リュックと添い寝ごはん 松本ユウが語る、忘れたくない原点 20歳の自分に宛てた手紙のような楽曲を読み解く

リュクソ 松本ユウ、忘れたくない原点

不安というのは殻を破るチャンス

ーー例えば、なぜ「生活」という曲を書いたのか、「あたらしい朝」や「くだらないまま」という曲を書いたのか。その答えが「東京少女」にあるなっていう気がします。

松本:確かにそうですね。この「東京少女」も未来の自分が東京少女だっていうことなんです。〈夢見る東京少女〉は結局全部が自分に繋がっている感じがします。最後の〈君に会えるかな そんなこと考えるたび/僕は東京少女さ〉というフレーズの〈君〉は自分のことで、「将来の自分に会えるかな」っていう意味なんですよ。最初は〈君〉っていう言葉が他にもたくさんの曲の中にあったんですけど、そんなにたくさんあると誰か別の人がいるのかと思われそうで、最後のここだけにしました。プチこだわりポイントです(笑)。

ーーじゃあこの曲はまさに、18歳の松本ユウから20歳の松本ユウに宛てた手紙みたいなものでもあるんですね。

松本:そうですね。手紙とかタイムカプセル的なもの。蓋を開けてみたら、当時は若かったけど、思ってることはそんなに変わらないな、みたいな感じです。

ーーこの曲において「少女」というのはピュアネスの象徴だと思うんです。そのピュアネスをどう守れるか、保ったままどう進んでいけるかというのが、松本さんが音楽を作る上での大きなテーマなんだと思いました。

松本:確かにそうですね。常に不安はありますけど、その不安を幸せや恵まれていることだと捉えているからこそ、こういう曲を書いても不安の要素が裏に入ってるのかなって。

ーー不安が幸せだっていうのは、もっと言うとどういうことなんでしょう?

松本:メジャーデビューした頃から、不安なことだらけで、当時それを解消できないまま「ただ不安なだけ」っていうのがすごく怖かったんです。でも不安というのは殻を破るチャンスが来てるっていうことだし、そう思い始めてから、すごく幸せなことだって考えるようにしました。尊敬している人の経歴を調べてみても、その人が20歳のときって表には出てないけど、裏にはすごく秘めているものがずっとあったような気がするんです。それこそ星野源さんも、SAKEROCKを今の自分と近い年齢で始めて、3年後に最高のアルバムを作った。今ちゃんと花咲いてる人たちは、みんな秘めているものがずっとあったんじゃないかなって。だからいつかそれが花咲くように、今は頑張ろうっていう感じですね。

「『ふたり暮らし』は結婚したら奥さんに聴かせたい」

ーーよくわかりました。今回、当然音も録り直しているんですよね?

松本:録り直しました。アレンジもガッツリ直したし、メロディも最初は全然違ったので。昔は絶対出てこなかったようなアレンジもできたので、歌詞と同じように、以前と今の自分が融合した感じがありますね。音もすごく時間をかけて作ったので、気合いも入ってますし。あとは、温かさをサウンド面で意識していました。

ーーメンバーはこの曲を久しぶりに作り直すことについて、何か言ってましたか。

松本:ふたりはこの曲を当時から好きだったので、当時もこの曲を出すことになってすごくウキウキしていたんです。あとは僕のお母さんがすごく好きなんですよ、この曲(笑)。なので喜んでました。文化祭で一度音源をCD化して配布しているんですけど、そのCDを持ってる高校時代の軽音部の後輩とかも喜んでくれて、「ついにこの曲出すんですね」みたいなDMをもらったりしました。それもすごく嬉しいですね。

ーー20歳の今、この曲を出すことで松本さんの中に節目の感覚はあるんですか?

松本:そうですね。「くだらないまま」を出したときよりは、その気持ちは強いかもしれないです。でも「ここを起点に!」みたいな気持ちがそこまで強いわけではなくて、実は早く出したい新曲が他にもあるんです。僕が今求めている、今表現したいものはこれだ! っていう曲ができているので、この「東京少女」は原点に戻ってきたような感じです。この曲も、今後のリュックと添い寝ごはんの曲も、両方愛してもらえたらなって思います。

ーーカップリングの「ふたり暮らし」もすごく松本さんらしいメッセージが込められた曲ですね。

松本:これは最近できた曲で、とある曲へのオマージュを込めて作りたいなと思ったんです。本当に幸せを包み込んだような曲で、自分の思う幸せとか、特別じゃない幸せを曲にしたかったので、具体的に1人の主人公の気持ちを書きました。もし僕が結婚したら、奥さんにこの曲を聴かせたいというか(笑)。それぐらいの理想ですね。

ーー素晴らしいなと思ったのが〈いつでも真面目な君も/いつかはだらしなくなる/そこに愛があると思うよ〉っていうラインで。

松本:これが一番伝えたかったことですね。全てを肯定する曲。だらしなくなっていくこともネガティブじゃなくて、そこも愛だよ、みたいな。

ーーこの曲もやっぱり、リュックと添い寝ごはんの本質論に繋がっていると思います。

松本:今回こういう2曲を作ったことで、今までの曲は全部自分に言ってることなんだって改めて気づきました。「ノーマル」から「東京少女」まで、全部そうだなと思う。だからやっぱり、何かに近づいている感じはしますね。

■リリース情報
Digital Single『東京少女』
11月2日(火)配信スタート
<収録内容>
1.東京少女
2.ふたり暮らし

ツアー会場&SPEEDSTAR CLUB限定:CDシングル『東京少女』
11月2日(火)発売 ¥1,500(税込)
<収録内容>
1.東京少女
2.ふたり暮らし
3.PLAY (Live Version)
4.グッバイトレイン (Live Version)
5.アップルパイ (Live Version) *未発表曲

リュックと添い寝ごはん Official Website

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