれるメンバーで集まったんですけど、(高山の笑い声が)近所迷惑レベルでうるさくて(笑)」、飛鳥は「ずー(高山)との一番の思い出は、ごはんの約束をドタキャンしたことです(笑)」とメンバーや観客の笑いを誘った。

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