リュックと添い寝ごはん 松本ユウはなぜ“普通”について歌うのか? 大瀧詠一、Steely Dan、Stuff……今ハマっている音楽も語る

リュックと添い寝ごはん、なぜ“普通”を歌う?

 昨年12月にメジャー1stアルバム『neo neo』をリリースし、東名阪での初ワンマンツアーもソールドアウトさせたリュックと添い寝ごはん。それから半年あまりを経て届いた新曲は、彼ららしい視点と温かなメロディを持った、まさに新しい代表曲といえる楽曲となった。誰もが一度は食べたことあるだろうアイス「明治 エッセル スーパーカップ」のWEB CMソングとして書き下ろされたのが、その「くだらないまま」。公開されているCMの映像を観てもそのハマりっぷりはわかると思うが、CMに込められた「何気ない日常こそが最高に幸せなんだ」というメッセージは、そのままリュックと添い寝ごはんというバンドが描いてきたメインテーマそのものだ。

 日々のふとした瞬間に感じる幸せ、淡々と日常を生きていくことの素晴らしさ。それが彼らの音楽の本質であり、今こそ強いメッセージとなる。そんなことを改めて思わせるこの曲はいかにして生まれたのか。フロントマン、松本ユウに聞いた。(小川智宏)

「くだらないまま」リュックと添い寝ごはん×明治 エッセル スーパーカップver.

ブランドコンセプトを見て「僕らと一緒だ」と思った

ーーアルバム『neo neo』とワンマンツアーを経て半年以上が経ちました。あれからどう過ごしてきましたか。

松本ユウ(以下、松本):ずっと制作をしていました。でも、いろんなインプットの刺激を受けた挙句、「何を書いてるんだろう」と思って、スランプみたいな時期に一瞬陥ってしまって。それでも制作をずっと続けてきたんですけど。

ーーそういうスランプみたいなことって今までもありました?

松本:いや、初めてかもしれないです。

ーーそれは、書こうと思っても書けないという感じだったんですか。

松本:いや、書けはするんですけど……理想像が高くなりすぎて、作っても作っても納得がいかない状態に陥っちゃったんですよね。いろんなライブ映像とかを見たりして、こういう空間が作りたいなと思って、それで曲を書こうとするんですけど、「ああ、ダメだ……」っていう感じで。今はもう大丈夫なんですけどね。

ーー自分たちの現在置とのギャップみたいなものを感じたんですね。

松本:そうですね。でも聴いてくれる人がいるっていうことをしっかり再認識して、ライブに足を運んでくれる人の顔を思い浮かべたら、やっぱり今できる曲をやっていくのが一番いいんじゃないかなと思いました。そうやっていけば、いずれ自分が理想としてる空間が作れるんじゃないかって。

ーーということは言い方を変えると、「将来こうなりたい」みたいなイメージがよりはっきりと見えてきたっていうことでもあるんですかね?

松本:うん、そうですね。

ーーアルバムに対するファンの反応についてはどう感じました?

松本:『neo neo』は自分たちにとっては結構新しいことをやったアルバムだったので、正直言うと少し離れちゃう人もいるんじゃないかなと思ったんです。「青春日記」と「あたらしい朝」の曲調の違いというのが懸念点ではあったので。でも、曲というよりもリュックと添い寝ごはんというバンドを愛してくれてる人がたくさんいるんだなっていうことを実感できました。

リュックと添い寝ごはん / あたらしい朝 [Music Video]

ーーそれでいうと、今回リリースされた「くだらないまま」はむしろ“リュックと添い寝ごはん”の変わらない部分をすごくストレートに描いた曲だなという気がするんですよね。初のタイアップ書き下ろしですが、どういうふうに作っていったんですか?

松本:タイアップが決まったときは、僕の記憶だとすごくあっさりしていたんですよね。「そういえば『明治 エッセル スーパーカップ』のWEB CM曲決まったよ」みたいな感じ(笑)。それが4月くらいだったんですけど、そこから曲を作っていって、ようやく「タイアップ曲を書いたんだ」っていう実感が湧いてきている感じです。

ーーWEB CMを観ても、めちゃくちゃハマっていますね。

松本:最初にブランドコンセプトを見せてもらったときに、「これ、僕らと一緒だ」と思って。「ふつうって、スーパー最高。」というのが「スーパーカップ」のキャッチコピーなんですけど、『青春日記』の曲を書いていたときも、僕の高校生活ってそれをモットーにして生きてたなっていうのがあったんで。だから、すんなりとこういう曲を書けたし、CM映像ともマッチしたのかなと思います。

ーーまさに普通であること、日常や生活ってリュックと添い寝ごはんにとってすごく大きなテーマであり続けてきたと思うんですけど、「くだらないまま」は、そのリュックと添い寝ごはんというバンドのど真ん中をもう1回書いたような曲だな、と。

松本:そうですね。この曲を作ったときは、僕らを表現する曲としてもバッチリなんじゃないかと思いました。前に、日常のふざけ合っている情景とかを曲に昇華していきたいなと思っていたので、それがうまく表現できたんじゃないかなと思います。

ーー「普通が最高」をモットーに生きていたと言ってましたけど、自分の高校時代を振り返ってみると、どういうことを思います?

松本:でも、普通をモットーにしていた割には、あんまり普通なことが起きていなかったなって思います(笑)。お昼休みにサッカーをして遊ぶとかはすごく日常的で普通で、「いいな、こういうの」って思うんですけど、僕は音楽活動をして大会とかにも出ていたので、「普通じゃないことやってたのかもしれないな」って。

リュックと添い寝ごはん / 青春日記 [Music Video]

小さな幸せの感情を忘れないために曲を作る

ーーそもそも、普通をモットーにしていたのはなぜなんですか?

松本:文化祭とか体育祭とか、高校のときはそういうイベントがやっぱり目立つというか、みんなのボルテージが一番上がる瞬間だと思うんですけど、僕はそこに魅力を感じていなかったんです。「毎日の小さな出来事こそ幸せじゃないか」みたいにずっと思っていたので……なんでなんでしょうね?

ーー(笑)。でも、それが今のバンドでやっている表現にすごく繋がっている気はしますよね。

松本:確かに日常的なところに感動することが多いし、その気持ちを忘れちゃいけないなって思いますよね。高校生のとき、PASMOに1000円ぐらいチャージされてる状態で改札を出ると「めちゃくちゃ幸せだな」って思っていたんですよ(笑)。通学定期だからチャージする必要ないじゃないですか。でも僕だけ1000円くらい入っていると、次の人に「あいつ1000円入ってるじゃん」と思われたらすごく幸せかもしれないなって。そういう小さな幸せの感情をいつか忘れちゃうんじゃないかと思ったので、忘れないために曲を作ったのかもしれないです。

ーーそういうことを歌うロックバンドって、そんなにいないですよ。

松本:そうですね。でも、例えば「頑張れ」って歌うのは、無責任かなって思っちゃうんですよね。まず僕が頑張らなきゃいけないなって。

ーーそれってすごく特別な感覚かもしれません。

松本:あんまり自分では感じたことないですけどね(笑)。

ーーしかも、その感覚がこうして「スーパーカップ」のタイアップに結実するっていう。

松本:本当に奇跡ですよね。高校のときもアイスを選ぶ時は必ず「スーパーカップ」を選んでいたので、運命を感じました。

ーーちなみに何味が好きなんですか。

松本:バニラですね。チョコクッキーも好きなんですけど、やっぱりバニラを選んじゃいます。

ーー普通ですね(笑)。この歌詞はどういうことをイメージしながら書いていったんですか?

松本:歌詞の中にある〈窓に映る日々〉は、高校の教室の中から外を眺めて、校庭で誰かがサッカーしている風景とか、あとは登下校のときの電車の窓に映る景色のことですね。

ーー窓から見える景色に高校生の松本ユウは幸せを感じていたんですね。その感覚って誰かと共有していましたか。

松本:それはあまりなかったですね。電車の中から駅のホームの広告を見ていると、時々広告がなくなって「募集中」って書いてあったりするじゃないですか。そういうのを見て「あそこ広告なくなったんだね」とか言っても、友達に引かれちゃうんじゃないかなって(笑)。

ーー当時はわからないけど、今振り返ると「あれって幸せだったなあ」って思うことがあるじゃないですか。そういう意味で、この曲は大人になったからこそわかる気持ちが書かれているなと思います。

松本:そうですね。僕が住んでる地域って、夕方5時のチャイムの音が変わっちゃったんですよ。それがすごくショックで。以前はホルンとかの音だったんですけど、音色がオルゴールになって冷たい感じになっちゃったんですよね。あのころは幸せだったなって思います。

ーーそういうところで一つひとつ何かを感じながら生きることが幸せなんじゃないか? みたいな感覚をずっと持っていますよね。それを今なりの視点と言葉で書いている曲だと思うし、今までのリュックと添い寝ごはんが描いてきたものと繋がりながらも、ちゃんと新しい曲になっているという。すごく大事な曲になっていくんじゃないかなと思います。

松本:そうですね。こういう歌詞作りがこれからの制作にも影響するだろうなって思います。過去を見ながら、今を書くというか。

ーーコロナ禍で、「普通の日常」が戻ってきそうで戻ってこない感じがずっと続いてるじゃないですか。つい普通を忘れかけている自分がいたりしますけど、そういうときにこの曲を聴くと「ああ、こういうことだったよな」って思い出せる気がします。

松本:僕自身も日常っていうものを忘れかける瞬間があったりして。マスクを着けているのも普通じゃないよな……みたいなこととか。それでも昔に執着しすぎず、今を生きるみたいなことは常日頃考えています。今、週1で大学に行って、それ以外はほとんどオンライン授業なんです。それって普通ではないじゃないですか。でも、僕からするとそれが普通なんですよ、1年半もこうだったので。それでも楽しいし幸せなので、人それぞれの普通があっていいんじゃないかなって思います。逆に、みんなが当たり前だよねって言ってることを「当たり前ではないんじゃないか?」というふうにも考えたりしていますね。

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