FOMARE『THE BEST HITS 20』ファン考案のセトリが丸ごと実現 レア曲交えた全身全霊のステージ
群馬から上京して渋谷や下北沢といった東京の街に慣れないなか、この先どうしていくんだろうと不安を抱いているときに書いたという「2016」では、「こうして昔の曲を歌えることが嬉しい」「あの頃よりも明るい気持ちで歌える」(アマダ)と述べた。バンドの成長に伴って、昔の楽曲を披露する機会が少なくなるのはごく普通のことだ。しかし、こうして昔の曲を演奏することはファンにとっても嬉しいし、本人たちにとっても過去を振り返るきっかけになったり新たな気づきを得たりする機会になるのだろう。
「今のところ大成功してると思います」と話した後にプレイされたのは「Lani」。通常ならばリスナーのシンガロングもある楽曲だが、やはりまだコロナ禍のご時世柄、歌うのはおあずけなので、「心の中で叫ぶくらい歌ってください」と告げられる。心の叫びが身体から滲み出ているのか、フロアに掲げられた拳には今までよりも力が込められているように見えた。
20曲のロングセットリストもいよいよラストスパート。「風」でアマダとカマタリョウガ(Gt/Cho)がジャンプしたり、「新しい歌」でオグラがブラストビートを奏でたりと全身全霊でパフォーマンスしていく。そしてラストを飾ったのは「Continue」。イントロを聴くなり飛び上がるリスナーも続出し、盛り上がりは最高潮に。きっと、ハヤシさんはこれからもFOMAREの音楽を聴き続けたいという想いでこの曲を選んだのだろう。本公演はアンコールなし、正真正銘ファンセレクトのセットリスト20曲で終了した。
人気曲はもちろんだが、今ではレア曲となっている初期の楽曲を含んだこの日のセットリストは、1人のファンの全曲リクエストという他に例を見ない実験をしたからこそ実現できたに違いない。セットリストを組んだのは1人だが、ライブ終了後のSNSのタイムラインには「神セトリ」「今日のライブやばかった」といった言葉が並んだことから、多くの観客が満足したライブだったことが窺える。ファンを驚かせ、そして楽しませることに貪欲なFOMAREが次はどんな実験を仕掛けてくれるのか、今から楽しみだ。