KOTORI、4人で向き合って鳴らした音 『PLAY FOR THE FUTURE TOUR』両国国技館公演を観て

KOTORI、4人で向き合って鳴らした音

「今日含めてあと2本、48本のツアーでアルバムの曲を育ててきました。ツアーで見てきた景色を曲に閉じ込めていくのでよろしくお願いします!」

 アルバムを掲げ、半年近くかけて全国ツアーをしてきたKOTORI。日常に寄り添うようなやさしさのある彼らの楽曲が全国を巡ったのちの11月3日。東京・両国国技館での演奏はそんなツアー『PLAY FOR THE FUTURE TOUR』の軌跡を辿るようでもあった。

 今年リリースしたアルバム『We Are The Future』の収録楽曲のほとんどが披露された本公演。客席に囲まれた円形のステージに光が立ち上ると、1曲目に演奏されたのはアルバム表題曲の「We Are The Future」。

 深くリバーブのかかるドラマチックなスネアにボーカル・横山優也の歌声が浮かぶ。Aメロで〈音楽で大切なものを守れますように〉と静かに歌ったのちに光が射すように明るく展開する〈この声よどこまでも〉の歌詞はこれから始まる約2時間のライブに向けた誓いのようだ。「音楽があれば大丈夫!」と演奏された「unity」では〈歌おう〉と繰り返されるように、KOTORIの楽曲の多くからは音楽への厚い信頼が伝わる。

 冒頭に記したMCののちに演奏された「Anywhere」は空間に揺れるようなボーカルで旅路の回想を思わせる。終盤では歪んだギターの音色が空間を埋めつくし、日常を描くバンドのロックな一面が光る荒々しさが姿を見せた。アルバムを引っさげたツアーとしてのハイライトは「ソングバード」「風に吹かれて」「sora」の流れで、まさにツアーで見た景色の風を両国国技館にも吹かせているようだった。「ソングバード」では横山がアコギに持ち替えて演奏したが、アコギとボーカルのみで奏でられる部分は、アコギと身ひとつで全国を旅する音楽家を思わせる。上坂仁志のふくよかなギターを佐藤知己のベースが支えた「風に吹かれて」では余韻を残すように伸ばされるボーカルとゆったりと進行するさまが幾度となくあったツアーの帰り道を想起させた。細川千弘のシンプルなドラムと繰り返されるギターリフの上で〈僕ら知らないまま 同じ空を見ていた〉と歌う「sora」も含め、ここで続けて演奏された3曲が全国をめぐり、東京に持ち帰ってこられたことに大きな意味を感じる。楽曲に積み上げられた多くの人との記憶に思いを馳せるように丁寧に展開していく。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる